外伝1:これじゃ、あいつらと一緒じゃないか
「もう、死のう」
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大学生になり、毎日ネトゲ三昧で単位をギリギリ卒業できるまでキープしていたが
「おい、お前、ちゃんと卒業する気あるのか」
「えっ、あっ、はい。もちろんありますよ~」
そんな軽い気持ちで4年生を迎えていたら
「留年」
「えっ、今何といいましたか?」
「だから、君もう一年留年」
そのあとに時間は、まさに地獄だった。親に頼み込んだが
「このバカ息子が! もう知らん! 行きたきゃ勝手に行け! 自分で学費と生活費稼げ!」
そう言って、家から追い出され、何とか借金をし、バイトを掛け持ち、必死に勉強し何とか大学を卒業しようと頑張った。
だが、仕事を見つけられず、もう心は限界を迎え、橋の上からの飛び降り自殺を計画した。
「窒息死、苦しいだろうな~、でもこの高さならわんちゃん頭から落ちて衝撃で死ぬかな~、友達はネトゲ仲間だけ、家族にも呆れられた。もう、俺が死んでも悲しむ人はいないだろうな~」
そして、意を決して飛ぼうとするが、目の前の高さに足がすくみ、再び恐怖がよみがえり、片手が飛び降りた足場につかまった。
「やっぱり! 死にたくない!」
そんな意志とは裏腹に、その手は無力で、自分の体重を支え切れなかった。
(来世があるなら、もっと心躍るネトゲのような世界がいいな~)
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「おい、おい!」
「うっ……」
「おっ、目が開いたぞ」
「ここ、は……」
「こいつ何話してるんだ?」
「一応面倒を見ておきましょ?」
「俺も賛成だ」
それが、仲間たちとの出会いとなった。
話している言語はどこの国にも当てはまらない。
はじめは慣れなくってしぐさで何とか伝えようとして、それから片言だけど少しだけ話せるようになった。
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あれから数え切れない日々が過ぎ、季節が多分二回廻った。
「よっ、今日職業決めるんだったな! お前はどの職業にするんだ?」
「それは! もちろん! 魔導士!」
「お~! 魔導士か! 明日時間あるよな! 一緒に魔族をたおしにいこう!」
この世界に来て、診断を受けると魔導士になる適性が俺にはあった、しかもかなり魔力を持っていたという。
「おう! いこ!」
ゴブリン、獣、ヴァンパイアと次々と倒していき、
「これだよ、こんな世界に生まれたかったんだよ! リアルRPG最高!」
いつの間にか自分の力に溺れていた。
魔族たちを殺し続け、そんなある日
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「今宵、吾らはこの村に最も近い魔族の居住地に攻め入る! 人族が魔族におびえて暮らす日々は今日を境に覆る!」
そんな夜に、
「火を放て!」
矢の先によく燃える樹皮を巻き付けてそれに火をつけたものを躊躇なく魔族の領地へと発射した。
「よし! 大幅経験値アップイベント!」
そんな軽い気持ちで突入した。そして、今まで通りに魔族を狩っていったが、ある小さな家の扉を蹴破ると、そこには角の生えた女の子が二人ひどくおびえていた。
「やめろ! 子供には手を出すな~!」
そう叫びながら金棒を持ちこちらに向かってくる鬼が一体、その一体の首を仲間の火のついた矢が射貫いた。その時に吹き出た血が体にかかり、家の中でおびえている子供と、地面にたまった池から見える自分の顔、そして、血に染まった手。
「これじゃ、あいつらと同じじゃないか」
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「ちょっとどいて、中の二人は私が仕留めるわ! ? どうしたの? どきなさいよ」
「ごめん、少し、気が変わった」
外伝もう少し続きます、ぜひ引き続きおつきあいください。
次回は11日に投稿する予定です




