まずはお試し
翌朝。水平に切り込みを入れたクロワッサンにハムとチーズを挟んでオーブントースターで軽く焼いたのを食べたあと、聖域の外で碧ママと碧パパとに会った。
「こちらは使い魔が躯体に使うのにそこそこお勧めな、鹿の角で作られたピンバッチです。
躯体なしで契約しても構いませんが、使い魔を連れ歩くのでしたらこれを躯体にしてバッグにでも付けておくと魔力消費を節約できます」
予備として持っていたピンバッチを5、6個出して二人に見せる。
聖域で草集めをやってもらう使い魔霊達は熊手と塵取りを躯体代わりにするので、ピンバッチを提供しても躯体を乗り換えるときにうっかり無くしそうだ。どうせ東京まで一緒に来ないのだし、聖域で手伝って貰っているとき以外はそのままふわふわ漂っているか、自分が気に入ったものに取り憑いているので、ピンバッチを使っていない。
最初に契約した後に、一応いるかと思って買ったのが使われずに亜空間収納に死蔵されていたんだけど、これで活用されるかな?
まあ、ハネナガも躯体は要らんと断ったから、もしかしたら鳥とか野生の動物系な霊はあまり躯体を欲しがらないのかもだけど。
「あら、良いわね。
鹿の角みたいな動物由来の物が向いているのかしら?」
碧ママが尋ねる。
「そうですね、有機物由来の物の方が魔力が抜けにくいです。
こちらは最初の頃に使った猫のストラップの3代目なんですが、汚れてきたから変えようと思って色々買ってみたら、プラスチック系の素材だとあっという間に魔力が抜けちゃうみたいで。使える素材で出来た可愛いストラップを見つけるのに苦労しました」
今では適当に見た目でクルミと私が気に入ったストラップを買って、その背中部分にこっそりピンバッチを付けている。
こうするとピンバッチとストラップを一体としてクルミが動かせるし、魔力の保ちもそこそこ良いので一石二鳥なのだ。
おしゃれな格好をしていて猫のストラップなんてつけて歩けない時にはピンバッチだけ持ち歩いている。
「ちなみにこれは落としてしまったりしたらどうなるんだろう?」
碧パパが尋ねた。
「使い魔の躯体に使っている状態だったら、使い魔に躯体ごと来るよう命じればこのサイズなら持ってきてくれますよ。
それこそ沢山の鍵が繋いであるキーホルダーやスマホに取り付けてある場合なんかだと重くて流石に持ってくるのが大変ですが、どこだかは知らせてくれるのは可能です。だから持ち歩くけど絶対に無くしたくない物に付けておくのもありかもですね」
一時期は私もそうしようとしたことがあるけど、今は鍵とか貴重品は亜空間収納に入れてるからね〜。
スマホしか『持ち歩く絶対に無くしちゃいけない貴重品』が無いから、流石に一個だけなら忘れてきたりしないので、トラッカー的な使い方は最近はあまりしていない。
「ちなみに、幾つぐらいの霊と契約できそうかしら?」
碧ママが聞いてきた。
「え〜と、鳥の霊だと興味があると応じた子が4体居ますね。
お二人で1体ずつなり、2体ずつで4体契約するのは可能です。
熊と鹿の霊も1体ずつ居ます」
昨日の今日だったので、数は……そこそこ?
でもまあ、一人当たり3体なら大丈夫だろうけど、碧パパ1体で碧ママが残り全部となるとちょっと魔力的な消費量が多くなると思う。
そこら辺はやってみて様子を見てから決めれば良いと思う。
「う〜ん、初めての試みだから、一体ずつ契約して、大丈夫そうだったら来月にまた増やすって形でも良いかしら?」
碧ママが言った。
「良いと思いますよ。
皆遊び半分で来ているんで、お断りされても気にしないでしょう」
なんだったら、ちょっと今週の草集めに臨時で協力して貰っても良いし。
「じゃあ、それでいきましょう!
どの子が契約してくれるかしら?」
碧ママが手を打って言った。
「じゃあ、自分で持ち歩けそうなのを一つずつ、ピンバッチを選んで下さい。
霊に関しては……適当に話を聞いて選んじゃいますね」
ピンバッチを全部碧ママに渡して、二人が選んでいる間に集まってくれた霊達に声をかける。
『初めての契約だから、一体ずつにするって。
残りの子は来月にまた興味があったら来てくれる?
あと、出来ればこの後聖域で少し遊びついでに草集めを手伝ってくれると嬉しいな』
『良いよ〜』
『じゃあ、ボクが立候補〜』
『あ、あのクマデって言うので遊びたい!』
『眠いな〜』
『手伝っても良いよ〜』
『このおばちゃん良い匂いする〜』
わちゃわちゃと霊達が呑気に応じているので、立候補した子と碧ママの匂い(?)が気に入った子に今回は契約を頼もう。




