懲らしめ必要
碧が祈祷をしに姿を消したところで使い魔のクルミ経由でそれとなく自慢話をしたくなるように意思誘導の力を流し込みながら、色々と書類に書き込んでいる西浦に雑談という名の情報収集を行う。
「へぇぇ、動画クリエイターなんですかぁ。
最近はヨーチューブとかで色々と便利な情報提供系とか面白い動画が提供されていますが、ああ言うのって作るの大変じゃありません?」
職業は何なのかを聞いて、『動画クリエイター』と言う答えにちょっと驚いたふりをしつつ持ち上げてみる。
「そうなんだよ〜。色々と情報収集しなきゃいけないし、無駄に長くダラダラしてたらビューアーが飽きちゃうから適度に編集しなきゃいけないしで結構大変なんだ。
世の中、悪いことをやっている奴が多いからそう言うのを皆に知らしめて警鐘を鳴らす為の動画を作っているんだけど、中々悪事を認めないような奴もいるしね〜」
得意げに西浦が述べる。
と言うか、悪事をしているって勝手にあんたが決め付けただけで、目を惹きそうな場面をでっち上げてる事も多いみたいだよね?
「悪事なんて暴こうと思っても、相手は隠しちゃいません?」
ちょっと首を傾げる感じに聞いてみる。
と言うか、コイツは本当に悪事があるのかを気にせずに、バズるかだけを重視して動画の題材を選んでいるから、冤罪も多そう。
基本的に、バズりそうな悪事の話をゲットしたらそれの事実関係は確認せずに、自分が創り上げたストーリーに合致する映像を撮って目を引く動画にすることだけに集中しているので、本人ですら冤罪かどうかを知らないって……無責任すぎる。
「ところが。意外と人に見られていないと思うと油断する人も多いんだよ。
編集すれば大体真実が分かりやすくなるしね!」
西浦が自慢げに話す。
う〜ん、反省する気は全く無いね。
誰かを陥れるようなほぼでっち上げの編集動画を作り、その中で相手の情報も微妙に漏らす事で炎上を狙う事を『悪い事をしている』とも思っていない。
チャブちゃんの首輪に付いていたカメラを壊したから、碧に関してはでっち上げだろうと動画を作れないと思うけど、それだと白龍さまの天罰も受けない。
これはどう考えてもちょっと懲らしめておく方が世のためだから、少し動画で口を滑らせるようにしようかな。
そっとクルミ経由で眠くなるように力をふるい。待合スペースの椅子で眠った西浦の手から落ちそうになったペンを取り上げ、そっと肩に手を触れる。
「あら、眠っちゃいました〜?
お疲れなようですね、このまま休んでいて下さい」
携帯で私との会話も録音していたので、態とらしくないよう気をつけながらそっと声を掛けておく。
さて。
口を滑らせるように他の人間は馬鹿だと思っている本人の考えを補強し、自分が『真実』に色を付けてわかりやすくしているのも親切な行為であって隠す必要もないと思わせるように思考誘導しておく。
あとは……。
編集せずに出来るだけライブで動画を流した方が面白くて視聴者が増えるって考えを埋め込んでおくか。
元々、自分はずば抜けて賢くて魅力的だと思っているナルシストなのだ。
気をつけて時間をかけて編集なんてする必要は無いという本心と、何か自分の情報が漏れて訴えられたら面倒だと言う臆病さが心の中でせめぎ合っていたバランスを、自惚れの方が強くなるように後押ししておく。
これで多分自爆するだろう。
そうだ、ペットを虐めている事も口を滑らせるように意思誘導を埋め込んでおいて、それを口にした動画のリンクを以前の患獣の飼い主だった叔母に送ってあげよう。
こいつが小遣いを強請りに行くたびに虐められていたらまたあの猫ちゃんの慢性胃炎が再発しかねない。
幸いにもこっちに来た事で叔母との関係を自分からばらしたのだ。
その際に言われた事が気になったので動画を見ていて気付いたってことにすれば叔母の方へ連絡を取って知らせても不自然ではないだろう。
一連の意思誘導が終わったぐらいの時に、碧が戻ってきた。
「お待たせ〜。
特に大きな問題はないようだし、もう元気になったわ〜」
碧が明るく声を掛けながら戻ってきた。
西浦を眠らせていた術を解除し、碧の声で目覚めたと誤認させておく。
「あ、もう終わりましたか?」
西浦が立ち上がりながらチャブちゃんのリードを受け取る。
「ええ、これからも元気に過ごせるよう、誠意を込めて祈祷しておきましたので!
ではお疲れ様でした」
碧が慣れた手付きで西浦を部屋から出るように誘導した。
なんかこう、碧って邪魔な人間がさっさと出ていくように動かすのが上手いよねぇ。
実際に相手に触れ押している訳じゃないんだけど、パーソナルスペースの使い方と目線で上手いこと誘導している。
碧ママにでも教わったのかな?
先日のやり取りから察するに、宮司の奥さんっていうのも居座りがちな人間をそれとなく立ち去るように誘導する手腕が必要そうだもんね。
取り敢えず。
帰ったらコイツの動画サイトを確認して、ボロが出たら叔母経由で家族に暴露だ。
何をやっているか暫くモニターする為に、クルミはちょっとの間はコイツにつけたままにしておこう。




