犬猫の祟り?!
歯槽膿漏なキラちゃんの後、もう2匹患者の予約が入っていた。
1匹は糖尿病の猫で、ぽっちゃりしていた。この体型じゃあ、碧に治して貰ってもまた糖尿病を再発しそう。こちらは重そうに碧が連れて行った後に戻って来てもあまり変わった様子もなく、のんびりキャリーケースの中でまったりしていた。
そして最後の1匹は加齢のせいか関節が微妙に変形してしまってしょっちゅう外れて困っていると連れてこられた大型犬だった。
関節が外れるって痛そうだが、大きなベージュ色の犬はびっこを引きながらも大人しく飼い主の横を歩いてきて、碧が用意した台車にも従順に乗って、哀しげな瞳で飼い主を見つめながら連れ去られた。
それが碧が治した後は弾むような足取りで飼い主さんのところへ戻って来て、太ももやお尻に頭をずんずんと擦り付けて動き回っていた。
脚を動かしても痛くなくなったから、遊ぼう〜!って感じなのかな?
良かったね。
そんな微笑ましいやり取りの後、家に帰って昼食を食べて暫く経ったら源之助の健康診断と予防接種の時間になった。
が。
「寝てるね〜」
碧が椅子に乗ってキャットタワーの上で寝ている源之助を覗き込みながら言った。
「玄関からインターホンを鳴らしてみようか?
起きるかも?」
と言うか、ほぼ確実に起きるよね。
源之助は意外と人懐っこいと言うか社交的と言うかで、家の誰かが来るたびに高確率で自分と遊ぶ名誉を授けに玄関まで出迎えに行くんだよねぇ。
私が帰って来ても全然反応しない癖に。
宅急便の配達でも玄関まで見に行くぐらいなんだから、私って源之助の中でどう言う扱いなのか、ちょっと気になる。
まあ、それはさておき。
「うん、じゃあお願いしていい?」
碧が頼んできたので、玄関から外に出て、扉を閉めてインターホンを押す。
一瞬待ってから玄関を開けて中に入ったら、源之助がキャットタワーから降りてくるところだった。
なるほど?
もしかして、毎回インターホンを押して家に帰って来たら源之助がお出迎えしてくれる、かも?
でもまあ、『お前かにゃ』なんて下僕を見るような目でさっさと部屋に帰られたりしたらちょっとショックだから、インターホンの無駄打ちはやめておこう。
「じゃあ源之助ちゃん、ちょっとお出かけしましょうね〜」
碧が源之助に話しかけながらさっと抱き上げ、準備してあったキャリーケースに源之助を注ぎ込んだ。
最近は諏訪にも慣れたのか、あまりキャリーケースに入るのも嫌がらないんだよね。
とは言え、今日は獣医さんで見知らぬ人に触れまくる上に注射までされるから、今後ちょっとキャリーケースに入るのを嫌がるかもだけど。
そんな事を考えながら、外に出て動物病院へ。
今日は曇りなんだけど時折日が出るぐらいに空が明るいので、程よい天気で外を歩くのも気持ちがいい。
本当は気分的には晴れの日が一番だけど、そろそろ直射日光が暑くなってきたからね〜。これより後になったら源之助が熱中症になるか心配な時期になるところだった。
まあ、考えてみたらその前に梅雨があるけど。
雨の中でキャリーケースを持って出歩くのも遠慮したいかな。
それこそゴルフで使うような大きな傘があったら碧が源之助を運んで私が傘をさすって言うのもありかもだけど。
基本的に動物病院なんて滅多に行く必要はないから、心配する必要はないけどさ。
と言う事で、動物病院には予約3分前に着いた。
予約時間まで待たされるかな〜と思ったけど、あっさりアシスタントの人に診療室の中へ呼ばれる。
あれ。
なんかちょっと、部屋が穢れてるんだけど。
まあ、犬や猫が痛みを感じている状態で来て、獣医やアシスタントに押さえつけられてあちこち弄られたり注射を打たれたりするから怒りや苦しみの念が経常的に発せられる場所だろうけど。それでも、虐待した訳じゃないのに穢れが溜まるなんて事は無いと思うんだが。
犬や猫って痛みに対して怒ったり恨んだりするよりは、受け入れて耐える事が多いから。
不思議だ〜と思っていたら、奥の扉が開いて獣医が現れた。
あらま。
祟られてるよ、この人。




