↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/23

第12章 巨人たちとの会談

第12章 巨人たちとの会談

東京。

日本最大級のゼネコン本社。

地上四十階の役員フロアに、美咲は足を踏み入れた。

ガラス張りの会議室からは東京の街並みが一望できる。

無数の高層ビル。

マンション群。

再開発が進む都市。

そのすべてが将来の再生対象にもなり得る資産だった。

長い会議テーブルには、ゼネコンの会長、社長、常務、技術本部長らが並んでいた。

地方の工務店出身の若い経営者が呼ばれる場としては異例だった。

会長が口を開く。

「桜井社長、お会いできて光栄です。」

美咲も丁寧に頭を下げた。

「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。」

会議が始まった。

大型スクリーンには、再生プロジェクトのデータが映し出される。

住民満足度。

事業収益。

環境負荷削減。

資産価値向上。

全国の老朽マンション分布図。

技術本部長が説明する。

「我々も分析しました。」

「非常に興味深い結果です。」

ページが切り替わる。

そこには衝撃的な数字が並んでいた。

全国の老朽マンション。

老朽化したオフィスビル。

公共施設。

団地。

病院。

学校。

膨大な再生需要が存在していた。

会長が静かに言った。

「建てる時代から活かす時代へ。」

「我々もそう考えています。」

美咲は少し驚いた。

競争相手として現れると思っていたからだ。

だが会長は続けた。

「しかし我々だけではできません。」

「AI技術が足りない。」

「住民合意形成のノウハウもない。」

「再生事業の実績も少ない。」

そして真っ直ぐ美咲を見た。

「協力していただけませんか。」

会議室が静まり返った。

美咲は慎重に質問する。

「なぜ私たちなのですか。」

社長が答えた。

「我々は建物を造る会社です。」

「しかし桜井工務店は人の暮らしを再生する会社になった。」

「そこが違います。」

美咲はしばらく考えた。

目の前にいるのは業界最大手。

単独で戦えば、いずれ競争になる相手でもある。

しかし協力すれば、全国展開の速度は何倍にもなる。

会長は一枚の地図を示した。

日本全国。

数百の案件候補地が表示されている。

「我々は施工力を提供します。」

「金融機関との調整も支援します。」

「自治体との連携も可能です。」

「その代わり、AI再生技術を共同展開したい。」

壮大な提案だった。

美咲の頭の中に、これまで出会った住民たちの顔が浮かぶ。

建替え費用に悩んだ高齢者。

故郷を失いたくなかった家族。

未来を諦めかけていた管理組合。

もし全国で同じことができるなら――。

美咲は決断した。

「条件があります。」

役員たちが身を乗り出す。

「住民の利益を最優先すること。」

「安全性を妥協しないこと。」

「建替えありきではなく、本当に再生可能かを判断すること。」

会長は即座に答えた。

「約束します。」

その場で握手が交わされた。

会議室には拍手が響く。

こうして桜井工務店と大手ゼネコンによる「都市再生連合」が誕生した。

数か月後。

共同記者会見が開かれる。

全国のテレビ局。

新聞社。

海外メディアまで集まった。

発表されたのは、十年間で千棟以上の建物再生を目指す国家規模の都市再生計画だった。

会見後。

ある経済誌はこう報じた。

「地方工務店が生み出した技術が、日本の都市再生を変える。」

美咲は会場を後にしながら、ふと窓の外を見上げた。

そこには無数のビルが並んでいる。

老朽化し、やがて建替えを迎える建物たち。

しかし今、美咲には違って見えていた。

それらは壊される運命の建物ではない。

未来へ受け継ぐことのできる資産だった。

そして都市再生事業は、マンションからオフィスビル、病院、学校、さらには都市全体の再生へと発展していくのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。