第二章20 人は見た目じゃない
「追って、来てないよな」
あの国にかつて何があったかわからない、だがあの女王様の魔族に対する恨みは本物だ。いや、もしかしたら、あの国すべての人が魔族に対して深い恨みを抱いているのかもしれない。
旅の最初の国でこんなことがあり、彰のテンションは最初と比べかなり下がってしまっている。血液パックの中の血を飲みながら荷物を引っ張りながらひたすら海へと歩く。
目的地のゲヘナに行くには海を越えないといけない、空に浮いている島もなぜか海辺や海上には浮いていない。海を越えるには七日に一度の船に乗っていくしかないと言う。幸い、船が出るまであと二日あり、もうすでにはるか遠くに海は見えている。歩いてでも間に合う、はず。
森の中を飛び回っている小さな妖精はみんな臆病で彰が近づくだけで隠れたり逃げたりしている。話し相手がいないというのはやはり寂しいものかもしれない。森の中をひたすら歩いていき、獣に襲われそうになったり、木の枝に引っ掛かり荷物が少し破れたりしながらも港のようなところについた。西洋風の建物でいろんなお店がある。そして、さらに遠くの海の上には現代にはほとんど存在しない帆を使う船が港に泊まっている。よく考えたら、お金を持っていない。
「おや、初めて見る顔だね。どこに行きたいんだい? 案内するよ」
「いいんですか? お金持ってませんよ?」
「うっそだろ? その指輪、で文無しかよ!」
「やっぱ金目当てか!」
「ゲッ、ふ、フフフ~ン。何のことやら。おっとそこのお姉~さん! 今晩空いてない? よかったら一緒に飲みにでも行かな~い?」
「詐欺の次はナンパかよ、そんな奴についていかないほうがいいぞ」
「? じゃあなたが案内してくれるかしら?」
「俺も来たばかりのよそ者だよ」
「そう、なら一緒に回りましょ?」
「おいおい、そんな奴と回るより俺と楽しいことでもしようぜ~」
「そんな奴……お前にそんな奴呼ばわりされたくねぇよ!」
「あぁん!? やんのか!」
そう言いながら、そいつの右手に青い火が
“ほう、青い火を操るとは珍しい”
「じゃ、炎対決とでも行くか」
「お前も火炎魔法か、いいだろう! このフォン・ツネ様の力見せてやる」
「お前じゃ絶対この指輪の力には勝てない」
「言うじゃねか、終わったらお前の指をへし折ってからその指輪俺のものにしてやるよ」
“なあ、炎龍、おれ、久しぶりにイラついている”
“丁度吾もこやつをつぶしたいと思ったところだ”
そして、場所を移動し、船が近くにない砂浜まで移動した。二人とも同時に火を相手に向けて放射だが
威力が根本的に違った。最初は互角かと思い、二人の火が混ざりあい赤と青の巨大な火の柱が空へと舞い上がる。次第に赤が青を呑み込むように広がり始め、勢いを増しフォンへと襲っていく。
そこには、黄色く輝く地面が、フォンはギリギリのところで隣の海の中へと飛び込み、運よくすべてを焼き尽くしてしまいそうな火の玉から逃れたのだった。夜になり、宿代、食費、あと船代も<親切に>出してくれるそうだ。




