第二章48 特別授業3
そこは、映画の中に出てきそうなドラキュラ城そのものだった。真っ赤な月が大地を照らし。城のてっぺんには大きな穴が光を吸い込んでいる。唯一映画などと違うのは。その城下町はとても栄えていた。
「悪い子ね、勝手についてきちゃうなんて。でもね、ここから先はだめなの。お姉ちゃん! お父様が待っているから速く行こ!」
「やはり、あなた、あの男の眷属ね」
(この城、ヴァンパイアの純血、エリカの父、あいつしかいない!)
「その子は私のペットよ。一緒に入れないと最後まで反抗してやるわよ?」
「構わん、通せ」
「お父様!」
!? 目の前にいるその男は以前のような大学生くらいの男ではなく、50代の白いひげが生えているおっさんだった。
(このおっさんが、あのブラド……なのか?)
「随分懐かしい姿ね、ブラド」
「お姉さまっ、お父様にそのような話し方は……」
「構わん」
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「この部屋は、変わらないのね」
「その部屋はね、お父様が時を止めた部屋なのよ? でも、誰の部屋なのかしら」
「さぁ、誰の部屋かしらね」
そう言って、エリカはどこか、悲しそうな顔をした。この部屋は、誰の部屋、なのだろうか。
さらわれてきたが、エリカの自由行動が許されている。やはり娘には甘いのだろうか。廊下を歩いていると、目の前から銀髪赤眼の男が歩いてきた。
「久しぶりだな、エリカ」
「お久しぶりです。お兄様」
「どうだ? 時間はあるのだろ? 少し、茶でも飲まないか?」
「ええ、もちろんです」
「随分、元気そうだな」
「おかげさまで」
「随分と有能な眷属を手に入れたようじゃないか。名前は何と言ったかな?」
「彰のことかしら」
「彰っというのか、ぜひ今度会ってみたいものだ」
「そんなことを堂々とこのようなところで話していいのですか? 彰は、この国の王にけがを負わせた大罪人よ?」
「おっと、そうだったな。だが、この部屋には結界が貼ってある。多少の発言の自由は俺が保証するさ。そこにいる魔獣はお前のペットなんだってな。あまりかわいいとは思えないが」
「これはシルビアっていう機械種のペットよ」
「本当に、それだけか?」
「? 何よ? ずいぶんとこの子に興味あるみたいね」
(まさか、気づかれたか)
「エリカ様、ブラド様がお呼びです」
そう言って呼び出されたエリカの向かった先、その部屋には知らないもう一人の男が座っていた。
次回は20日の予定です~!




