Wounded braver and the Awakened Elf
「ひーちゃん!」
自分を庇って倒れた勇者を、ロインが支える。勇者の背は炎の直撃を受け、無残に焼けただれていた。
「ロイン……ちゃん……無事……か……?」
勇者は掠れた声で、護ると誓った相手……ロインに微笑みかけ、彼女を気遣ったまま気を失った。
「勇者は充分に経験を積んで強くなった。その程度では死なん。それより、君は戦わないのか?」
白龍の蒼い眼光が、ロインを静かに捉える。
「ひーちゃん、今助けるから!」
ロインは白龍の言葉を無視して両眼に涙を浮かべながら、ポーチから薬草を取り出す。
「……」
慌てふためきながら勇者を治療しようとするロインを、白龍は黙って見下ろす。
「ひーちゃん、あなたこんな無理する様な人じゃなかったでしょ……私を守ろうとして無理し過ぎだよ!」
ロインは薬草を手ですり潰し、汁を勇者の背中に擦り込む。
その直後、白龍が咆哮した。洞窟内の空気が震え、天井から剥がれた小石がロインの両肩に降り注いだ。
「今代の勇者は期待できると思ったが……従者は揃いも揃って見込み違いだな。誇り高き草原エルフの長の娘が戦いを放棄とはな。これはまた、三百年待つべきか……」
白龍がそう呟くと、ロインは顔を上げて白龍を睨みつけた。
「傷ついた勇者様を放置して戦う方が、草原エルフの主義に反します! 白龍様、あなたは勇者とその従者たちの……何を見てきたのですか!」
「ほう……神々との取り決めにより……数千年の長きに渡って勇者達を見守ってきた私の目を節穴だと言うか。たしかに、私の目は節穴かもしれん。だが――」
白龍はその長い首を振り上げる様に持ち上げた。
「――勇者もその従者も、その節穴が見込み違いと断ずれば……この白龍自らが処分するというのも、神々との取り決めだ!」
怒りの色を帯びた、巨大な咆哮が洞窟内に響き渡る。白龍が再び青く燃え盛る炎を吐き出した。火炎が二人に迫る。ロインは青く迫る炎をじっと見つめ、両腕を前に突き出した。
「はああああああ!」
ロインが全身に魔力を込め、結界を張る。瞬間、炎の先端がロインの前髪を僅かに焦がし、あとの炎は結界に阻まれた。結界は玉虫色の輝きを放ちながら、白龍の吐き出す強力な炎を完全に遮断していた。
「その力……やはり勇者の血族だな! 亜人族の長の娘でありながらハーフエルフ! 素晴らしい力だ! だが、守るだけでは私は倒せんぞ!」
白龍の目が歓喜の色に染まり、再び咆哮をあげた。
「攻撃魔法も使えるんだから!」
ロインが結界を解除した瞬間――
「ロインちゃんは、俺が……守る……」
「何っ⁉」
――立ち上がった勇者が、ロインにも白龍にも気づかれぬまま、白龍の腹の下に立っていた。
勇者は白龍めがけて、その最強の拳を振り上げた。




