『夢操の檻』 第4章:空気の形(前編②)
3. 解析:目覚めた異能
翌日、アキトは再び研究室の、今度は「能力解析室」にいた。
昨日起きた現象を、科学者たちが最新のセンサーを用いて分析していく。
アキトは彼らに、これまで感じていた「違和感」をすべて打ち明けた。
「……空を見るとたまに、体が軽くなる気がしていました。でも、山の上とかヘリコプターの中では、空を見ても何も変わらなかった」
「ふむ、興味深い。高度と気圧の関係、そして空に対する脳の無意識の感応か……」
数時間に及ぶ検査の結果、コンピューターの画面にアキトの能力は明確に定義された。
「流体硬化および高圧制御――空気を『形』にする能力」
それは、周囲の空気を瞬時に圧縮・固定し、物理的な実体を持たせる異能だった。
科学者たは興奮した様子でまくし立てた。
「『空を飛べる能力』は、全能力者の中でも極めて希少だ。それも、間接的に空中に足場を作るなんて……戦術的価値は計り知れないぞ!新政府軍初めての能力者がこれとは……」
デオは子供のように目を輝かせ、アキトの肩を揺さぶった。
「いいかアキト。お前はこれから、誰よりも自由に戦場を支配するんだ。空気を壁にし、足場にし、弾丸にする。……これ以上に恐ろしい能力があるかよ!」
その言葉に、アキトの胸の奥で、冷たい充実感が広がっていった。
自分だけの、特別な力。
誰にも頼らず、誰にも縛られず、自分の意志だけで世界を形作ることができる力。 アキトは、研究室のモニターに映し出された、自分の脳波が描き出す「空気の波形」を、愛おしそうに見つめた。
その夜、アキトはワクワクして眠れなかった。
明日から、この力を使って何をしようか。 どうやって敵を絶望させてやろうか。しかし頭の片隅には笑顔の仲間の顔が刻まれていた。
窓の外には、月の光を反射し煌々と輝く空があった。
今の彼にはわかる。
あの空が自分の体を軽くしているのではない。 自分の心が、あの高い場所にある「支配者の視点」を求めているのだと。




