無理そう
「ダメだわ〜。
丁度よく前向きになる魔法陣なんて思い浮かばない。
不治の病に罹った病人に使う、最後に苦しまずに死ねる多幸感満載な魔法陣はちょっとヤバすぎるし。
諦めて、恐怖軽減のをぐっと弱くするしか無いと思う」
数日かけて色々と記憶を探り、何か程良く前向きになるような術や魔法陣が無いか探したが、効果が強過ぎて末期ガン患者用のモルヒネの様な術しか思い出せなかったので、『ちょっと前向きになる魔法陣』と言うのも、諦めた。
「え、そんな術があるの?
凛の前世なら白魔術師が老い以外の、病気や怪我はなんとか出来るんかと思っていたけど」
碧が不思議そうに聞いてきた。
「白魔術師は人数が限られるし、末期症状になっちゃってから治療を求めても出来ることに限界はあるからね〜。
それよりは痛みを感じる神経を麻痺させて、頭の中を多福感で上書きしちゃう方が現実的なのよ。
まあ、ヤバすぎるから神殿から許可の出た人しかそんな魔法陣は買えないことになっていたけど」
勿論、作っているのが黒魔術師なので、王族が勝手に作成を命じて使う事は多々あったが。
ただまあ、そんな一人きりで楽しむ幸福感よりも、他者を踏み躙って優越感を味わう事を楽しむクソッタレの方が多かったから、意外と王族にあの魔法陣の作成を命じられる事は少なかったかな?
女性と一緒に使う時は麻薬を好んでいたし。
「うわぁ。
モルヒネではなく魔法陣で末期ガンとかの苦しみを消せるのは良いかもだけど、確かに日常生活のストレス解消に使うには危険すぎるね」
碧がウヘェ〜と言う顔をした。
「取り敢えず、ごく弱いストレス緩和の符を作って、まずはそれの効果が1ヶ月続くかを確認。その後に、それこそ柳原さんの会計事務所の人に試してもらってストレス緩和の効果が感じられるか聞いてみるかなぁ。
八幡さんに渡すのは……柳原さんのところでなんらかの効果があるって感じる人が過半数だったら渡すか、考えてみよう」
恐怖だけを和らげても微妙だしね。
と言うか。
考えてみたら恐怖と言うか感情の振れ幅を制限する魔法陣ならあるんだよね。
あれもある意味プレゼンや試験のストレスには効くかも。
ただまあ、そんなのを常時持ったりしたら周囲との人間関係が歪みそうだから、単発的に半日とかだけ使える使い捨てちっくな感じなのしか作らない方が良いだろう。
そうなるとサブスク契約にはあまり向かないし、取り敢えずは無いかな〜。
「難しいねぇ」
碧がちょっと同情心を込めて言った。
「まあ、しょうがない。
ちなみに碧の方の血流改善のレッグウォーマーは上手くいきそう?」
そろそろ涼しくなってきたから、血流改善で冷え性が治るんだったら欲しいかな〜。
碧に助けてもらうと凍えそうなほど冷えた手足とか、寒さでガチガチに凝り固まった肩や首は何とかして貰えるんだけど、寒い季節に常に冷えている手足っていうのは中々難しいからね。
冷えを感じるたびに頼むのはちょっと申し訳な過ぎる。
炬燵に入れば大分とマシだけど、そうすると歩き回れなくなという非常に重篤な問題が生じるんだよね。
「まあまあ?
ただ、ぴっちり肌を締め付ける感じだと符が足に当たる感じがするし、緩すぎると符がずれ落ちて肌にしっかり触れていない状態になって効果が減るしって感じで、ちょうど良いフィット感が難しいんだよねぇ」
碧が答える。
「え〜?
人によって脹脛の太さなんて違うんだから、ちょっと緩くゴム性のある生地のを探すしかなくない?」
元々、古いレッグウォーマーって家の中でも歩き回っていると段々脱げちゃいそうになる事もあるから、ちょっと問題なんだよねぇ。
マジでそこそこしっかり肌に引き締まる感じで密着するレッグウォーマーを見つけ出し、それの中に入れておいても殆ど存在感を感じないぐらい柔らかいラミネーター素材を使って誤魔化すしかなさそう。
「まあねぇ。
幾つかサンプルを買ったから、どれが一番符を中に突っ込みやすいか試行錯誤中なの」
碧が言った。
「まあ、売り出すのは早くても来年の予定だからね。
のんびりやっていけば良いんじゃ無い?」
とは言え。
考えてみたら、一周年記念で新商品を売り出すとしたら、4月じゃあ既にレッグウォーマー要らない??




