第一章6 エルフの森
「まぶしい太陽! 青く澄んだ川! 大空を元気に舞う小鳥!......あれ? 小鳥? 小鳥だよね? なんかどんどん大きくなってきてるような......」
異世界生活三日目、城を出てすぐになぜか大きな鳥に森の中を追い回される彰であった。小鳥だと思ってみてたらまさかの翼広げると横幅8メートルはありそうな、鳥であった。
草原を鳥と一緒に駆け抜けていく、現実世界ならさぞ絵になる光景なのだろう。
なのになんだろう、恐怖でしかない。
「くそー!!」
叫びながら全力疾走をしているが、夜とは違い、太陽が出ている昼間は夜と比べて感覚的には貧血気味だった。
最近食べたものといえばあの甘すぎる果物と、吸血鬼としてエリカと一緒に行った初めての食事、どうやらこの世界にも医療用血液バックがあるらしく、地下に7パックくらいの貯蔵があった。
「つい二日前までは人間だったんだし、いきなり人を襲うのは無理でしょ?」
そう言って透明パックを目の前に置いてくれたのだった。
たまに見せるやさしさに惚れてしまいそうになる。
そうこう考えている間に森が見えてきた
「あの図体ならあの森の中までは追ってこないはず!」
そう言ってさらにつかまらないために足に魔力を集中してみる、地面から離れると同時に少し開放する、まだ慣れていないから数秒走って一度だけブーストっぽいことをして速度を増している。ただの思い付きだったが実行してみると確かに速くなったけど、やはり飛んでいる奴のほうがやや速い。
森の木と木の間にある、身を隠せるほどの叢まで目測約6メートルまで迫った。
その時アクション映画で爆弾が爆発した瞬間に窓からジャンプする俳優のように……はならなかった。
6メートルなら今の体力でちょうどいいと思っていたが、10メートル先の木に衝突。
「やっぱりまだこの体には慣れてないな~」
それからしばらく太陽の光で方角を確かめながら森の中を歩いていると、あることに気づく、
「この運動能力なら出来るのでは?」
普通に木を登り始めて、このエリアの木は頑丈でちょっと踏んだくらいじゃ折れないようだ。
深呼吸をしてから、ターゲットを決め、軽く違う木の枝に向かってジャンプをした。
飛び越して落下、少し痛かったが、飛び越えたってことはもう少し力を抑えれば
再び木に登り、
「よし、さっきので大体の距離感はつかめたから今度こそ」
そう言って再び少しだけ走り、ジャンプ、今度は成功かと思うと足が滑った。あきらめの悪い彰はその後何度かチャレンジしたが失敗続きでくじけそうになる。しっかりと枝には足がつくのに、勢いが余って。
そこで考えた。
勢いが余るなら、いっそこのままジャンプを続けるか。
試しにやってみると、二本、三本に続きヴァンパイアの反射神経の補助もあり、すんなり行けた。
「うおーー!! 忍者だ! ナ〇トだ! 今俺は自由に森の中を飛び回っている!」
口がずっと笑っているのが自分でもわかる。
でもやっぱり高いところは緊張する。
緊張と興奮が入り交じり、今までで一番楽しいかも!
そう考えながらも、もっと速度を求めてしまう。
もっと速く、もっとだ、そうやってどんどん森の中を飛びぬけていく。
多分20分くらいは過ぎただろう、いまだに体力はまだ少し疲れた程度。
次の瞬間、目の前を体がごつごつして、耳の長い緑色の服をまとったエルフの男3人が横から飛び出してきて、危うくぶつかるところだった。
気づいたら向こうと比べてこちらの速度は多分エルフたちよりも数倍はあるであろう速度で森の中を移動をしていた。
「俺今時速何キロで森の中を散歩してるんだ?」
もはや木に対しては物理的に垂直抗力と摩擦力の分の力しか使っていないとおもう。持っていたスマホは、電源を切っていたので充電はまだ十分あった。
速度メーターを起動してみる。
見た途端少し驚き、地面に着地後も数秒間滑った。
「時速183㎞!? さっきのすれ違ったエルフたちとぶつかってたら大惨事だ」
生物的に恐怖を感じなかったってことは、180出しても大丈夫なのか、車、今後いらないな。
今の体を使った移動にはもうだいぶ慣れてきて、あの木の枝の高さくらにならジャンプで届くとわかった。
実際ジャンプ一回で枝の上についた。
「シューッ」
あ、あれ? この服に四角い穴空いてたっけ? すると今度は矢が1本後ろから足元の枝に刺さった。
後ろを振り向いてみると、さっきのエルフの男たち、なんかスゲー人を殺そうとしている目でこっちを睨んできてるんだが!? もう一人に関してはもろ木々の間を飛びながら弓をこっちに向けてロックオンしているのだが!? あれこれ考えるより逃げた方がいい
全力で逃げる速さは圧倒的にこちらのほうが上だが、後ろから矢の雨がやまない。
同じような速さだからこそ見えた、あの矢には風魔法? らしきものがかかっていて、緑色の光がうっすらと矢を包んでおり、矢の後ろにはジェットエンジンと色は違うが緑色のジェットのような風が見えていた。
矢を風魔法でさらに加速させているようだ。
「何とかまいたようだな~」
今がどこにいるのかわからないから近くの一際おおきなきを登り周りを見回す、頭と目線を左から右へ。
「城があっちの山だから、逆か」
そういって、振り向くと、驚愕な光景が、今立っている木が30メートルだとすると、遠くに見えているあの木はどれだけ高いのだ。
雲にも届きそうなほど高くて大きな大樹が一本だけ約3キロ先に見えていた。
その周りにも数本その木の半分くらいの大きさの大樹が3本ほどたっていたそれはまさにファンタジーゲームの世界にある憧れていた光景の一つだった。
某忍者アニメのように木々の間をジャンプで移動するのはやはり憧れますね!筋トレ続けていればいつかできるのでしょうか(笑)
そんなこんなで今回も楽しめていただけたら嬉しいです。
夏休みもそろそろ終盤、大学が始まったらかける時間が残念ながら減ってしまいます。これからもよろしくお願いします。始まるまでは今のペースで書いていきます!




