第一章10 束(つか)の間の平和
魔王が刺客をエリカの城に向かわせたことを、まだ彰は知らない。
彰はその頃、
「え~と、どれだっけ?これかな、ミルクの味のする樹液を流す木」
試しに木を少し切ってみる、待ってても流れ出てこない。
もう少し太い木で試してみると、半透明な白い液体が出てきた。
どうやら葉がすべすべな木、ではなく葉の形がギザギザの木が正解なようだ。
ヴァンパイアであるエリカは血さえ吸えれば他の食事はただの娯楽でしかない。だが彰のような純血じゃないヴァンパイアにとっては血以外も少しは必要な栄養源なのだった。
だが、そのまま食べるにはこの世界の果物は今のところあまりおいしくない。
そこで考えたのがエルフたちのように、料理をすることだ。
料理はヒッキーにとっては必須スキルだと考えている! 夏休み、親が仕事で姉は出かけて家の中で一人、休みの日に外に出たくない人にとって、料理という趣味はかなりいい趣味だと思う、いや、本当に。インドアだし、一人暮らし始める時に困らないし。うん。
実際普段ネット上の料理レシピを見ながら簡単に作れる現代社会、嫁の必要性はどんどん減ってしまっているような気が、結婚率の低下も少しはこれがかかわってる気がするよ。
「まっ、あっちの世界はもう関係ないがな」
そう言って、あれ以来会っていない家族や友達のことを思うと少し寂しくなった。
「今頃心配しているかな~、警察沙汰になってないといいけど」
せっかくこの世界に来れたんだ、生きるための知識も力も身に着けないと。
今更家が恋しくなったから帰りたい、とも思えないし、帰れない、もう、俺は人間じゃない。
ともかく今鍋がない、食材も足りない、ついでに言うと持ち帰った二つ目の黄結晶はキッチン(仮)となった城の二階の空いている部屋でIHの代わりに使っている。
こんな大きな城、一人しか住んでなかった故、部屋はほとんど空いている。
ほかの部屋をいろいろ見ていくと一つ気になる部屋があった。
その部屋にあるものは本来、ここにあってはおかしいものなのだから。
あの部屋を見てから心の中がずっともやもやする。
エリカに聞いてみたかったが、口元まで出かかった心の中にしまって。
「あとは、肉か」
草原に住んでいる大きな角を持った牛、エルフたちによるとその牛がまことに美味らしい。
だが、スピードが速く、警戒心も強い、あの角に一撃当たったら俺でもただじゃすまないんだそうだ。
早速到着、草原
そして、あいつがターゲットの【ギバ】
発達した筋肉、巨大な角を支えている首、速度は多分互角。
あの首を一気に斬り落とすしか仕留める方法がない、しかも気づかれずに一瞬で、たまに森の中に入ってあのすさまじい甘さの果物を食べるんだそうだ。
つまり、森の中で仕留めるしかない、しかもチャンスは一度きり。偶然にも、
「こっちに近づいてきた」
木の上に登り、果物をたくさん集めておいたところまで行く。
案の定このいま潜んでいる木の真下に来た。そして、罠かどうか疑っているようにも見える。周りを見回している。
まだ命をとることに対して罪悪感が、
さっきまで生きていたものが、徐々に肉の塊に代わってしまうのを見ると、自分がそうなるかもしれないと考えてしまう。
ターゲットが場所についた、その真上の枝にしがみつき、深呼吸をする。
剣を抜き取り、上がっていく心拍数。
息を吐き切り、そして思いっきり吸い込んで一気に首に向けて剣を振り下ろす。
持ってきた台車に乗せて帰ろうとするが
さすがに二人では食べきれないから、エルフの森へと持っていく。
道中、あ、見覚えのある(小鳥)……また近づいてきた、さっきの牛は何の恨みもないから、躊躇はしたが、お前は違う
巨大な牛をかついていく最中、またアイツが襲ってきた。
「フッ、ドラゴンを倒したんだ、お前は余裕だ」
そう言って牛を乗せた台車をいったんおいて襲ってきた鳥の攻撃をかわし、背中にしがみつく。
そして、背中に向かって全力のパンチを繰り出し気絶した鳥は地面へと落下する。
地面についた後、動かない鳥を見ながら、
とあるセリフが脳内を横切った
「僕を喰おうとしたんだ、僕に喰われても、仕方ないよね? 」
うおー! 前から言ってみたかったセリフ! 言えた!!
そうこうしながらエルフの森到着。
「若造よまた来たか、どうやら婿になる準備ができたようじゃな! 手土産まで持ってきたとはな」
えっ、婿? どういうことだ?
「アルンの首にある二つの穴、お主の仕業じゃろ? エルフの女に傷をつけていいのは夫だけだ」
フレイ背後ろからアルンが顔を赤くしてこちらを覗き込む。
そして、まぶしい、まぶしすぎる笑顔でとどめを刺してきた。
「しっ、仕方ないから、あなたを私の旦那様にしてあげる! これからよろしくね!」
そう言ってさらに顔が赤くなっていく、なんだこのかわいい生き物は。
さらに王が、
「娘にはもっとこの世界を知ってほしい、では、明日から娘は任せた」
まだ未成年そして若いという理由を付け、婚姻は先延ばしにしてもらったが。
持って行った獲物はエルフたちにさばいてもらい。
帰り道、荷物は減ったが、台車の上に鼻歌を歌いながら両足をぶらぶらして、恥ずかしそうにこちらをチラ見してくるポニーテールをし、耳の尖った美少女がもう一人増えてしまった。
「エリカにどう説明すれば……」
そのころすでに城の近くの森には不穏な三人の影が城の近くに潜んでいた。
明日からしばらく忙しく書けない日々が続くかと思います。なるべく週一で投稿するようにしますので、
これからもよろしくお願いします。