まだマシかな
この多頭飼育崩壊現場は、意図的に動物達の霊を悪霊化させようとしていなかった。お陰で、穢れと悪臭は凄かったが清めるのはそれ程大変ではなかったらしく、碧が祝詞を終えて柏手を打った時も、多少汗ばんでいる程度でふらついていなかった。
これだったら敷地内に残っている霊は居ないんじゃないかなぁ〜。
とは言え。
やっぱ、一応確認すべきだよねぇ。
碧がここまで清めたんだし。何もしなかったら私は単なる役立たずだ。
「具合はどう?」
亜空間収納からペットボトルを取り出して渡しながら尋ねる。
今回は碧の希望でレモネードだ。
「こないだより、大分と楽だった。
あそこの結界は霊的干渉を拒んでいた上に、穢れが離散しない様に留め為に設置されていたから大変だったみたい。
ここは……2、3年したら自然に穢れも消えたかも?」
碧がレモネードを受け取りながら言った。
穢れってそうそう自然に消えないことが多いんだけど、根に持たない動物の苦しみから生じた穢れだったら数年で消えるのかな?
まあ、取り敢えず。
しょうがないから中に入るか。
碧と森を目隠しにして、亜空間収納から新しい防具服と長靴を取り出して身につける。
前回の時は更地になっていたから長靴は履かなかったんだけど、今回は何を踏むかわかったもんじゃないからね〜。
この色々な残骸が散乱している様子を見るに、普通の長靴よりも鉄板の入った安全靴を持っておくべきだったかもと思えてくる。
今度、安全靴も買おうかなぁ考えながら、マスク越しに浅く息を吸い、敷地の中に入っていく。
ケージの残骸や餌やペット用品が入っていたと思われる段ボール箱があちこちに散乱していて、踏むと変に滑りそうで何とも歩きにくい。
せめて段ボール箱だけでも回収してどこかで燃やしとけば良かったのに。まあ、最近は焚火も規制があって勝手にやっちゃいけないらしいからねぇ。十分な空き地があってもその場で燃やせないとなったら、これらをとラックなりバンなりに積んで持って帰らなきゃだから、それは契約になかったら自発的にはやらないか。
そんな事を考えながら歩き回り、一時的に結界を展開できる様に四隅に私の力を込めた石を投げ置いていく。
こないだみたいな更地ならまだしも、ここまで汚くて混沌としているのでは歩き回るだけで隠れている霊まで見つけられる可能性は低い。
ここは結界を張って中を確認する形にしよう。
転ばない事に細心の注意を払いながらも出来る限り急いで敷地を回り、結界用のマーカーを置き終えたらさっさと道路へ出た。
道との間に壁がある訳じゃないけど、異臭の元に囲まれているよりはマシだからね。
外に出たところで結界を張る。
さて。中に残っている霊はいるかな?
魔力を中に広げて霊的存在を探す。
前回の場所の様に結界で閉じ込められて居なかったお陰か、石の中に隠れる様に潜んでいる霊は居なかった。
と言うか、あそこは悪霊を圧迫してお互いを共食いさせる様な効果も結界に付与していたのかも?
範囲を指定するだけの結界を展開してみて中を探ってみると、前回の依頼の結界は単に霊的存在を逃さないだけのとは何か違いがあるように思われてきた。
まあ、それはさておき。
結界の中を探して、霊的存在を私の方へ呼び寄せる。
悪霊化していたのは碧に祓われたのだが、それなりの数の動物が死んだせいで普通の浮遊霊になっていた動物霊が10体近くもいた。
う〜ん。
もう穢れは無くなったし、ここは変な効果も残っていないから昇天する様に説得する必要は特にはないんだけどね。
でもまあ。
悪臭塗れな場所に居ない方が良いでしょう。
『昇天したい霊はいる〜?』
浮遊霊達に尋ねる。
『別に〜』
『どこか行くとこあるの〜?』
『ご主人様のところに戻りたい』
『あそぼ!』
気まぐれな霊達の返事が(返事じゃないのもあったけど)がくる。
う〜ん、飼い主のところに戻りたいっていう霊は昇天させてあげた方が良いかなぁ。
一応現時点では飼い主に執着して取り憑きそうな雰囲気ではないけど。
『取り敢えず、ここはばっちいから、こっちの森に移動しようね。
ちなみに、昇天したい時はこんな感じに空に昇るのよ〜』
軽く昇天させる術を掛けて、天へ還る感覚を教えたら、そのまま3体ほどは昇天していった。
残りは森に移動させ、多頭飼育崩壊現場に張った結界を解除する。
もしかしたら現場に戻っちゃうかもだけど、まあ碧によって清められているから戻りたければ戻っても害はないだろう。
下手に結界を残しておいて、退魔協会の人間とかに偶然見つかって私が何をしているのかって怪しまれても困るからね。
さて。
亜空間収納から取り出したビニール袋にまた防御服を突っ込み、しっかり封をしてから、自分に消臭剤を吹きかける。
「ちょっとさ、行きにタクシーで来た際に横を通った公園らしき場所に寄って帰っても良い?
長靴は洗い流してからしまいたい」
碧に声をかける。
流石に長靴は使い捨てにしたくない。
それなりにしっかりとした良いやつんだよね、これ。
「勿論良いよ〜」
歩いている間に、長靴の裏にへばりついているかも知れない汚れもきっと大分と落ちるだろうし。
これで取り敢えずは安心かな。
……こんな案件にまた行き合うことがないと期待したい。
これでこの章は終わりです。
明日は休みますが、明後日からまたよろしくお願いします。




