第二章7.5 アルンとエリカ
時はさかのぼり、彰が元の世界に一度帰還するために湖に飛び込んだ直後。
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「でっ、話してもらおうかしら? うちの(強調)彰とどんな関係?」
「私は彰の婚約者です!」
「ほほう、アイツいつの間にエルフの娘に手を出したのかしら」
「出会う前から」
「?」
エリカは理解できないとでも言うように頭をかしげる。
「フフッ、フフ、運命の出会いとでも言いたいのかしら? 」
アルンが顔を赤くしながら
「それもあるかもしれないけど」
小声:……ふろ……おふろ、
「生まれて初めて異性に裸を見られた上に体に消えない傷を!」
それを聞いたエリカは若干眉毛がびくびくしている。
「へっ、へえ~。彰のやつ意外と大胆だったのね~、ただのむっつりだと思ってたのに」
「違うよ、彰は確かに、ただのむっつりだったよ。お風呂は確かにのぞいたけど、森を抜けた先がたまたま私たちのお風呂場だったってだけだし」
「まあ、そうよね。こんな美人がそばにいるというのに全く手を出してこないし。起きたときにいたずらで隣で横になっていても、チラッ、チラッとしか見ないし」
「でも、そんなところがいいのです。ドラゴンに襲われた時に必死で助けてくれて」
「あなたと父は嫌いだけど、あなたとは気が合いそうね。そういえば名前は?」
「アルンです、エリカ……さん?」
「エリカでいいわ、私は自己紹介するまでもないようね」
「エリカ有名人だし、魔族の姫様なのにひとりでこんな森の中の古城に一人で住んでるなんて」
「それは……後々教えるわ。そろそろ日が昇ってくるから、私は自室に戻るわ」
「え~眠っちゃうの~? もっとエリカといろいろ話したかったのに」
「太陽はあまり好きじゃないの」
そう言って、二人は湖を離れ城へと戻っていく。
エリカはアルンに城の近くで何をしてもいいと言い残し、自室へと入って行った。
城壁の上で、アルンが足をぶらぶらさせながらつまらなさそうに遠くを眺めていた。
「何か面白そうなことないかな~」
そう考えながらボーとしていても仕方ないと思い城壁を飛び降り、着地する直前くらいで風を操り自分の体を少し押し上げ、速度を落とした。
森の中を見回し、トカゲ男も、翼の生えた狼も、見かけない
「木の実でも集めてたーべよ」
そう言って、森の中へとアルンが入って行く。
「え~と、あった」
アルンが木の上に登り一本の太い枝に背負っていた弓の一本を引き抜き、尖った刃で丸くなっている枝の部分を切り裂く。すると、中から白く少し先の部分が赤い果物が出てきた。
この世界の果物は自分の種を枝で守っているらしい、どうやら彰はまだこの世界について勉強が必要なようだ。
そうしていると、森の中から変な音が聞こえてきた。
“ブーン、ブーン”
まるでバイクのような音が森の中から近づいてくる、音が聞こえたアルンは今立っている木よりももっと高い木に登り音のする方向を見つめる。森の中を何かが抜けてくる。今立っている木の下を何かが通り抜けていった。よく見ると、機人それもすごい数がエリカの城へと向かっている。
「速くあの引きこもりに知らせないと!」
そう言って機人たちと同じ方向に向けて森を駆け抜ける
城が見えてきたと思うと、すでに何体か機人が城壁を登っている最中だった。前に襲ってきた時とは違い、今度はしっかりと学習をしているようで朝はエリカが眠っていると知り、さらにはなるべくこの前の大砲を持ったような大きな機人を連れてこずに、人型のが大量に、そして静かに壁を登っていく
「エリカ~!」
「そんなに大声出さなくても聞こえるわよ」
そう呼ぶとエリカがカーテンを開け周りを見下ろすと、そこには大量の機人が壁を登っている最中だった。
あくびをし、窓からジャンプし機人に向かって飛び蹴りをする。すると、まるで動きを読まれていたかのようにエリカの蹴りを簡単に避けた。そして、集団でエリカに襲い掛かる。朝という事もありエリカは普段の力を出せない、一気に両腕をつかまれ、同時に三体が刃物の形をしている腕で背後からエリカに刺しかかる。
突然右方向から矢が一本風を纏いながら、三体を次々を打ち抜いた。
「お礼はあとでね!」
「ふっ、こんなガラクタ私一人で大丈夫よ」
「強がらないの!」
突然エリカが大人バージョンへと姿を変えた。
「さあ、反撃開始よ」
そう言って、魔力を弾の状態にし、手から砲弾のように放出する。でも、前のようにはうまくいかず三発ちゅう二発はよけられてしまうようになっていた。どうやら機人は前回の戦闘においてエリカのデータを取得し対策をしてきたようだ、そうとしか考えられない。軽量化されたボディー、脚部に装着された四つのタイヤによる高速移動、そしてエリカのわずかな動作から次の動きを演算し、最適な回避行動をとる。
だが今回の機人にとっての計算外はアルンだった。城から二百メートルもある森からの正確な狙撃、これも完璧とまではいかないが、近距離から撃っているエリカの魔力弾と同じくらいは当たっている。近距離だと明らかにエリカとアルンのほうが不利だった。
アルンはこのままだとエリカが危ないと思い、こっそりと城のほうへと移動し、近距離でならほぼ百発百中だった、だが、
数体がアルンのほうへと向かっていく、接近戦に関してはアルンはただの人間よりは強いが、昼間のエリカよりも弱い。それを見たエリカはアルンを助けに行き。足止めに成功した。
「これでかりは返したってことでいいかしら?」
「かりだと思ってたんだ~」
そして、二人は共同戦線を張った。エリカがアルンを守り、アルンが機人たちを次々と狙撃していく。
そんな戦闘をひたすら続けていくうちに、時間がどんどん過ぎていき、すっかりと夕日になっていた。
ロボットたちが一斉に森の中へと振り向き、動きが止まった。どうやら森の中に指揮官のような働きをしている個体がいるようだ。
そして一斉に来た方向へと帰っていく。
「どうやらあきらめて帰っていくようね」
「はあ、疲れた~」
「いいわ、今日の働きに免じて私の城で一緒に住むことを許してあげる。それに、彰がいない今、話し相手にあなたはちょうどいいわ」
「昼間は私の力が必要なんでしょ~」
「まあいいわ、そういうことにしてあげる。一緒にお風呂でも行きましょ、何だか臭いわ」
「えっ、ここにもお風呂があるの?」
「えぇ、彰が作ったのよ」
そして、二人は森の中の露天風呂へと行き、その後も一晩彰のことやお互いの知りたいことを語り合ったのだった。
次回は10月9になります
ぜひ引き続きお楽しみください
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