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夢操の檻 ―配られた夢と、誰も夢を見なくなった日―  作者: World of NariNari


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『夢操の檻』 第七部:鋼のワルツと空っぽの器 第2話

カクヨムでも重複投稿しています

物語をお楽しみください

3. 空っぽの衝撃


「……ねえ、アキト。そろそろ教えてよ」


ある日の夕暮れ。訓練場の影が長く伸び、基地の照明が灯り始めた頃だった。 模擬戦を終え、共に汗だくになって床に転がっていたとき、ミナが不意に、これまで避けてきた核心に触れた。


「あんたの『夢』は、どんな形をしているの?」

アキトは、天井の配管を見上げたまま、思考を止めた。 「……夢?」 「そう。自力で目覚めた人間には、必ずその根源となる『強い夢』がある。私のは『断絶』。世界から自分を切り離して、誰にも縛られない自由を求める意志。それが私の速度の源よ。そのためにはまず自由が必要だと思ったの。新政府に入ることもできたけど、ジンに拾われて、この島にきて自由を知った。」


ミナは身を乗り出し、興奮気味に続けた。 「レオンも言ってた。あんたは特別だって。だから、どんなに凄い夢を隠し持ってるのか、ずっと気になってたんだから」

アキトは胸の奥を覗き込んだ。 けれど、そこにあるのは、リナとの断片的な記憶と、あの不自然なほど蒼い空のイメージだけだった。彼自身の魂が叫ぶような「欲望」や「祈り」は、どこを探しても見当たらない。


「……わからないんだ」 「え?」 「僕には……夢なんてない。思い出そうとしても、最初から何もなかったみたいに、そこだけ綺麗に抜け落ちているんだ」

アキトの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ミナの手からメンテナンス用のクロスが滑り落ちた。 彼女は驚愕に目を見開き、まるで目の前で奇跡が起きたのを目撃したかのような顔でアキトを見つめた。


「夢が……ない? 空っぽなの?」 「……ああ。がっかりしたろ。僕は、あんたたちが期待するようなものじゃないんだ」

だが、アキトの予想に反して、ミナの瞳には見たこともないような熱狂が宿った。 「がっかり? 逆よ、アキト! それって……それって、『無限』じゃない!」


ミナは弾かれたように立ち上がると、アキトの返事も待たずに、部屋の隅で書き物をしていたレオンへと駆け寄った。 「レオン! レオン、聞いて! あの男、アキトは『空っぽ』よ! 夢を持たずに、それでも目覚めてる!」


彼女の声は、興奮で上ずり、喜びと驚きが混じり合った奇妙な叫びとなって、静かな訓練場に響き渡った。

________________________________________

4. 加速する狂気

その瞬間を境に、基地の空気は「家族のような温かさ」を失った。 それは、アキトが拒絶されたからではない。 むしろ、彼らがアキトにかける期待が、「新しい仲間の才能」から「神を創り出す執念」へと変貌してしまったからだ。


「夢を持たない器か。……ならば、そこに何を詰めることも可能だということだ」


ジンの眼差しは、冷徹な科学者のそれに近くなった。 カイトやハルも、アキトと目が合うたびに、どこか焦燥感の混じった、切実すぎる期待を寄せるようになった。


「アキト、まだか。まだ何も感じないのか」 「お前のその『空っぽの力』、早く解放しろ。そうすれば、俺たちは大きな力を得られる」


昨日までの楽しい昼食の時間は、今や「いつ能力が発現するのか」という詰問の場へと変わった。 マリアは連日のようにアキトに神経を活性化させる薬を投与し、ハルは二十四時間体制でアキトの脳波を監視した。 「……待ってくれ。そんなに急かされても、僕には……」 「アキト。新政府の包囲網は年々狭まっている。この前も親しかった部隊の基地がつぶされた。お前が完成しなければ、俺たちもそうなるかもしれないんだ。」


カイトのその言葉は、もはや励ましではなく、呪いだった。 アキトが助けを求めるように視線を向けると、レオンはただ、冷徹なまでに静かな瞳でアキトを見つめ返しているだけだった。その眼差しの奥にあるものが何なのか、アキトには分からなかった。ミナでさえも、訓練の中でアキトを追い詰める動きが苛烈を極めていった。彼女の瞳にはアキトへの友情ではなく、「早く自分を超えてみせろ」という、歪んだ狂信が宿り始めていた。

ご覧いただきありがとうございました。


今回は、物語の根幹を揺るがすアキトの秘密、そして『日常の崩壊』が描かれる衝撃の回となりました!


それぞれが強い夢(意志)を持って目覚める世界の中で、まさかの「夢を持たない、空っぽの存在」だったアキト。

がっかりされるかと思いきや、ミナたち旧政府軍の面々が求めたのは、仲間としての絆ではなく、何色にでも染まる「神の器」としての性能でした。


昨日まで一緒に笑い合い、チョコレートを分け合っていた仲間たちが、焦燥感とプレッシャーからアキトを『呪い』のような期待で追い詰めていく……。マリアの薬物投与、ハルの24時間監視、そしてミナの容赦なき苛烈な訓練。この基地の空気の「反転」には、書いていて本当にゾクゾクしました。


そして、周囲が狂信に走る中、一人だけ冷徹なまでに静かな瞳でアキトを見つめ返しているレオン……。彼の眼差しの真意とは一体何なのか。


包囲網が狭まる中、アキトの『空っぽの力』はどのように目覚めてしまうのか。そして、この狂気の中でアキトが向かう「初めての戦場」とは――。


作品を少しでも良いと思ってくださった方は、ぜひ下方の【ブックマーク】や【評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)】をポチッと押していただけると、執筆の糧になります!


急加速していくアキトの運命を、次回もどうぞお楽しみに!

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