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ロープレ世界は無理ゲーでした − 領主のドラ息子に転生したら人生詰んでた  作者: 二八乃端月


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第249話 ダルクバルトの後継者①

お久しぶりです!

またぼちぼち投稿していきます☆

 

 ☆


 父ゴウツークとの面会を終えて城を出た俺は、その足で母タカリナがいる宿へと向かった。


「ああ、ああ、ボルマン……! 無事だったのねぇっ!!」


 何度ノックしても呼びかけても反応がなく、やむなく宿の主人に合鍵で部屋の扉を開けてもらった俺の目に飛び込んできたのは、頭から布団を被り丸くなって震えている母親の姿だった。


「ボルマン聞いてちょうだい!! あの人が……あの人が連れて行かれちゃったのよおっ!!!!」


 親父が逮捕されたショックからか丸めたボロ雑巾のようになっていたタカリナは、俺の顔を見るや駆け寄り、縋りつくように崩れ落ちた。


「どうしましょうっ、どうしましょう?! 私たちこれからどうなっちゃうのぉ???」


 ボロボロと涙をこぼす母親。

 この人に何かしてもらった記憶はないけれど、その姿はあまりに哀れで、突き放す気にもなれない。


 俺は母親の背中をポンポンと叩いた。


「母上、大丈夫です。先ほど王城に行き、父上と話をしてきました」


「ほっ、本当に?! あの人は……あの人と私たちはどうなるのっ???」


「フリード伯……『海賊伯』に支援を頼みました。父上は何年か牢に入ることになるでしょうが、死刑は避けられると思います。母上はこの件については無関係ですから、罰せられることはありませんよ」


「本当に?」


「ええ、本当です。ただし国からの補助金を長年にわたり横領してきた訳ですから、エチゴール家でその全額を返済する必要があります。今までのような贅沢は一切できないと思って下さい」


「っ! ……わ、わかった、わかったわ。それで領地は……ダルクバルトはどうなるの?」


 不安げに俺を見上げる母。

 俺は片膝をつき、母親に目線を合わせた。


「ダルクバルトの男爵位は私が継ぎます。まだ成人していないため後見人が必要ですが、フリード伯が後見を引き受けて下さいました。領地を今のまま引き継ぐことができるかどうかは分かりませんが、伯爵ができる限りの調整をして下さるそうです。きっと悪い結果にはならないでしょう」


「そうなの…………」


 へなへなと座り込むタカリナ。

 俺はもう一度母親の背中をぽんぽんと叩いた。


「さあ、母上。お一人だと不安でしょう。私たちの宿に移りましょう」


 こうして母親をピックアップした俺は、俺たちが泊まっている『ローレントの夜風亭』に戻ったのだった。



 ☆



「さすがに疲れたな……」


 母親の宿泊手続きを終え、スイートの自分の部屋に帰ってきた俺は、そのままベッドに倒れ込んだ。


 夕陽がカーテンの隙間から差し込んでいる。

 ジャイルズとスタニエフはまだ戻っていない。


 今日は闘技大会の予選の日だ。

 二人は朝早くに闘技場に出かけて行った。女性陣も今は応援に行っているはずだ。


 朝、観に行けないことを詫びたら、ジャイルズは笑ってこんなことを言いやがった。


「坊ちゃんだって戦いに行くんだろ。こっちは気にせず『勝って』きてくれよ。俺もダルクバルトの名に恥じないよう頑張るからさ」


 まったく、生意気な奴だ。

 そんな部下に俺は「本戦は観に行くからな」と言って、互いに拳をつけ合わせたのだった。


「『勝ってくる』か……」


 父親の告訴は終わった。

 親父と話もした。

 母親にも爵位を継ぐことを宣言した。


 だが、この虚しさはなんだろう?


