第二章38 勘違いから始まる暗殺生活
「こっ、このけだもの! 私を押し倒したにもかかわらずお嬢様まで!」
彰のすぐ下には昼間にいたお嬢様が
「思っていたよりも随分と大胆ですね。悪くないですよ? 男の子はこうでなくちゃ」
「何を言っているのですか! お嬢様! 早くそんな男を」
「そうね、あとで褒美を与えなくては」
「姫様何を言って」
「そこにいる二人、姿を現しなさい」
そうだった。あの三人に追い詰められて
「まて、もう一人いる」
「もう一人?」
「お嬢様が感知できない人がいるなんて?」
「その人はあなたに任せるわ」
「ちょっと待て、あいつらは」
「あいつらは?」
「俺の獲物だ」
「そう? なら、立ち上がりなさい、その傷ついた体でどこまで戦い抜くか見せて頂戴」
「なら、この特等席で見ててくれ。もし死んだら。遺体は禁忌の島にある湖に捨ててほしい」
「そんなもったいないことしませんよ。眷属級って結構珍しいのですよ? 研究したい人は山ほどいます。もちろん私を含めて」
「そりゃー、死ねなくなったな」
「ならせいぜい生き続けることね」
そう言って、二人の部屋から飛び出していった。
「一体何がありました」
部屋の管理人? らしきビースト種のおばさんが部屋に入ってきたころには一切傷の入っていない。まるで最初から壊れていなかったような部屋がそこにあった。
「申し訳ありません、ご心配をおかけしました。少々高いところにあった本をとろうとしたら転倒してしまいました」
「お怪我はないですか?」
「はい、無傷ですので戻っていただいて結構です」
幻が、本物となる、それがさっきまでお嬢様と呼ばれていた女性の能力。そして、幻を見せる少女の名前はまゆりだった。
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「ターゲットを確認した。これより撤退を開始する」
「撤退? どこに逃げるんですか?」
「何!? さっきの一撃をくらってまだ動けるのか。どうやらヴァンパイアに選ばれし哀れな物の呪いは噂通り簡単には解けぬようだ」
「呪いとか何のことかわからないけど。今はっきりと一つ分かってることがある。それは、俺がお前たちを絶対に逃さないことだ」
「元人間風情が私たちを止めると? お前の存在が我らの任務の邪魔になることは充分にわかった。今度こそ、その息を止めよう」
「やれるもんならやってみな」
そして、再び激しい戦闘が始まり、やはり今度もスピード型のやつが真っ先に彰の動きを封じようと回ってきた。だが、その時。彰の背後から拘束しようとした瞬間。そいつの手足が彰の体をすり抜けた。
「この力はまさか!」
三人があのお嬢さんの部屋のほうを見る。そして、
「何よそ見してんだよ」
そのすきに彰は今度逆にそいつの首にかみつき。思いっきりそいつから血を吸い取る。
彰の髪はますます漆黒に染まり、目が赤く輝き始めた。
「まずい、今すぐそいつから離れろ!」
「もう遅い」
彰に血を吸われたそいつは、ぼろ雑巾のようにその場に捨てた後。
自分の仲間の扱いを見ていたもう一人は視線を彰のいたはずの場所に戻したが、そこに彰の姿はいない。
「こっちだ」
振り向くと顔のすぐ近くに彰の口が近づいていた
大男は手で自分の首を覆ったと同時に巨体からはありえないほど俊敏な動きで彰から距離をとった。だが、そこは予め作っておいた真空の空間へとそいつを誘い込んだ。そこから距離をとれば、結界から出て周りに気付かれてしまう。だが、は向かっても実力差は知っている
何やら話そうとしているが、真空の中では声は伝わらない
「何言ってるのかわからないな~」
後ろので枝が揺れた音がしたが、この音はどこかへと去っていく音だった。
「仲間には見捨てられたみたいですね。かわいそうに、あ、こっちの声も届かないだった」
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「計画は失敗しました」
「……」
「あと一歩のところで毎回見知らぬヴァンパイアが邪魔に入ってきて。おそらくシール家の新たに雇った護衛かと」
「そうか、お前はもういい、ほかの任務を後日渡す」
「いえ! この任務はぜひ私に!」
「ずに乗るな!」
「はい。失礼しました」
「くそ、どうやらその邪魔者を先に排除しないといけないようだな」
最近少し忙しくなってきて、一日遅れました!次回は11日の予定です!
今日見ていただいた皆さんありがとうございます!
気が向けばいいので、感想くれると嬉しいです!




