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DENON DL103のこと

 音楽ファンでオーディオファンなら、知らない人はいないくらい有名な、超ロングセラーのMCカートリッジです。

 ところでカートリッジって、針と一体になった小さな小箱で、ピックアップともいい、レコードに刻まれた音溝の音楽信号(ギザギザ)を針でなぞり、それを電気信号に換えるという極めて重要な音の入り口です。


 それでDL103は、1965年にNHK技研と電音(現在のDENON)とで共同開発した、NHK FM放送用のカートリッジです。つまりFM放送局でレコードを掛けて、それをFM放送に流すためのカートリッジです。そして1970年に、当時のオーディオファンの強い要望もあり、市販が開始されました。

 そしてそれ以来、アナログレコードファンには「NHKが放送用に使っているカートリッジだ!」と神格化され、「定番」のカートリッジとして現在でも君臨しています。「素晴らしい音だ」と、今でも沢山の人が思っています。

 だけど私が思うに、DL103はそこまで「良い音」でもないと思います。


 誤解なきように言うと、DL103は大変きちんと作られています。だけどこのカートリッジは一般家庭でオーディオファンが、音楽を「いい音」で聴くことを目的としたものではありません。はっきり言って「営業用」なのです。

 放送では「懐かしの名曲」とかいって、所蔵する古いレコードを掛けることも多いでしょう。だけど古いレコードに着いたホコリやキズなどで、パチパチとノイズが出るのは御法度です。針飛びなんてカンペキにNGです。

 だからそういうことにならないように、つまり無難に再生するために、DL103はそういうものに対し、非常に鈍感に作ってあります。(つまり繊細な音も出ない?)

 さらに昔の「モノーラルレコード」も掛けることを想定して、(今では考えられないような)非常に太い針先(スタイラスといいます)を使っています。太い針を使うということは、その時点で「高い音」は再生の精度が悪くなります。これについては後に述べます。

 つまり目的が全然違うのです。あくまで営業用なのです。だからとても丈夫に作ってありますし、最低限の「いい音」も確保してありますよってことです。

 例えて言うなら、トヨタに「コンフォート」というタクシー用、つまり営業用の車両があります。タクシーって50万キロくらい走ることを前提にバチクソ丈夫に作ってあります。乗り心地もそこそこいいですよね。だけど一般家庭で「いい車」としてこういうクルマを買うことはまずないでしょう。

 ところが本来営業用であるはずのDL103は神格化され、多くのオーディオファンに「NHKが放送用に使っている特別なカートリッジ」としてもてはやされているのです。もちろんDL103は、「そこそこ」のオーディオだったら「結構いい音」ですよ。極めてまじめに作ってあるし。私も4306をノーマルで使っていたときまでは、DL103は定番のカートリッジで、これ1個あれば事足りると思っていましたから。だから私はDL103を40年間愛用しました。


 だけど前に述べた、私が構築したスピーカーシステムで聴くと、そうではなかったのです。現在、私のカートリッジは、オーディオテクニカのAT33PTGII、同社のATF-7およびDNONのDL110を使っています。

 これらのカートリッジは放送用とかいう縛りがなく、純粋に家庭で「いい音」を聴くために作られたものだからです。

 ええと、DENONの名誉のため、というか、「ご家庭でご使用」であれば、DENONのDL110あるいはDL301がいいのではと思います。とりわけ私のお気に入りはDENONのDL110です。

 これらは「営業用」ではなく、DENONがまじめに作った「家庭用」カートリッジですから。とりわけDL110は安くていい音です。だからレコード入門して、「いい音」を目指すのにはお勧めです。

 ちなみにこれらのカートリッジのスタイラス(針)は特殊楕円針といって、実質的にラインコンタクト針のようです。だからいい音がするのです。その代わり、DL103の丸針と異なり、メンテはシビアになります。

 で、ラインコンタクト針については後にご説明いたします。

 それからDL103は、レコードの外周なら結構いい音がします。ところが内周へ行くにつれ、どんどん音が劣化します。それから、45RPMのLPレコードもとても良い音がします。つまりこういうことは、ひたすら針が太いからだと思います。

 繰り返しますが、放送局で無難に、つまり針飛びやパチパチ音を出さないために、太い針、重い針圧にしてあるのだろうと思います。で、製品としては上質なんだと思います。針が太いだけで…


 ともあれDL103以外であれば、ほぼ全て「家庭用」ですから、カートリッジは各社お好みでどうぞ。

 だけど「DL103の音が好きなんだ!」という方も多くおられるみたいです。その気持ちもわかります。何だか懐かしい音なんです。というか、NHK FMの音そのものなんですよね。

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