第二章50 特別授業5
あの指輪、こっそり盗み出すしかないか。だが、いつだ、いつあの指輪を外すんだ。俺、指輪をつけてたらいつ外す、身に着けているものを外す時……エリカも、風呂を入ってた! それならあいつも入るはず!
新陳代謝をしないヴァンパイアの体は、自分の体液などで汚れることはない。だが、空気中に飛んでいる小さな塵や臭いは付着する。
そうエリカから聞いた。
それなら、あいつが風呂に入る時を狙って盗むか、そして、案の定
(ここが風呂場で間違いなさそうだな)
広い城の中をほかの魔族に見つからないように走り回り、
「ん? なんか獣臭いな」
っと、危うくばれそうになったこともあったが、更衣室、のようなところで間違いなさそうだ。
そこにあったのは、大きな露天風呂空に浮かぶ赤くて大きな月と、遠くの山にかかるきりが、恐ろしくて、美しいな景色を出している。
突然、足音が近づいてきた。
(これはもはや運命、そう、これが最後のチャンスかもしれない。結婚式まであと三時間)
エリカの唇は誰にも渡さん! 特にあのくそ野郎には!
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「あの指輪さえ手に入れればあんな人間に尻を振るヴァンパイアの小娘なぞ肉奴隷として使ってやらんでもない」
がさっ、
「誰だ! ふっ、あの女のペットか。こんな醜い獣を連れ歩くなど、ますます気が合いそうにない、それに、ブラドも第一王子も邪魔だ。何を睨んでいる。さっさとどこかいけ。ほんと気味の悪い。あいつ、まさか言葉理解できたりしないだろうな」
(思ってた通りの屑だ、お前も、ブラドも、思い通りにはさせない)
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外さなかったらどうするかと思っていたが、外したな、フフフっ、外したな、そして、ブラドが風呂場、というより滝行? に行っているすきに、彰(獣)はこっそり指輪に近づき、そして指輪をその手に
!?
ここである事実に気が付く。そう、獣の手は、物を持つようにできていないのだ。しかもそんな時に、風呂に入っていたはずのブラドが戻ってきて、目が合った。
「お前は……」
(どうする、逃げるか、いや、逃げ切れるのか? すぐ目の前に、赤く光っている指輪がある。これはっ)
智也は指輪を口の中に入れ全速で逃げる。そして
(追ってこないほうがおかしいか)
後ろから追ってくるブラド、どうやら獣になったところで、魔力で四肢を強化すれば走る速度を高めるのは可能のようだ。そして、指輪を咥えこんだまま。ひたすら走った。だが、追ってくるブラドは壁に飾っていた先端に波状の模様を描いた槍を手に取り、そして彰に向けて投じた。その槍は、彰から左腕を奪い。そして、片腕を無くした彰は城壁から転落……
しばらくは課題で忙しいので不定期投稿になります。なるべく今までのぺーすで書くつもりですが、最大4日遅れるかもです。




