第二章9 嵐
雨が降り、雷が鳴り響き、そんな中空を見上げるとそこには輝く大きな太陽が見えていた。いや、そこにあったのはまぶしいほど光を放ち、遠くからでもまるで太陽のように熱を感じることのできる。
そんなドラゴンの前を漆黒な剣士が対峙している。
「吾が主として、ふさわしいかその力を示せ」
「一つ、勘違いを正したい、俺はお前の主になりたいわけじゃない」
「ほう、ならばなぜこの吾に挑む」
「力が欲しい、誰にも負けない力が。いや、大切な人が誰も傷つかないための力が欲しい」
「ならばこそ、吾にその力を示し、吾を服従させるがいい、吾がかつての主がそのようにし、そしてただ一人で大軍を敵にした」
「あぁ、だが俺はお前を服従させ、従わせる気はない。友として、今後力を貸してほしい」
「友……か、久しい呼び方だ。よかろう!わが友としてふさわしいかその力試させてもらう!」
炎龍の周りを温度が一気に上昇する。そして、雨水が熱に反応し水蒸気となっり、二人を包み込む。霧の中、彰はなぜか少しだけ、笑った。
「これほどあれば、十分だろう」
彰も自分の周りの霧を消し去るために風を操り上の方向に霧を飛ばす。
「知らないなら一応言っておくが、風魔法は火に弱いぞ」
「承知の上だよ」
「では!」
炎龍がこちらを睨んで大きな口を開き、一気に火を広範囲に放出する。
その火をもろにくらってしまった彰は全身に軽いやけどがついたが、さすがというべきかヴァンパイアの回復力のおかげでみるみる回復していった。
それを待たずに、炎龍は一瞬で目の前に現れ、彰よりも大きな手で彰に襲い掛かる。それに気づいた彰はとっさに禁じられた剣を握り、防ごうとするが、直撃は何とか剣で受け止めたが。一気に地面にたたきつけられそうになる。
彰は炎龍の方向へと飛んでいき、炎龍に魔力弾を放つ、が炎龍の翼から飛ばしてきた突風で簡単に軌道を変えられた。
「簡単には、いかないか」
意識して、剣から魔力が流れ込まないようにしていたが、多少は無茶しないと絶対こんなもしかしたら数千年は生きてきたかもしれないドラゴンに勝てるわけがない。
覚悟を決めて、剣についていた封印に自分にすでに流れ込んでいた魔神の力を手に集中させる。外側と内側で力が共鳴し封印にかすかに抜け道が生じる。
そのことに、彰はあのスナイパーライフルに模様が現れたときに、気づいた。この渡された力は、受け渡しが可能であること、そして、この封印が不完全であることも。
「多分もって三分、それで俺の意識は多分失う。その間に決着をつける」
「まさか今が全力じゃないだろうな」
突然、下のほうから紫色の光の粒子が四方へと飛ぶ。
「ほう、その力は。よかろう! 全力でかかって来るがいい! 吾も久々に全力の一撃をお主にぶつけよう」
そして、赤く燃えていたはずの炎龍が黄金に輝き始めた。すさまじい熱風が、どんどん伝わってくる。(火の温度が1000℃あたりの時は黄色になる)
「おいおい、その色は生き物としてもはやおかしいんじゃないかな。一か八か(いちかばちか)」
彰も全力で意識を保ち、炎龍に向かって全力で魔力の斬撃を放つ。それと同時に、炎龍ものどのすぐ近くまでに貯めていた、膨大な温度と量の火をありったけ彰に向かって放出する。
斬撃は炎龍の火炎を二つに切り裂き進んでいく、だが次第に速度は遅くなり、どんどん押し戻されていく、が、炎龍から吐き出される火も、威力が次第に衰えていき、双方の力が空中で渦となって、小さくなり消滅した。
「互角か」
「フッ、なかなか楽しかったぞ。吾の勝ちだ」
そう言って炎龍は再び黄金に輝き始める。
それに対して、彰の右手は、すぐには回復不可能なほどダメージを覆っていた。
「この世から消え去るがいい!」
炎龍がのどに、再び熱をため始める。
それを見た彰は、冷静に、炎龍のいる空よりもはるか上空へと飛ぶ。風の激しい雲の中にまで入り、すべて突き抜ける。
「やっぱりな、本当にいい意味で輝いて見えるよ」
炎龍は分厚い雲の上からでもわかるほど輝いていた。それを確認した彰は何かを剣の握る方に結び付けた。
そして、全力で剣を輝いているターゲットに向けて投げた。
上空から高速で、炎龍に飛んでいく剣、そして、炎龍の火炎放射が再び彰に向けて放たれる。
剣は炎龍の放出した火の中を通り、まっすぐと炎龍に突き刺さろうとする、それに気づいたときにはもう避けられないと判断し、大きな翼でそれを受け止めた。
「このような小さな剣では吾にダメージは与えられぬぞ」
そう言った直後、小さな稲妻が剣にあたった。そして、剣の先についていたのは、金属の棒だった。
「10億ボルトの電圧! 100万アンペアの電流! 力に換算して1兆キロワット! 耐えられるのなら耐えてみろ!」
計算:10億ボルト(電圧)×100万アンペア(電流)÷1000=1兆㌔ワット
熱雷:急激な上昇気流によってできる積乱雲から放出される電気
そして、電気の性質上、一番高いところにいるものに真っ先に襲い掛かる。翼に刺さった剣から電気が音をたてる。次の瞬間、空にたまっていた電気が一気に炎龍へと襲い掛かる。そして、ついに炎龍は地面へと落ちていく。
「俺の、勝ちだ」
そして、脱力し、彰も地面へとおちていく。
雲を突き抜け、森におちることころを。
「ほんと、無茶しすぎよ」
落下していた彰を優しく包み込む白い腕と漆黒な翼。
「エリカ……」
そのまま彰は意識を失った。
またまた日にちをまたいでしまい申し訳ない。
次回は友達との約束があり、15日は投稿できません。なので次回は16日となります。
楽しんでいただけたら嬉しいです。本日誤字脱字などを見たところ、恥ずかしながらかなり見つけまして、直しました。
もし見つけたら、教えていただけると嬉しいです。