 フリード卿からは「数日内に今回の件の沙汰が下りるはずだ」と言われている。––––「叙爵の準備をしておけよ」とも。


 全てがうまくいっている……はず。

 ああ、いや。

 まだ一つ残ってたな。


 ミエハル子爵……いや、もう伯爵か。

 エステルの父親への報告がまだ残っていた。




 あいつは先日の『春の叙任式』に合わせて陞爵し、伯爵になっていた。


 陞爵の表向きの理由は『王国内におけるギフタル小麦栽培技術の確立の功績』。


 だが裏の理由は、フリード伯に言わせれば「王家の俺に対する牽制だろうな」ということだった。


 ミエハル領を治めるエステルの実家、クルシタ家は、現王朝に連なる貴族の家門だ。

 フリード領を治めるエリスの実家、バルッサ家や、うちのような旧王朝以前からの土着の家門とは立ち位置が違う。


 要するにミエハル領は、土着貴族ばかりのローレンティア東部に新参者の現王朝が打ち込んだ楔という訳だ。


「俺たちが進める『テルナ川水運協定』を王家や西部貴族が警戒している、ということだな」


 フリード伯はそう言って豪胆に笑っていたが、俺としてはあまり笑えない。


 帝国と繋がっているミエハルが、ローレンティア王国国内でもポジションを上げた。


 しかも俺が発案した協定をきっかけに。


「笑えねーよ」


 こぶしをベッドに振り下ろす。

 ぼふっ、とシーツが沈み込んだ。


 今後、ミエハル伯爵とどう付き合っていくのか。


 明後日ミエハルの王都屋敷にエステルと挨拶に行くことになっているが、頭の痛い話だった。


「はあ……」


 疲れた。

 消えてしまいたい。


 俺が深いため息を吐いたときだった。


 ––––カランカラン


 部屋の呼び鈴が鳴った。




「…………」


 もそもそと起き出す。


 一体、誰だろうか。

 今は誰にも会いたくないんだが。


 居留守を使いたかった。

 だけどそういう訳にもいかない。


 わざわざスイートの客を訪ねてくるのだ。

 急ぎの用事を持った誰かが、扉の向こうにいる。


 ここで出なかったことで、エステルや仲間に何かあったら後悔してもしきれない。


 その想いだけが、重い身体を動かした。


 カチャリと鍵を開ける。

 ドアノブをまわし、手前に引く。


 そこに、彼女が立っていた。


「ボルマンさま……?」


 俺の顔を見たエステルは、一瞬驚いたような顔をして立ち尽くした。




「……どうしたの?」


「あの、ロビーにいたらボルマンさまが帰って来られたので、それで––––」


「何しにきたの?」


「っ!」


 苛立ちが言葉に出る。

 エステルの顔が歪む。


 ……ダメだ。

 こんな言い方したらダメなのに。


 いつもなら逢えて嬉しいはずなのに、なぜか今はむしゃくしゃしてまともな対応ができない。


 だが––––


「お部屋に、入れて頂けませんか?」


 エステルは、まっすぐ俺を見つめて微笑んだ。


 なんで?

 なんであんな言い方をされて、そうやって微笑むことができるんだ?


 ドス黒いものが込み上げてくる。


「入ったら、君にひどいことするけど、いい?」


「……え?」


「俺の慰みものにするけどいいか? って言ってるの」


 黒い感情が止まらない。

 もう俺は、彼女の目が見られなかった。


「ごめん」


 そう言って扉を閉める。


 ––––が、


「えいっ!」


 ドンッ


「えっ?」


 扉が開き、何かが飛び込んでくる。

 そしてそれは、そのまま俺に体当たりして床に転がした。


 胸のなかに感じる、温かい体温。

 ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる。


 目の前の人が、顔を上げた。


「ボルマンさまを、押し倒しちゃいました」


 腕の中の婚約者は、そう言ってくすりと笑った。



並行連載中の作品もよろしくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
待ってた
更新ありがとうございます。 こっちはもう更新されないのかと思ってたので最新話の投稿は嬉しいですw 王国内でのボルマン様も立ち位置が激しく揺れ動く中で、変わらず忠義を見せる仲間たちと、愛情を注いでくれる…
もう更新はされないのかと諦めて、お気に入りから外そうかと思っていました。 話の佳境に入ってからの突然の打ち切りは、あまりにも辛いものがありますね。 ぜひ今後は「やり直し公女」と並行して連載を続けてくだ…
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