第78セット 先輩の意地、後輩の成長
CチームVS橋誉の回です。
麗奈フォーカス回ですが、2年生編以降の主要人物である乃恵留、ひかり、泉水もピックアップで取り上げたいな、と思っています。
登場人物紹介、今回は乃恵留です。
牧乃恵留 小田原市立橋誉中学校女子バレー部三年主将 6月1日生まれ O型 サイドアタッカー バレー歴は中1から 右利き 172センチ 58キロ 3サイズB85W57H87 好きな食べ物 家系ラーメン 趣味 スポーツ全般、長風呂
中学No. 1との呼び声高いスパイカーで、前年の橋誉中の全中優勝スタメンでもあった、橋誉の絶対的エースにして主将。
やや力任せ気味ではあるが、パワフル溢れるスパイクを放ち、その威力は春希を凌ぐ。
また、レシーブやサーブも全国トップクラスで、始めた時期は学年で唯一の中学生からのスタートだったものの、天性のセンスと麗奈が特訓を付けたことで新チームのレギュラーを奪い取ったほどである。
普段は責任感が強く、主将らしい性格をしているが、本来は明るい性格で、ムードメーカーでもある。
ただ麗奈に対しては甘えん坊で、ぶりっ子化する。
麗奈も乃恵留のことを「弟子」だという認識をしているため、彼女のことを「ノエ」と呼ぶほど信頼関係は非常に厚かった上、今でも交流を取っているほど仲が良い。
しかし、麗奈以外には明かしていないものの、右肘に爆弾を抱えている。
元々野球経験者で、小4の段階でエースを任されるほどだったが、無理が祟って右肘を壊したことで、所謂「ガラスの肘」となっている。
さて、Cチームと橋誉の試合となった。
この試合は、麗奈が怪我明けのため、ベンチスタートとなり、ピンチサーバーとして入ることになる。
ということで、Cのスタメンはこうなっている。
FL 琉菜 (サイドアタッカー)
FC 安奈 (ミドルブロッカー)
FR 珠希 (セッター、一年生)168センチ
BR 梨央奈 (サイドアタッカー、一年生)172センチ
BC さやか (ミドルブロッカー)
BL 韋蕪樹 (オポジット)
リベロ 瑆
麗奈、恵那はピンチサーバーとして控え、彩花がレシーバーとして入る格好になっている。
こうして試合が始まった。
サーブは梨央奈から始まる。
コントロールのいいジャンプフローターサーブを放ち、嘉奈子に来る。
ただここは流石の名門中だ、基礎的なレシーブも安定している。
ボールはAパスで正確に泉水の頭上に回る。
泉水の選択は、無論のこと乃恵留……かと思いきや、ひかりだった。
意表を突いたかのように思ったAクイックだったが、琉菜が食らいついてワンタッチを奪った。
瑆が声を挙げながらクッションボールを拾い、珠希に繋げた。
珠希が選択したのは琉菜。
琉菜へのスピードトスで、琉菜は跳び上がる。
だが泉水もすぐに追いついて、タッチを奪う。
(クソッ……!! 速い! 私のスピードに着いてくるなんて初見じゃいなかった!! 仁藤泉水……!! 話には聞いてたけど、相当センスが高い!!)
ブロックフォローを安奈が処理し、すぐさまAに入る。
珠希もこれに応え、安奈にAクイックを挙げた。
安奈はクロスにスパイクを放ち、得点を決めた。
これをコートサイドで見ていたさやかは。
「すっごい……!! レベルが高い………!! これが麗奈ちゃんがやってた場所……!!」
相変わらず純粋な目で試合を見るさやか。
得るものはやはりあるようだ。
麗奈は感覚がアレなのか、あっけらかんと相変わらずしていたが。
「まあ、あんなもんだよ、橋誉は。むしろアレで調子そんな良くないくらいだね。考えながらやりすぎ。」
「え!? アレで!?!?」
「立ってみたら分かるよ。私の時はこんなもんじゃなかった。自分で言うのもあれだけど、もっと強かったよ。」
「そっかー……確かに言われてみたらそうかも……哀羅ちゃんとか、ホント凄かったもんね……」
「ま、そういうことだから。頑張りなよ。」
麗奈はさやかの背を叩き、激励を送ったのであった。
その後は一進一退の攻防が続く中、Cチーム優勢で試合が進んでいった。
現在22-19。
乃恵留がさやかと韋蕪樹のブロックに苦しむ中、他の選手が上手くカバーし合っているため、マークを分散できているのが実情で、泉水も緩急自在、硬軟自在なトスでCチームを苦しめているのがあった。
珠希もJOCに選ばれているだけあって、トス自体は安定しているのだが、何せ相手は全員がJOCトップクラスの橋誉だ、統率も取れており、琉菜でギリギリ振り切れるか否か、というところだった。
そして慣れてきた乃恵留が決め出すものの、さやかも徐々に珠希とのコンビに合ってきたのか、高い打点からクイックをどんどん決めていく。
この大事な場面、安奈に代えて麗奈がピンチサーバーで投入される。
久しぶりのコート、感触を確かめるようにボールを手で突く。
(……うん、4号とはいえ悪くない……体幹ばっかり鍛えてきたから姿勢も前より安定してきてる……手も今は軽いけどこれは練習したら戻るからいいとして……大丈夫、行ける。ノエ達の成長は認める、だけどこっちも先輩の意地があるからね……ちょっと本気で行かせてもらうよ……)
麗奈はふぅ……と一息吐いて、笛が鳴った1秒後、麗奈はジャンプフローターサーブを丁寧にステップをしながら、インパクトの瞬間にのみパワーを込めて打ち込んだ。
サーブは乃恵留の元に飛び、急速的な弾速からブレて急激に落下した。
だが、麗奈のことを知り尽くしている乃恵留にはすんなりと取れてしまった。
ただそれでも大きく乱れる。
(流石麗奈先輩……!! 怪我明けでも全くブランクがない……!! むしろ進化してる!! 私じゃなきゃ取れてないよ、これ……!!)
