第一章12 遺跡の真実への入り口
誰の声かもわからず、逃げる先もわかっていなかった彰は、遺跡のほうから聞こえた声に従った。
アニメやゲームなら覚醒イベントやらダンジョンイベントないしは髪の導きなのだろうが、この世界はまだわからないことが多すぎる。
「あなた、エルフたちと同じ移動方法してるわね、教えてもらったの?」
「自分で覚えたよ、それより、あいつらなんなのだ、それにこの鎖、なかなかきれないぞ」
「あの人たちはあなたを殺しに来たのよ」
「美人と一つ屋根の下はそんなに重い罪だったとは……」
「ちゃかさないの、私の眷属しかも男だから狙われたの」
「この鎖だけど、あの三人の中で姿も気配も消せる奴がいて、そいつの魔力をこの鎖の鍵穴っぽいところに流し込まないと外れないわ。無理やり外そうとするともっときつくなって私でもただじゃすまないの」
「エリカがてこずる相手か」
そう言いながらも、遺跡の入り口に到着した
「ねえ、なんでここを選んだの? 」
「なんか、呼び声が聞こえてたんだよ、“力が欲しいか”みたいな感じの」
それを聞きおふざけ口調で話していたエリカが真剣な顔になって黙り込んだ
この遺跡はかなり大きく、大きさで言うとファンタジーゲームによくある海に面した都のような広さをしている。
というより、もともとは都だったじゃなかったのかと思えてくる
遺跡を地図で見たときは、かなり大きい面積かかわらず、周囲には6か所に同じような装置が海の上からも突き抜けているのが見える上空から見たらちょうど円形を描くように並んでいると前にエリカに教えてもらった。
あの声と何か関係があるのかな
遺跡の中鎖で動けないエリカを抱きかかえ、身を隠せそうなところを探す、今のエリカからは多少は都合のいいことに魔力をほとんど感じない、
アルンがエルフ族のみんなを連れて助けに来てくれることを期待するしかない、
倉庫? のような建物を見つけた、エリカを隠すにはちょうどいい場所だ。
「エリカ、この世界に来て最初にあったのが君でよかったよ、あの時君がもし俺を眷属にしなかったらどのみち多分失血多量で後々死んでたと思うよ、今度は俺が君の役に立つ番だ」
「やめなさい、あなたではあの三人どころかひとりにも勝てないわよ」
「俺だって男だ、かっこいいところ特等席で見ていてくれ」
そう言って遺跡の中の外の見える一室にエリカを置いて出ていった。
「いま、あいつらをおびき寄せてしまっているのは今間違いなく俺から出ている、エリカの近くにいるのはまずい」
そう言って遺跡の中心部へとさらに進んでいく。
一番真ん中にひときわ大きな神殿のような建物がある、あっちこっちボロボロになっていて、身を隠しながら戦闘するにはちょうどいいだろう。
狼が見えた。
あっちこっち嗅ぎまわっているのも見えた。
あのままではエリカが見つかってしまうと思い。
近くのがれきをあの群れに向かって投げる。
中の一体にあたり、視線が一瞬ですべてこちらを向いた。
すぐにがれきの後ろに隠れた。
すぐ隣に穴が開いているのが見え、中に潜り込み、ひっそりとやり過ごす、足音が、近づいてくる、
「近いっ」
そう口にしたとたんこちらへとさらに近づいてくる。
まずった、まさか耳までいいとは思っていなかった。
深呼吸をし、息を止め何とかやり過ごそうとする。
息を止めているせいかわからないが。
自分の心臓の音がどんどん大きくなってきているように聞こえてくる。
足音がさっきよりももっと近づいた、まるで穴のすぐ上にいるようだ。
いや、すぐ上にいる、前足が見えた。
ゆっくりと目の前におりてくる、全体像が……見えた
大き目な狼、全身真っ黒で、口は閉じていて前足と後ろ足の爪はまるで命を狩るための鎌のように鋭い。
こちらに向かって振り向いてくる。
もう、だめだ。
剣をゆっくりと抜き取り、狼の首元に向けて、突進し、突き刺す。
返り血で顔が真っ赤に染まり、口元についた血は獣臭かった。
瞬時に周囲を囲まれ、アルンを追っていたはずのヴァンパイア
「よお、ずいぶんとこのレウ・フロウ様に手間かけさせやがったな、楽に死ねると思うなよ? 」
《レウ・フロウ》が月を背景に狼たちを従わせ、高台の上にてこちらを見下ろしていた。
敵じゃなかったら本当にかっこいいと思う。
かなわないと知り逃げる、速度は狼たちとほぼ互角、
何とか一番大きな建物の中に逃げ込めると思ったのだがその手前で、一匹が左足にかみついた。
激痛を伴い、倒れこんでしまう。
続けて両腕を一匹ずつかみついてくる。
「やめ! 」
彰が目を鎌鼬で切ったアイツだった
「そいつは、俺がとどめを刺す」
そう言って、手に持っていた槍を、すさまじい速さでこちらに向けて投げてきた。
次の瞬間、見慣れた銀髪が、目の前に、だが体のあちこっちが傷ついていた、見た目から察するにあれは絞められてできたあざだ。
無理やり元の姿に戻り、そして体力だけであの鎖を引きちぎったのだろう
エリカはそんな体で、バリアを張り槍を食い止めようとする
「早く逃げなさい! 」
「お、俺は、君を守ろうと……」
「姫! なぜそいつのためにそこまで! 」
「早く! 」
だが槍はどんどんバリアを貫通してきてエリカの脇腹を貫通し。
彰の頬をかすって、遺跡の床に突き刺さる。
突如、遠くから数千本の矢が彰たちの周りの狼たちを蹴散らしていく。
傷ついたエリカを抱きしめ、助けに来たアルン達を見て希望が見えた、
そんな時に、地面にひびが。
どうやら足元の床の下は空洞になっていて、長年ですでにもろくなっていたらしい。
足元が崩れ、気絶したままのエリカの頭部を上半身を落下時に傷つけないように抱きしめ深い闇の中へ二人が落ちていく。
第一章のラストスパートなので是非次回もお楽しみください!