第二章37 ターゲット
あの日と同じ二人組、その目的地はまたもや女性陣の宿舎。だが、状況から推測すると、こいつらの目的はただの覗きではなさそうだ。まあ、ファンタジーの物語の主人公あるまじき行為をするのも悪くない。
二人に気付かれないように、こっそり背後に近づいていく
「まだ、ばれてない」
すぐ後ろの木の上まで接近してた。
(よし、ここからなら一発で殺さずに行動不能にできそうだ)
そんなことを考え、そして、全身を魔力で強化と硬化して。攻撃、というより闇討ちをする準備済ませた。
「あの時の牛以来か」
「フフフフフ」
(!? 誰だ!?)
近くを見回すが、誰もいない、いないのにすぐ近く、まるですぐ背後、耳元、目の前で聞こえてくる不気味な笑い声。確実に聞こえているのに姿が見えない。
「暗殺っていうのはな、こうやってやるんだよ」
一瞬だけ、すぐ耳元にあった葉が揺れた。その直後に智也は狙っていた二人組のほうに何かによって。弾き飛ばされた。
起き上がると、あの二人と、当然だが目が合った。
「どうやらお前は殺さないといけないようだな」
後ろを振り向くと空間が若干歪んで見えている部分があった。その部分に次第に色づき。もう一人がその姿を現した。
「まさか暗殺をしようとした俺たちが狙われる側になるとはね」
「邪魔者はすぐに排除する。俺たちの顔もこいつには割れてしまったことだし。どのみちこいつを殺しておかないとあとあと面倒なことになる」
「暗殺とか、殺すとか、ターゲットのすぐ目の前で物騒な相談をするのやめてもらえます?」
「おっと、そうだね。まずは君を片付けるとするよ」
「そんな簡単に排除できるかな?」
一瞬で懐まで接近されたが
「同じ技は二度はくらわない」
すぐに一瞬で後ろに下がったが、もう一人の存在がいなかったと思ったら。右ほほに強い衝撃が。そのまま樹にたたきつけられたと思ったら大男の方が突進してきて。そのまま体当たりをくらい大きな音とともに彰の背後にある大樹が折れた。
「くっ、こんな大きな音を出したら、また警備の人が来るんじゃないのか?」
「今回は周囲に結界を張ってあるから、音も、この空間内の変化はすべて外の世界には伝わらない」
「だから安心して逝きな」
「へ~、それを聞いて少し安心したよ」
「? 何を企んでいる」
「つまり、お前たちが俺を殺す前に、俺に与えられた選択肢は二つあるってことだろ」
「いや、お前をこれから待つのは死神だけだ」
この三人は明らかに実力を持っている。その上連携もしっかりとれている。この前の戦い方を見てもおそらくこの三人は普段から戦闘になれている。誰か一人が欠けたところで残った二人が別の連携をとるだろう。一人で戦闘のプロ三人を相手にするのは不利。
うん、無理、逃げよう。今まで危ないところでいつもあの力に助けられている気がするが。最近はなぜか発動しない。ある時期を過ぎたあたりからあいつの声も全然聞こえなくなった。そんなあるかないかわからないような力に頼るような危ないこともできない。
「僕から逃げられると思うの?」
時速180キロは出るはずのヴァンパイアの速度に軽々とついてきた。そのまま手足を絡ませてきた。この森全体が結界におおわれているから。絡まれたことで身動きできなくなりそのまま高速で転倒した。
対策はわかっていても、手足を封じられた今のこの状況で、ここから逃げる方法は。あんな地面に大穴を開けそうな一撃。また同じところでくらったら今度こそ死ぬ。
バリアを柔らかくし、お腹のすぐ上でそれを作り、地面に逃がす。そして、その時に起こる衝撃を利用して、どこに吹き飛ばされるかはわからないが。このつかまっている状況からは離脱できる。
腹を殴られるとは限らないが。一か八かの賭け、そして、その賭けは、彰の勝利だった。腹のすぐちかっくに張った衝撃を逃すことのできるバリアを地面に接続し。思った通りに吹っ飛んだ表紙に。絡んできたそいつとも離れた。
ただ一つ。飛んで行った方向が悪かった。
(水晶の割れる音)
(ん……また、やわらかい、感触)「また助かったのかな」
「いいえ! 今から死んでいただきます!」
(? どこかで聞いた声)
? 手が何か丸くて柔らかい物体を
「あん、そろそろ、どいていただきたいのですが」
ゆっくりと頭を上げると、昼間に見た二人組のお嬢様のほうが自分の下に。
周りを見ると、あの仕えている女の子が。今にも殺にきそうな目でこっちを見てくる。
そして、柔らかな感触の正体は男の夢だった。
次回は7日の予定です!




