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1 自立 束縛からの脱出

お久しぶりです!?

R18のBLにハマってそちらで投稿してましたが、エロ入れなくても良いのではないかと思い切って改訂版を出します。

よろしくお願いします

ルザロワは、就職斡旋所ギルドの壁を睨むように見続けていた。

いろいろな募集は載っていたが、冒険者か、仕事経験者向けばかりだ。


目を凝らしてみても、成人したてのルザロワには、冒険者の最低ランク、小遣い稼ぎの子供がするような仕事しか無かった。

そんなものに付けば、すぐにヘイリングに見つかって連れ戻される。


中にいた者にジロジロ見られ、自分が浮いている事を自覚して諦めて外へ出た。

自分の持っている服で、平民に見えるような地味な服を選んだが、綺麗すぎて駄目だった。


古着屋を見つけて適当に買って着替え、屋台でジュースとパンを買うと、噴水側のベンチに座って食べ始めた。

朝早く出てきて、まだ昼には時間があるが、小腹が空いたのでちょっとつまみ食いだ。

パンは固くパサついていて、家で食べるのと大違いだ。仕方無くジュースで流し込む。


ぼんやりしているのは自分だけで、周りは忙しそうに働いていて、取り残されたような心細さが湧いてきた。

思わずため息をついた。

「甘かったな」


幾ら未来の公爵令嬢でも、成人したての若造では実際の仕事では何も通用しない。

技能もないので一般人に混じって働く事もできない。


ついに義務教育を終えてしまったのだ。

来月の誕生日に16歳を迎え成人になる。

ただの成人ではない。


ルザロワはシュガー・ルザロワ・ユダ・ヘイリングと言い、ヘイリング公爵家の筆頭エドガー・グリフォン・ヘイリングの跡取り、つまり公爵令嬢となるのだ。


その際は親戚を集めてパーティーを開き、お披露目をする予定だと言われている。

しかし、この地に降臨した天人の子孫と伝わるスプレンド人である、金髪と緑の目のヘイリング公爵に比べ、自分の外見は天人と竜を掛け合わされ生み出されたデフレンド人と同じで、親子と言われても全く似ていない。


ルザロワは、竜の子孫らしいデフレンド人特有の白い縦長の瞳孔を持つ青い目と、茶色の髪だ。母親似としても、彼とは全くの他人と言っても違和感が無い。

本当はヘイリングとは血が繋がっていないと確信している。

それとなく彼に仄めかしても頭から否定される。

こんな自分がヘイリングの実の娘として公になればヘイリングの不利益しかないとルザロワは苦悩していた。


『エドガーを愛している。大切な人。それは父だから?』

ヘイリングの事は尊敬している。自分に向ける親愛を疑った事はない。


ただ、子供の時は気にしていなかったが、彼は自分に執着し過ぎていると感じている。

そしてルザロワの全てを監視し、ルザロワの行動を決めている。ルザロワは彼の決定を事後承諾するしかない。


『私は彼の何になりたいんだろう?』



8歳になった頃、部屋で家庭教師を招いて本格的に勉強することになった。


普通は4歳から学校に通うのだが、ルザロワは学校に行かせてもらえなかった為、遅れを取り戻す為と一日8時間のタイトなスケジュールが組まれた。


真面目なルザロワは毎日出る課題をこなすのに必死になったが、とうとう寝不足と過労で熱を出して寝込んでしまった。


2日目には熱も下がったが、ベッドでポリッジを少しずつ口にしていると彼とビルがやってきた。

「家庭教師は別の人にする」ヘイリングは冷淡に言った。

どうしてと問うと

「お前ばかりに無理をさせた彼は無能だ。もっと有能な人間を選んでやるから、安心しなさい」


ルザロワは寝ている間に先生が居なくなった事に驚いて

「私が賢くないからいっぱい勉強をしただけで、先生は悪くない。熱はたまたま出ただけ」と庇った。

優しい良さそうな人だったからだ。

「ルザロワのせいではない」と頭を撫でられたが、それきりとなった。


「“無能”だと、貴方のそばに居ては駄目なの?」恐る恐る尋ねた。

「役に立たない人間は必要ない」と断言した。

ルザロワは食欲を無くし、ビルに食べかけの器を下げてもらい、ベッドに横になると布団の中に潜り込んだ。


「私も、役に立たなかったら追い出されるの?」

後でやってきたビルに思い詰めて泣きながら恐る恐る尋ねた。

ビルはため息をついた。

「ルザロワはエドが必要だったから連れてきたのです。彼があなたを手放すなんて、あり得ません」


どうして必要なのか、ビルはエドの心の平安を得る為だと言った。

「貴方の存在が、エドを生存させる為のファクターになっています。貴方が居なければ彼は死んだも同然でしょう」


ルザロワも、彼の居ない人生など考えられない。

でも、最近ヘイリングに対する感情は親へ抱く愛情ではないかどうか悩みだした。

その差はまだ分かりかねた。



ただ、この前窓から外を眺めている時、何気無く後ろに立ったヘイリングから抱きしめられ「ジルそっくりになったな」と言われた時心の中は嵐が吹き荒れるように色々な感情が渦巻いた。


振り返ると彼の頬に手を添えて顔を近づけてきたので、いつものように額にキスされると思って心持ち顔を上げた。


ヘイリングは薄らと微笑んだが、次にルザロワの唇に口付けた。

ルザロワは予想外な事に体が固まってしまい、何回もされる口づけも受け入れ続けた。


「私のシュガー」


彼から初めて聞く情欲を含んだ声が合間に出されたが、それはルザロワに向けたものなのか次第にわからなくなった。


満足気にヘイリングが口を離して

「シュガー、愛している」と言ってもルザロワの心はどこか懐疑的だった。

「ずっとそばに居るんだ。()()()()()()()()()()()()


ルザロワは呆然となって、取り敢えず彼の抱擁から離れた。

「誰に言ってるのですか?」それは私に向けての言葉ではない!