泉水は構うことなく、乃恵留にバックアタックを挙げた。
(ふっとばせ……!! 乃恵留!!)
乃恵留は強烈なバックアタックを放ち、麗奈の元に飛んだ。
麗奈は冷静に、ギュッ、と正面に入って全く臆することなく、全く問題なくディグを取った。
しかも綺麗なAパスで、だ。
珠希が韋蕪樹にトスを挙げ、韋蕪樹がクロスに打ち抜く。
レシーブで帰ったボールは、泉水のジャンプトスから、ひかりのAクイックに繋がる。
勘のいいさやかも反応が遅れ、ひかりはターンにクイックを打った。
ボールは珠希がネット際に飛ばした。
だが、人間観察に優れている麗奈はこれも読んでいた。
麗奈が即座にトスアップに入ったのである。
麗奈の能力をよく知っているさやかと韋蕪樹は、躊躇うことなくダブルクイックに入った。
だが、麗奈が選択したのはライトへの時間差だった。
ダブルクイックに完全に釣られていたひかりと嘉奈子は、このトスに驚きを隠せず、目を見開いた。
(ここに来て……!! ダブルクイックを囮にしてライト……!? 嘘でしょ!? 怪我明けでよくあんな感性満点のトスを……!!)
ひかりは驚いた顔を見せた。
それもそのはず、普通ならさやかに挙げるはず。
並のセッターならあの体勢でトスアップをすれば、ネットタッチをしてしまうのが関の山だ、麗奈の体幹が異常なだけである。
しかもその異常な体幹を更に合宿や学校で鍛えていたため、更に強化された麗奈が、今コートに解き放たれているようなものだ。
しかし、これに文句を抱いていたのが琉菜だった。
(まーた難しいトスを挙げて……!! ホント、そーいうところ宇月の後輩ね!!)
持ち前のスピードで走り込み、ブロードのように跳び上がった。
思い切り腕を伸ばして咆哮を挙げてノーブロックのコートに叩き込んだ。
……で、案の定麗奈に対して琉菜はギャースカと文句を垂れる。
「ちょっと、麗奈!! アレなに!? 急にあんなトス挙げないでよ!! 打ちにくいったらありゃしないわ!!!」
だが、当の麗奈はあっけらかんと、憮然としたような顔を浮かべていた。
「信じていなかったらあんなトス挙げないですよ?? 外で観察して、どういったトスが一番力を発揮できるか……考えた結果、これを準備していただけです。」
サラッと化け物級のことを答える麗奈。
しかし琉菜は納得がいかないようで。
「ホントにさ……!! やるなら先言ってよ!! そりゃピンサーで挙げる機会そんなないからいいよ、そこはもう!! 急にやられたらこっちが困る!!」
「……そうですか。」
「マジで宇月に似てしょうがないわ!! ハー‥‥アレの後輩はアレだったわ……」
……どうやら宇月との関わりには苦労しているようで、琉菜は渋々元の位置に戻っていったのであった。
(しっかし、ホントに宇月に似てるわ……これでまだ一年生?? マジで今年だけでよかったと思うわ、心の底で……あのトスをインハイの予選で毎回やってたわけ……?? 末恐ろしすぎる、宇月以外にあんなバケモノは居ないと思ってたけど……もっとそれ以上のバケモノがいるなんて考えたくない……これで確信した、ワラナンはもっと強くなる……麗奈の代になったらカワタチでも手が付けられなくなるかもしれない……それくらいの潜在能力がある……!!)
琉菜の想いとは裏腹に、試合はこのまま優勢に進み、最後はさやかのクイックで25点目を奪ったのであった。
次回は後輩の絡み回と夏岡先生のスカウト回です。
登場人物紹介はひかりを紹介します。
不定期投稿は継続しますが、よろしくお願いします。




