理解できない思考回路
驚いたことに、西浦は自分のサイトが炎上するのでも、アクセス数を稼げるのならオッケーと言う考えの持ち主だった。
「自分が今までやってきた冤罪とか誤認誘導の特集をするなんて、何を考えているんだろ?」
一応先日の叔母さんの猫虐待自白や、本人の記憶を読んだ時に出てきた冤罪で相手のサイトが炎上した(つまり相手にとっては絶大な迷惑を被った)案件をコメントで突いて言及させた動画はタブレットで収録したが、それを切り抜きして投稿するのはどうやってやるのか自信が無かったので、誰か別の人が切り抜き動画でも作ってくれてないかな〜と検索してみたら、なんと本人が暴露回みたいな感じで別の動画で今までの悪行をけろりとした顔で告白していたのだ。
「どったの?」
あまりにも呆れて動きの止まった私に碧が声を掛けてきた。
「あの西浦、自分の動画チャンネルが炎上したお陰でアクセス数が増えたのが嬉しかったのか、更に悪行の自白動画をやってる」
とは言え、自分のサイトなら直ぐに消せちゃうから、誰か第三者がやっている切り抜き動画が欲しい事には変わりがないのだけどね。
「マジ??
取り敢えずアクセス数を稼いで広告収入をガンガン貰って、訴訟の前準備として相手の弁護士から通達みたいのが来たらチャンネルを閉鎖して雲隠れするつもりなんじゃない?
顔出ししている訳じゃないから、別の動画チャンネルを新しいハンドルネームで後日しれっと始めても分からないと思ってそう」
碧が指摘した。
確かに?
声とかで調べたら分かるかもだが、ボイスチェンジャーみたいのを使っている動画も多いし、そうなったら分からないよね。
「う〜ん、だったら雲隠れされる前にさっさと被害者がブロバイダーに発信者情報の開示を要請して法的手段を取れるように、被害者だった人のサイトにでも今回と前回の動画のリンクを送って唆しておくかな〜」
まあ、私には極端に手間暇掛けて西浦を叩きのめす手配をしなきゃいけない謂れはないんだけどね。
でも、やっぱムカつくし被害者に復讐の機会を与えるべきだと思うから、ちゃちゃっと分かる範囲でやっていこう。
「本人が嘘上等な感じで幅広くやってきたせいか、悪事自白回に関しては切り抜き動画もポコポコ出てきてるね〜。
本当だったら切り抜き動画って著作権の関係で本人から許可を得なきゃいけないはずだけど、これって勝手にやってそう」
私が過去の被害者のサイトや連絡先を西浦の過去の動画から探して順次連絡先(見つかった場合のみだけど。閉鎖されているサイトも多かった)に今回の動画のリンクを捨て垢のメールで送っている間に、切り抜き動画を探していた碧が呟いた。
「切り抜き動画でちゃんと許可を得ているところって、どのくらいあるんだろうね?
ボロ儲けしてたら流石に大元のサイトもムカつくから警告を出して、それでも改まらないなら弁護士を使うぐらいの事をするかもだけど。一般人だったら『やらないで下さい』ってメールを送る程度で、あまり本格的には動かなそう」
弁護士を使おうと思っても、まずはプロバイダーに発信者情報の開示要求をしてからだし、止めさせたところで損害賠償はまた別問題だし、それで訴訟に勝っても大したお金が入る訳ではないだろうから、出費だけが増える結果になりそう。そう考えると、余程許せないアングルでに切り抜きでもされてない限り、一々止めようとする人は少なそう。
まあ、切り抜きの方がまだ西浦がやっていた冤罪もどきな動画よりは相手の不法行為(肖像権侵害だっけ?)を証明してプロバイダーに反応させやすいだろうけど。
それに対し、動画で勝手にアップされた悪事の冤罪なんて……証明はほぼ不可能な気がする。
本当に不法行為をしていたら訴えられるだろう、当局から差し止め命令とかを受けていない時点で自分は無実だと主張したところで、倫理的な悪事と法的な違法行為は違うと主張して叩いてくる正義の味方気取りな連中は多いだろうし。
そう考えると、西浦が今までの被害者に刺されなかったのって被害者の選び方が上手かったからなのか、それとも冤罪だとプロバイダーに発信者情報開示請求するのが難しいからなのか。
ちょっと気になるところだ。
と言うか。
今回のロクデナシは冤罪がバレて動画サイトを閉鎖しなきゃいけなくなったとして、次はどうするんだろ?
嘘をつかなくなったら悪事をしにくくなるかもだけど、炎上目当てな迷惑動画を開き直って作り始めるとかいった更に迷惑な方向に動かないと良いんだけど。
まあ、取り敢えず。
カリスマ祈祷師に来た叔母さんに連絡をとって、少なくともニャンコちゃんがあいつに虐められないように情報提供しておこう。