「勿論、シュガーに決まってるだろう」薄らと微笑んでいたが、それを見たルザロワは心の奥から冷えていく感じに体が震えた。


お披露目をされるその前に、ヘイリング公爵家から出て行こうと決めた。



困った時、いつも相談相手はビルだ。彼ならヘイリングと違って頭ごなしに物事を決めつけたりしない。

きちんと意見を聞いてくれ的確なアドバイスを返してくれる。

こちらが甘えるとちゃんと受け止めてくれる。

ビルの方がお父様みたいだ、とルザロワは常々思う。


「ビル、部屋に休憩に行ってもいいですか?」内線でビルを呼んだ。

邸の自分の部屋に帰ったルザロワは限界を感じてビルの部屋に行くことにした。

「どうぞ、今のが後少しで終わりますので、こちらで待ってもらってもいいですか?」

ルザロワは了承して部屋を出た。

ついでに厨房へ寄ってお茶のセットをワゴンで運んだ。


相変わらず廊下は静まりかえっている。人嫌いのヘイリングは使用人すら目に入れたく無いと、夜中に仕事をさせるので、日中は料理人が厨房にいるだけだ。


ヘイリングの本家であるが、30部屋あるうちで現在使用しているのが、ヘイリング、ビル、ルザロワのいる3部屋しかない。

かつて滞在していたヘイリングの親戚も、今はそれぞれ要職に就いており、疎遠になっている。


ビルの部屋はヘイリングの部屋の隣りにある。ルザロワの部屋は同じ階の端だ。

ノックすると、魔石が反応し、自動で開いた。


各部屋の出入りは中にいる者の許可無くできない。


中に入るとドアは閉まり「いらっしゃいませ」と明るくビルが迎えた。

ヘイリングの部屋と同じ作りで、隅に置かれた大きな事務机の上には書類が山積みになっている。


ヘイリングの部屋と違ってベランダは無く、大きな窓が3つ正面にはめられている。


アイボリーの生地に細かい薔薇の花と棘のある茎の絡まる刺繍が同じ色でされたカーテン越しに柔らかな光が差し込む。



彼の細い指がタイプライターの上で素早く動く。

「ギルドにいらっしゃったでしょう。どうでしたか?」


ルザロワは驚いて言った。

「どうしてそれを?」 

「護衛を付けてますからね。報告を受けました。昼食は食べられますか?」


思わず顔が赤くなった。全く気付いてなかった。間抜けにも間食もバレてた。


「そんなに食べてません。黙って出て行ったのに意味無かったですね。どんなものか見に行ったけれど、いい仕事はありませんでした」

「何故今更仕事探しを?仕事なら私のを手伝ってください。幾らでも与えられますよ」


「後で手伝います。そうじゃなくて、外で、ヘイリング伯爵家と関係無い仕事を探してます」

「それは、難しいですね」

「やはり難しい?」

「今ある仕事では満足しませんか?商社の方へ行けば、まだ独立性はありますが、あなたが行くとなると調整が必要ですね。ヘイリング公爵令嬢ですから」


「私の事を知らない所で贔屓される事なく働けるところが良いのです。エディに頼りたく無い」

「ここの屋敷に居てそれは無理でしょう」

「それはわかってます。だから公爵家を出たい。できれば廃嫡して欲しい」


「そんな事を軽く仰らないで下さい。何が不満なんですか?もうお披露目会ですよ?そんな事できるわけ無いでしょう。服から食事の手配から何もかも準備済みです。あなたにも参加者名簿をお渡ししましたよね?覚えておられますか?」

「うん、見ました。ヘイリング一族ってやたら多いですね。全部覚える必要あります?擦り寄って来たのを覚えておいて、今後二度と近付かないようにします」


ルザロワはお茶を注いで部屋の真ん中に置かれたソファの前のテーブルに置いた。

ソファに座ると勝手にお茶を飲んだ。

ビルもタイプを打っていた手を止めるとソファにやってきた。

「オレンジペコだけど?」


「私は何でもいいので」

ビルは紅茶の匂いを確かめると、一口飲んだ。

「あなたが、家を出たいと言い出すとは思いませんでした。提案はするつもりでしたが、あなたもそう思っていたとは」

「そうなんですか?」

「エディはあなたを囲い過ぎです。社会経験が一切無いままと言うのも問題があると、私は考えるのです。まあ、世間を知ればヘイリング家の有り難みもわかるでしょうし」


「一般の人に比べて非常に恵まれているのは知ってる。時々外に出させてもらってるし」

「それは正式に許可してませんがね。護衛を決める必要があるので早めに言っていただければよろしいのですが」


「え、毎回護衛ってついてたの⁈」

「当たり前です。ヘイリング公爵家の令嬢ですよ。誘拐されたらどうするんですか」

「王袈裟だなあ、デフレンド人なんだから誰もそんなこと考えないよ」

「万が一と言うこともあります」


「ビルの責任になるものね、仕方無いか」

「あなたが心配なんです」

「ありがとう、ビル」

「当たり前の事です。それより、差し当たって大事なのは」

ビルは冷静な口調のまま言った。


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