The White Dragon and the Badass Braver
世界の中で最も美しい国と言われる東の国。その首都の中枢にある屋敷の中庭で、東の国の民族衣装に身を包んだ壮年の男がひとり、芝生の上に座って瞑想をしていた。
彼の周囲にある木々は桃色の花を満開に咲かせ、風が吹くたびにその花びらは舞い散って男の肩や頭に積もっていた。丁寧に刈られた芝生は陽に照らされて鮮やかな緑に輝いている。そんなのどかな風景の中に、男は意識を落とし込んで目を閉じ、最低限の呼吸だけをして時を過ごす。
中庭に若い男が駆け込んできた。壮年の男はその慌てた様子に反応もせずに、瞑想を続けている。
「瞑想中、失礼いたします。白龍様……チュウシン王より書簡が届いております」
白龍と呼ばれた男はゆっくりと目を開いて瞑想をやめ、呼吸を整えてから書簡を受け取った。
「やはり……時が来たか。あれからちょうど三百年。頃合いだ」
白龍は書をあらため、軽く頷くと、またすぐに書を書筒に戻して懐に入れ、立ち上がる。
「いつだったか……この花を、サクラと呼んだ男がいたな……」
白龍は桜の花を見上げて、かつての戦友の事を思い出す。
白龍と共に戦った、過去の勇者の事を。
「この花が、サクラ、ですか……」
白龍に書簡を届けた男は、白龍と共に花を見上げる。風が吹き、二人の上に花びらが舞う。
「ああ。あれは……この風の様に気持ちのいい男だった。何代前の勇者だったか……ノモノ君、〝記録〟を覚えているかい」
「白龍様が御自ら戦われていた頃でしたら、千二百年前以前、三代ほど前でしょうか」
ノモノは東の国の歴史の〝記録〟を全て暗記しており、即座に白龍の疑問に対し解答した。
「そうか……あの男が最後の戦友だったから、私が戦わなくなって、もう千二百年経つのか」
「白龍様は……いつか来る予言の時まで生きていただかなければなりません。今代の勇者も、予言の勇者とは限りませぬゆえ……」
「しかし、先代のこともある……私が動くことも、考えねばな」
白龍は眉間にしわを寄せる。
「先代……魔物を喜んで殺し続け、残虐勇者と呼ばれた……」
「あの勇者は、永い時を生きる私が見た中でも、最悪の勇者だった。この私が、死に様すら知らぬ勇者は彼奴だけだ」
「最期は、尽きかけた魔力を爆発させてまで魔物を殺したとか」
「〝記録〟ではそうだが……果たして本当にそうだろうか」
「と、言いますと?」
「あれは……いや。死者のことを言うのは止そう。今代の勇者は……どんな者なのだろうな」
「こればかりは、会ってみませんと」
「そうだな……」
中庭に風が吹き込む。二人の男の肩に、桜の花びらが乗った。白龍はその一枚を指に乗せた。
「この花びらの様に、清い心を持った者であってほしいものだ……」




