第二章46 特別授業1
どうしてこうなった、獣になってしまったと思いきやエリカの城の近くで、何かを伝えようにも、言葉を話すとそれは、吠え声になってしまう。ただ一つ、疑わしい人物が
「おや、またお腹がすいたのですか? マスッ、いえ、クロ」
「ヴヴヴ~」(お前もう俺の正体わかってるだろ!)
「強気な子にはご飯あげません」
その手に持っているのは金属皿の上に乗った極上の霜降り肉。この姿になってから、この世界で食べられるとわかっていたはずの果物が、食べるとお腹を壊すようになった。前に本で読んだことあった気がする。
肉食動物が植物を食べると。もともと植物を食べるためにできていないから消化不良を起こしてしまう
(つまり、しばらくは生肉を食べるしかないってことか。肉料理は好きなんだけど、さすがに毎日生肉っというのは……飽きる。早く元の体を取り戻さないと)
「食べたいですか~? いらないんですか~?」
(なんかむかつく)
「私は機械でできた体ですので栄養摂取は必要ないのですが、味覚を楽しむことはできます。よってこの肉は私がおいしくいただきましょう」
(う~~~~)
「からかいすぎましたね」
そう言っていかにも高級そうな肉の塊を目の前に置いてどこかへ行った。と思うと、また懐かしい声がした。
「この子を飼いたいっていう事?」
「肯定」
「わかったわ、でも世話は自分でしなさいよ?」
「承諾」
(待て! 待て! 待て! こいつのペットとして生きていくなんて絶対嫌だ!)
魔力は操れても、魔法は発動できない。言葉は話せても、“あいつら”にしか通じないしな。
(そうだ、あいつらには通じるんだ)
――――――――――――――――――――
「なあ、何か呪いとかを解除する方法はないか」
「急に現れたと思ったら、今度は呪いの解除方法だあ?」
「知らないか? 頼れるのはお前らくらいなんだよ。敵対するつもりはないんだ」
「あ~、長耳の泉に浄化作用があると聞いたことがありまっせ」
「長耳の泉、か。わかった、ありがとう」
「行くなら気を付けろ、長耳の連中につかまったら火で焼き殺されてから食われるぞ」
(気を付けないと、フレイやばあさん、それにアルンの姉妹たちのごはんになるってことか。と言うか、あのばあさんはまだ元気にしてるのかな)
「お前が意外といいやつだっていう事がわかった」
「さっさと行け」
――――――――――――――――――――
エルフの森までいつもより時間がかかってしまった。道中またあの鳥、たぶん子孫かな、また襲われたけど、魔力の衝撃波をぶつけたらどこか違う方向へと飛んで逃げていった。
「ここから先は、エルフの領域、探知結界ができてるって聞いたしな~さっさとあそこまで走って、飛び込んで、この体を元に戻せば大丈夫だろう」
深呼吸をし、イメージトレーニング
「森を走り抜けてから、たぶんすぐに矢の雨が降ってくる、それはビーストブレスで吹き飛ばして、すぐに泉の中に飛び込む! よし、こう行ける!」
足を踏み入れほんの3秒、何かが一瞬、ほほを掠った。それは、木製銃弾だった。
次回は12日の予定です




