第19話 変身
次回更新、明日7時10分
翌日。
再びトッド村へ向かう。
村長はまた空き家に泊めてくれると言ってくれたが、そう借りを作りっぱなしではいけないと思ったので、畑に余った肥料をまいてあげることにした。
道すがら倒した白骨から得た肥料である。
Gグレードの肥料はしばらく使わないと思うしね。
「はあ……?」
「そりゃどうも」
村人たちには肥料という概念がなかったらしく、たいしてありがたがりもされなかったが、まあ、気持ちである。
それから、またF級モンスターを狩る日々。
7日で農園へ帰り、枯れた花が遺した種を拾う。
鍬で土をならし、Fグレードの肥料をまき、種を植えなおし、増えたぶんの種は食べる。
そして聡子と風呂に入ったらまたトッド村へ……
という繰り返しだ。
モンスターとの戦闘もだいぶ効率化された。
特に一ヶ月ほど経った時、刀に魔力をまとわせることができるようになって、物理攻撃が超強くなったんだよね。
「ねえ、これできてるよね?」
「ニャ……うむ!」
まあ、軍刀にまとわせられる魔力はまだ1だけだけど……
物理攻撃なだけあって魔法弾よりもダメージ効率がいい。
とりわけ一ツ目トカゲなどは一発で倒せるようになったし、消費魔力も1で済むので重宝する。
こうしてFランク魔物をどんどん倒していくと、やがてトッド村周辺で遭遇することが減ってきた。
「このままだと狩りきっちゃうかなあ?」
「それはないニャ。魔物は闇を放置すると湧いてくるものニャよ」
「じゃあ、なぜ魔物との遭遇が減っているんだ?」
「魔物が増えるスピードよりも、ヒロトが狩るスピードの方が速くなっているニャ」
「なるほど。じゃあ、しばらく待っていた方がいいのかな」
「んーにゃ。さらに西の村へ行ってみるニャ。まだFランク魔物のエリアは続くはずニャ」
というワケで、トッド村よりさらに西のテッデ村へ行ってみた。
テッデ村も聡子を畏れ敬って泊めてくれたが、お返しに畑へGランクの肥料をまいておいてあげる。
「どこへ行っても聡子はエラいんだなあ」
「そうニャ!……と言いたいところニャが、そうでもニャい」
おや、めずらしく控えめな意見だ。
「我の威光が通じるのは、ドーラの森の中だけニャ」
ああ、そっか。
森の主だからだもんな。
森の外の世界では、また別のエラいヤツがいるんだろう。
とは言え、『森の主の威光』には助けられている。
遠出しても日帰りじゃどーにもならんし。
狩りの範囲が広がったことで、Fランク魔物の肥料はさらに集まっていった。
◇
さらに時は過ぎ。
西の村と農園との往復といったサイクルも二カ月を迎えようという時。
いつものように農園へ帰り、花が残してくれた種を集めると二十三個あった。
「タネうめえええええ……!」
あまりの三つを食べると、これで俺の魔力は32となる。
「だいぶ伸びたなあ」
「ニャ、我の力もそこそこ戻ってきているニャー」
と、ネコ踊りする聡子。
そう言えば、ひいじいさんが名づけ主だったことで、俺の力に応じて聡子の力も強くなるんだったな。
魔力32ってことはスネーク・スコーピオンのリーダーより上になってるワケだが……
「ひいじいさんくらいは強くなってるかなあ?」
「調子に乗るニャ。千蔵は魔力ゼロだが……あの三人組が千人いても相手にニャらん」
そ……そんな強いのか、あのじいさん。
まあ、ひいじいさんより強くなりたいだなんて思ってるワケじゃないから別にどーだっていいけどね。
その後、鍬で畑をならして、獲得したFグレード肥料をまく。
≪農園全体図≫
―――――――――――――
【小屋】10%10%10%10%
【庇 】10%10%10%10%
10%10%10%20%20%20%
20%20%20%20%20%20%
―――――――――――――
このように、半分がレベル20になった。
二十枚の畑にすべて種を植えると、一世代(一週間)でおおよそ三つ増える計算になる。
まあ、しょせんは確率だから上振れ下振れはあるんだけどな。
「よし。まだゴードンも来ねえし、先に風呂にすっか」
「にゃにゃ!?」
そう言うと聡子は臨戦態勢に入る。
「観念しろ! ピカピカに洗ってやるぜ!」
俺も覚悟を決めるが、ふと、「そうニャ!」と何か思いついたらしい。
「どーしたの?」
「うむ。千蔵が生きておった時、我は戦闘用の姿に変身していたんだニャ」
「変身?」
マジかよ。いいなー。
「今のキサマの魔力量ならば、もう変身できるかもしれぬニャー」
「な、なんだ戦うってのか?」
身構える俺。
「あわてるニャ。戦闘用の姿なら風呂はイヤではニャいのだ。毛並が引っ付かぬからニャ」
「そうなんだ?」
「うむ。ゆくニャ!」
聡子はそう言うとぷるぷる震えだし、やがてその全身が光りだした。
眩しくて目を開けていられない。
でも、せっかく可愛い聡子が怖いモンスターとかになったらイヤだなぁ。
などと思いつつ、おそるおそる目を開けると……
――パアアア……☆☆
そこに立っていたのは黒髪ボブのセーラー服の少女の姿だった。




