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遠くから見ていた理想郷(エデン)で夢を見る  作者: †リオ†
第二章 決断、そしてこれから
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第二章15 空島

見知らぬ土地へと旅立つ前に、炎龍のところに立ち寄った。


「主よ、旅に出るそうだな」


「あぁ、少し、寂しくなるが元気でな。ふっ、元気でなは余計か。もう数千年は風邪もひかずケガもせずに生きてきたんだもんな」


「何を言う、この翼にはお主の刻み付けたこの刀傷があるではないか。久々に心が躍ったぞ。吾が主よ、それに主の行く道をお供するのも吾の勤め」


「……そう言うと思った。だが、今回俺は身分……いや、正体というべきかな? それをかくしてゲヘナの魔術学園に行くのだ。おまえを連れていったら入学どころじゃなくなってしまう」


「つまり、吾はともには行けぬという事じゃな。まあい、手を出すがいい」


? とりあえず右手を掌が上を向いた状態で炎龍へと手を伸ばす。

 すると、彰の掌に半径10センチほどの魔法陣が、そして、炎龍の巨大な爪が彰の掌の上に乗せられたと思ったら。周囲のマグマから吹き出る火が彰の手元に集まってきて、熱気が熱くて目が開けられない。

 熱風が彰の髪を左へと吹き、手には何か爪とは違う小さなもう一つの感触が、風が暴風から次第に収まっていき、最後には炎龍の息だけ伝わってくるまでに収まった。(臭くはない)


「……これは、指輪?」


 手の上には赤い宝石のはめられた黄金の指輪があった。


「それを持っていれば吾力は汝とともにある。魔力ほんの少し流し込めば吾とつながり使いきれぬほどの火がその指輪から放たれるであろう。そして、本当に危ういときは、その指輪を全力で地面にたたきつけるがいい、さすれば吾はすぐに現れるであろう。そして、それを使えば吾と会話することができる」


「それじゃー試しに」


 そう言って、少しだけ魔力を流し込んでみると、指輪の宝石が光りだしたと同時に炎龍の口元近くに魔法陣が現れた。


「……え~と、考え違いならいいんだが、まさかこの指輪とその魔法陣が繋がってて、お前が直々に火を出すってわけか」(知らなかったほうがなんかカッコよかったかも)


「加減はどうするんだ?」


「そうじゃな、今ここで決めよう」


「え~と、じゃ~このくらいで……」


そして、最終的に決まったのが、5段階


一段階目はガスバーナー程度の弱い火

二段階目は火炎放射器と同じ威力で

三段階目半径二メートルほど巨大な火炎弾

四段階目広範囲に及ぶ大威力火炎放射(疲れるからあまり使わないでほしい)

最終手段指輪を破壊することで発動する空間転移魔法による炎龍の召喚


「まあこんな感じかな、助かるよ」


「くたばるんじゃないぞ?」


「ふっ、万が一の時は頼むよ。じゃあな」


「あぁ、さらに成長して帰ってくるがいい」


洞窟の出口から出ると、涼しい風が森の中から吹き出てきた。


「やっぱり、あいつの家は熱いな~」


“聞こえておるぞ”


「あっ、そういえば会話成立するんだったな」


“外しておけば聞こえなくなる”


「まあ、話し相手としてちょうどいいさ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 10日分の食料と予備の衣服を詰め込んだかなり大きなバッグを台車に乗せて森の中へと歩き出す。


「何だか、懐かしいな」


 この世界に始めてきた日、人間がいかに弱いか嫌なほど思い知った。実際都会暮らしの人間がアマゾンに放り出されたら一か月持つかどうか。

 初めのころとの緊張感とは違い、近くに気配があるとすぐにわかるし、近寄ってきたところで、ドラゴンクラス以外さして脅威にもならない。噂をすれば……


 「ツー」


 蛇の発するような音が森の奥から聞こえる。トカゲ男か、目が合ったが、襲ってこない、そしてどこかへと身を潜めていった。今でも殺されかけた恐怖は若干残っている。森の中を歩いて行って道中アルンに教えてもらった食べられる果物をとってかじりながら歩く。もう一時間くらい歩いたかな。空を見上げると、巨大な鳥にドラゴン、小さな妖精がこの広大な大空を舞っている。


「平和だな~」


 そう言った次の瞬間、遠くの湖の中から長くて大きな魚? 龍? が飛びあがり、巨大な空を飛んでいるカマキリをパクっと一口。そして、湖の中へと再び落ちていき、大きな二三メートルほど高い波を起こし、静まった。


「やっぱ撤回、この世界は、違う意味で物騒だ。森の中はやっぱり見晴らしが悪い、そういえばあの空に浮かぶ島々にまだ一度も行ったことないな~」


荷物の上に立ち、荷物の下に、風を集めて、空へと飛ぶ。


「この量を風で持ち上げるのは魔力の消費が激しいな」


 一つの大きな島へと飛び、そしてすぐに着地した。それは物理法則を無視した特別な土と普通の土が混じった地面、人差し指と親指で少し摘まんでこすってみると奇妙な現象が起こる砂が二手に分かれて、普通に地面に落ちていく砂と……


「空におちている、たぶんこの二種類の土が丁度釣り合っているのか。いいこと思いついた」


 この数の荷物を持ち歩くのは、不便だ。たまにタイヤに土やら石やらが挟まるし。この島だってほかの島を見る限り、特にこの座標に固定されているわけでもなさそうだ。空に浮かぶ島々はすべて風の影響を受けている。風の吹く方向に、わずかながら雲よりは遅い速度で、ゆっくりと移動をしている。


「いっちょやってみるか、行きたい方向は確かあっちだから」


 彰は行きたい方向の逆へと向かい、淵に立つ。深呼吸を、魔力を指輪に集中する。


「早速頼むよ」


“随分と龍使いの荒い主だ”


 手を前方に広げ赤い魔法陣が目の前に浮かび上がる。段階を少しずつ上げていく。やはり島一つ動かすほどの力は、そう簡単にはできない。当分使うことのないと思っていた4段階目まで使い、島が少しずつ行きたい方向へと加速する。歩くのよりは速いスピードになったところで、加速はやめた。


「空飛ぶ島に乗って旅か」


 彰の異世界における初めての旅が始まった。

第二章はこれにて終わりです!

今まで読んでくれてありがとうございます。

第三章からはからは彰の旅物語から始まります。

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