第二章39 最強のその先
「まだ入学しておらんのに、君はあれかトラブルに巻き込まれる体質か何かか」
「う~ん、そうかもしれない」
「今回の件はワシの管理不足じゃった。今後はもっと警備を厳重にしよう。そこでじゃが、一次試験はもう合格したうえ試合もすでに上位まで進んでいる君ならと思って、どうじゃ、ナイトに入らないか」
「ナイトって、あれか何とかナイトのないとか」
「そう、騎士と書いてナイトと読む。かっこいいじゃろ」
「そうですね。何だか、懐かしい」
「だけど、俺はやめておくよ」
「ただとは言わない、こっちの世界で使える給料も出すぞ」
「うっ」
「聞いたところには、お主はエリカ嬢のところで」
?
「ニート生活をしていたと聞いたぞ」
「この世界にもニートという言葉があるのか」
「いや、ない」
「でも、確かに、働いてはいなかったかも」
あっちの世界では今頃高校に通っている年齢だ。エリカだって保護者ってわけでもないし。まあ、食事が他人の血だけで済むっていうのは経済的ともいえるのかな。
実際一日一噛みすればいいし、あっちの世界だったら夜のバイトで家賃とかは十分稼げるし余ったお金で好きなものを買える。
「いやいや、何考えてるんだよ、ダメだろ」
「? 何がじゃ」
「いいや、ちょっと、変な事考えちゃっただけ」
「まあよい、で、どうじゃ、バイトだと思ってしてみんか」
「そう、ですね、あれ? そういえば、ここって学費は?」
「お主の分ならエリカの嬢ちゃんが全部払っておるよ」
「えっ、それって、あっちの世界の額だとしたら、いくらぐらい……」
「う~ん、一千万ってところかの」
「!? いっ、一千万!?」
「ざっと30年、30年分の寿命を金銭として彼女は払ったのだよ」
そう言いながら一滴の血液の入った瓶を智也の目の前にかざした。
「浄化してあるからヴァンパイアの眷属になることはない、そうじゃな、三十年間、自分の体の老化を停める薬っといったところじゃろ」
「そんな液体、あっちの世界に持って帰ったら。まだ生きたいと願う年寄りの財閥の爺さんに売れば絶対いい値が付くだろうな」
? だけど、三十年も渡したら、エリカは、残り何年になる、そもそも残りの寿命はどうすればわかる
「ヴァンパイアは、この世界で最も短命で最も長命な異質な存在なのじゃよ」
「最も短命で最も長命?」
「矛盾しておるじゃろ、短命なのは、彼らは20年しか寿命をもっていないから。そして、長命なのは、他者から寿命を奪っているから。呪いともいえるだろう。もし君にワシの血を半分吸われたら。わしの寿命は半分減る。あと30年生きられるとして、15年分吸われ、そしてその15年後には必ず死ぬ」
「でも、残りの寿命なんて、どうやって知るんだよ」
「魔力の量は人それぞれ、だが、一瞬の出力には寿命によって限度がある」
「短ければ短いほど出力が大きいってことか」
「命は短いほど、激しく燃え上がる」
「そんな中ヴァンパイアという種族は、わずか20年という短命ゆえの大出力、にもかかわらず他人の寿命を奪い生き続ける」
「チートじゃないですか!」
「その眷属に選ばれし者はヴァンパイアの能力を得る上に元の種族の力も使える」
「それって、透明人間が眷属になったら。目に見えないヴァンパイアの出来上がり?」
「そうゆう事じゃの。それゆえに、本当に信頼した人しか眷属にしない」
「それは、なんで」
「君はもう少し頭が切れると思ったのだがね」
「多分、ヴァンパイアを超えるほかの何かが眷属という形で誕生するってこと?」
「わかっているではないか、聞く前にまずは自分で答えを探したまへ」
「それと今回の件はどういう」
「君の中には、あの男の力が眠っている。それをここにいる間に使えるようになれば。君は多分、最強となる」
次回は15日の予定です!




