第二章40 これで終わりだ
試合は順調に勝ち進み、ついに最後の試合まで勝ってきた。そして、これまでの試合では、精神魔法でひたすら目の前で家族や友達が一人ずつ目の前で一人ずつ惨殺される映像を脳内に流されたり、肉体強化の魔法で自らの肉体を強化し、物理攻撃を防ぐと同時に攻撃力を倍増している人がいたり。
そして、今目の前に立っているそいつを倒せば、学園の中で最強の称号レベル7となる。どちらにせよ、レベル6はもう確定した。ここにまで勝ち進んだのにはもう一つわけがある。それは、ほかの一次試験合格者たちの実戦経験不足。何はともあれ最強にならなくても、ナンバー2は確定となった。
「元人間でここまで生きてきて、その上ここまで勝ち進んできたことを素直に褒めてやろう、だが、命が惜しけばこの場から去るといい。命までは奪わない。俺は人間が嫌いだ。弱いくせに他者を傷つけ、同じ種族同士でも争いが絶えない。そんな愚かな種族はこの俺が王になった時は滅びつくす」
「そうか、こっちの世界の人類がどんな人か、わからない。だけど、俺も、そうやってすべてを決めつけるお前のことは今嫌いになった」
「この俺のことをお前呼ばわりとはいい度胸だ。前言撤回。お前は今後の障害として排除しよう」
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「それでは! 最終試合! サクトVS彰! 新入生最強を決める試合が! 今! 始まる!」
試合が始まった途端に凄まじい魔力ぶつかり合いが始まった。通常では魔力は見えない。だがその濃度が一定の値を超えると、種族によってさまざまな色がつく。
広い闘技場と観客席に紫色と血色の魔力が嵐のように吹き荒れる。二人ともまだ一歩も相手に接近していない。
「おい、おい、冗談だろ。アイツらのどこが新入生なんだよ」
「この魔力量、どう考えても」
「キングクラス」
「王子はともかく、元人間のあの男にあれほどの魔力を放出できるとは思えない」
「元人間でありながら王族と互角なほどの魔力放出! なぞに包まれたこの新入生は一体何者だ!?」
そして、最初に攻撃を仕掛けてきたのはサクトのほうだった。指で軽く彰に向けて空中で炎を描いただけで紫色の竜巻が彰に向かって襲い掛かる、それをギリギリでかわしたはずが、腕には鋭い刃物で斬りつけられたような傷が。
「これは、かまいたち……じゃないか」
「そんなエルフどもの貧弱な魔法と比べるな!」
確かに、風魔法のかまいたちと比べると重みが半端ない。バリアで防ごうと思っても、見えていない斬撃は防げても、見えている斬撃の濃度はバリアのそれをはるかに超えていて。バリアがまるで紙のように切り裂かれる。
「防げない、なんでこっちの攻撃が効かないんだ」
防げないなら避けるしかない、彰はよけながら魔力弾をサクトに向かって打ち込むが体に当たる前に消される。皮膚の表面を魔力で覆うことによって、受けるダメージを分散、そして地面に流す。実質ノーダメージ、というよりはダメージをずべて地面に受け流している。
サクトの攻撃は彰に着実にダメージを与えてきた。だが、彰のほうは竜巻を避けるので手一杯、というより、観客席を覆っているはずの分厚いバリアにまでひびを入れている
「ちょっと、これ、大丈夫?」
観客席を守っている5人の教師陣にとっても
「これは、きつい」
普通の攻撃魔法ではサクトにダメージが一切与えられない。なら
「ヘッドショットさえしなければ殺すことはないだろ」
「? なんだその変な(魔導)杖は」
彰はバリアで自分を守りつつ、親指を少し斬って、魔力をその手から流れ出る血に込めた。バリアが破られると同時に彰は地面を思いっきり魔力を帯びた拳で殴り周囲を大きな土煙で覆った。
「こざかしい! これで俺がお前の位置を見失うとでも思ったか!」
そして、ついにサクトが彰にとどめを刺そうとし、土煙の中でかすかに見えた彰の影に向かっていき。首をつかみ、至近距離で心臓に黒いヘビを噛みつかせた。
「なに」
その彰は、血で作った分身だった。そして本物は
「これで、終わりだ」
次回は19日の予定です~!
戦闘描写もっとこう書いたほうがいいんじゃない?というアドバイスもぜひ!




