第二章34 もういない……
「だからセバスチャンなのか」
「執事といえばセバスチャンじゃろ?」
「まあ、イ〇ス・マイ・ロードとか、○○で執事ですからとか、○○家の執事たるものとか言わせてなくてよかったよ」
「? 言わせているとも、当然ではないか」
「なんか、いろいろとアウトな気がしますけど、まあいいや。他にも日本から来た人とかいたりするんですか?」
「知る限り、もう一人お主と同じぐらいの年のやつがいる」
「そいつは? この国にいるのか?」
「いや、一度っきりしかあったことがない、何せ奴はもはや神々の生体兵器と化している」
「? 生体兵器?」
「大戦が止まっている原因の一つがそやつじゃ、ただ一人でアンデッドの大軍を消滅させ、魔族の村を次々と襲い続けた張本人。大戦が中止した今でもまだ一人で魔族や魔獣を狩り続けている。そのあまりにも残忍な殺し方故神にも見放された」
「そいつは危険そうだ。本題に戻るけどなんでエリカが無事だとわかるんだ」
「お前さんにやられた傷がまだ完璧には治ってないのじゃよ」
「手負いのおっさんくらいならあの娘でも相手できるさ、それに、その指輪を託した何かが守っておるのじゃろ?」
「どこまでばれてる?」
「ワシしか知らないよ、それに魔神の再来と呼ばれている男がこの国に来ていると知られれば大騒ぎじゃ。それに龍族とエルフに守られている国なぞワシから見てもかなりの脅威的な新興国じゃよ」
「? 新興国?」
「簡単に言えば急速な発展を遂げつつある国じゃ。おまえはこの世界を選んだんじゃな」
彰はしばらく迷ったが何か違和感を感じた。この世界を選んだ? 選ぶってことはどっちかしか選べないってことだよな? ? どういうことだ?
そんな彰の様子を見ていると学長が少し心配した様子で彰を見つめる
「もしや、知らぬのか」
うすうすと何を言おうとしているのかわかった気がしてきた。だけど、どこかで焦りだけがこみあげてきた。
「湖などが異世界に通じるのは二つの星が最も接近した夜、そして、場所は同じであろうとも、二つの世界の時の流れは違う」
そう言われて何かに気付く、前にあの世界に帰った時と、この世界に来る前の家族の様子が、おかしい、確かに母親と姉に遭った時は夜の上部屋も暗かったけど、この目でははっきりと二人の顔は見えていた。それに、もう高校生だった姉だ。彼氏位できてもおかしくもないか。
だけど、確か働いているスーツを着ていたおっさんたちがいた。あの日は平日、姉もそんな夜遊びをするような人じゃない。
「そうじゃな、こっちで一日過ごすと向こうはもう一月以上経っていると考えていい」
つまり、最初いろいろあって、こっちの世界で7日ぶりに日本に帰ったが、向こうではすでに7か月以上経っていて、高校三年生くらいだった姉が、すでに社会人、それか大学生になっていた。それならあの時間に出歩いているのも理解できる。
!? もうどれくらいこっちの世界で過ごした。アルンがいなくなってから二年以上が経った。つまり、二年以上あっちの世界には帰っていない。30倍以上の速さで時が過ぎているとしたら向こうではもう60年経ってしまっている。
「もう、あっちの世界に君の知っている人はいない」
次回は23日の予定です




