ゴールデンウィーク?!
「なんか、ついこないだ新社会人だ〜!って事で諏訪で生活の最終手配を始めたばかりなのに、もうゴールデンウィークだなんて信じられない!
時間が飛んでるわ〜」
クッション用の符を書き終わった碧が筆を置き、背伸びしながら言った。
「確かにねぇ。
退魔協会も、私らが正式に東京に戻ってる時期になっても恐れていたほどは仕事を押し付けて来なかったけど、なんか色々やっている間にあっという間に月末だよね」
結局、先週一つ悪霊に憑かれたアホな学生の清めを行っただけだったんだよね〜。
退魔師数より仕事の依頼数の方が多いって話だったから、社会人になったらもっとひっきりなしに依頼を押し付けられるかと思ってた。
「特級術師になったからね。
普通の一級術師に頼むような依頼を寄越す場合でもある程度は退魔協会が水増し補填しなきゃならないから、少なくとも二級術師でなんとかなる依頼は絶対に回して来ないだろうし、一級クラスでもちょっと余分にぼったくれる依頼人のしか快適生活ラボに寄越さないんじゃない?」
碧が新しい和紙を取り出しながら指摘した。
紙のサイズからして、今度はお守り用の符かな?
私の不眠用のお守りと違って、肩こりや腰痛にもある程度効く健康祈願のお守りは一般的なタイプだから、それなりに神社で人気なんだよね。不眠用お守りも定期的に買う人が居るみたいだけど、やっぱ数は健康祈願より大分と少ない。
弱いながらも実在する回復効果を考えたら、2000円(インフレで多少値上げした)じゃあまだまだ安すぎるんだけど、碧としては『人の助けになるなら』とそれなりの数を作って実家に送っている。
お陰で退魔協会から仕事が詰め込まれなくても、それなりに忙しい。
「仕事が良い感じに間引かれてるなら、特級術師になってラッキーだったね。
退魔協会の方は失敗した〜!って後悔してるかもだけど」
それなりな人口がいた集落が離散して廃村状態になるような危険な悪霊なんて、そうそう出てこないだろう。
そう考えると結局私達がやる仕事は学生時代とそれほど違わないのだから、退魔協会が自分で自分のポケットに穴を開けた様なもんじゃない?
ちなみにこれは、ポケットに穴があったら溜め込んだ硬貨をポトポト落としちゃうことから、金銭関係での軽い自爆を指す前世での庶民用の言い回しだった。今世じゃキャッシュレス決済が増えたのであまり当て嵌まらないけど。
前世でも、ツケ払いが常識だった貴族なんかにはこの言い回しはピンと来てなかったなぁ。ツケ払いも一種のキャッシュレス決済システムだよね。
「そう言えば確か、去年の暮れ近くに東北の方の大御所っぽいご老人がなんか病気で体調が悪化したって聞いたんだよね〜。
叔父がどうしてもって頼まれてヘリを出されて訪問診療に行ったって言ってた。
直接的な不調の原因はある程度治療できたけど、老化で体がシャットダウンしつつあるのはどうしようもないから、身の回りの整理を始めてはどうですかって告げざるを得なかったって言ってたわ。
その人が退魔協会に泣き付かれてももうどうやっても出てきようが無いって事になったなら、特級術師の数が足りないからしょうがね〜って事になって私らを昇級させたのかも?」
碧が言った。
なるほど。
やばい案件の数が限られている(多分)としても、対処できる特級術師の人数が減りすぎると何かの拍子に国家危機的な事態になりかねないから、常時維持しておきたい特級術師の必要最低限の数って言うのが国(か退魔協会)としてあるのだろうね。
で、白龍さまに守られた碧はある意味無敵だから外国や反社会的勢力やアホな政治家に狙われても大丈夫だし、若いから山登りとかが必要でもかなり無理がきくしで理想的なのかも。
私は…‥おまけかな?
若い女性を一人で送り出すのは外見が悪いなんて状況になっても、相棒が一緒にいれば良いだろうって考えてそう。
私が碧と同じぐらい使える術師だと思われていたら、それはそれで怖い。
まあ、幸い碧と一緒にいる間は白龍さまがついでに守ってくれるのでなんとかなるとは思うが。
マジで碧と袂を分つ事になんてなったら、さっさと雲隠れしないとだなぁ。
出来るだけ監視カメラとかが少ない地方や国の情報を常時集めておくべきかも。
黒魔術師の力で相対した人間の目や思考はそらせられるが、監視カメラ経由で見張っている人やAIはどうしようもないからなぁ。
最初は黒魔術師の力を使って逃げられても、何度かやったらそれこそ遠距離から麻酔弾で撃たれて捕獲されそうだ。
そんな事を考えていたら、電話が鳴った。
おや。
退魔協会の着信音だけど、ゴールデンウィークに仕事??
電車や高速が混んでそうだから、遠出は遠慮したいんだけどな〜。




