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イッカンセイ〜黒血〜  作者: Qualia&八久斗
3/11

まさしパスト其の參

さあ、反省会だ。

「お」

「ん?」

はてさて、昔話である。

後悔エピソードである。

とある日、人間としての常盤正志―――すなわち私は、制服(学生服では、勿論ない。駅員の正装、である)に着替えようと専用のロッカールームに入ったところで、何故か加納と出くわした。

「…加納、あなたのシフトはまだなはずでは?」

早朝のこの時間帯は私のシフトのはずであるのだが…、一応、シフトについては私も加納もミスした事がないため、どちらにせよ「シフトをミスった」のは衝撃なのだ。

が、

「あ?いやいや、今日だけは俺がこの時間帯を担当するって言ったろうが?」

「ぇ…、そ、そうでした?」

つい、声がうわずってしまう。

あー。

なる程。

――無意識のうちに、私がミスをするわけがないと、勝手にそう思いこんでいてしまっていた…。

私にミスはない。

ミスをしたのは、加納の方だ。

と。

「………スミマセン。」

私はぎこちなく謝る。

しかし、それが二重の意味である事を、加納は知らない。

「ま、いーけどな。珍しいモンが見れて楽しいってのが、内心だし」

「楽しい、て……」

酷い言いぐさだなあ。

勿論、わざわざ深く突っ込むような真似はしない。

結果論、悪いのは私なのだから。

結果論。

そう。

結果論、だ。

結果論、最終的に、罪を犯したとはいえ、加納の個人的事情に首を突っ込んでおいて、挙げ句の果てに私は加納を殺害してしまったのだから。

……、

………、

………………、

…………………………本当に?

本当、に?

ホントウニ?


…おいおい、ちょっとまて。

いや、かなり待て私。

何を疑っている?

何処を疑っている?

何故、疑っている?

明白じゃあないか、その後、化け物になった私がその異能の力を使役して。

加納を殺したじゃないか。

目撃者だっている。

しかも2人も、だ。

なのに―――だのに、なぜ、なにゆえ、どうして、どうなって。

私は、紛れもない事実に、

疑問を持っているのだ?

「……………」

…とかね。

うん、この物語のタイプからして仕方のないことやもしれんが、メタ発言である。いやさ、無関係でもなく、意味ありげな言い回し含めての、つまりはフラグ立てなんだが。

「…………………んー…」

閑話休題、暇人である。

私服に着替えなおしてロッカールームを出た私は、駅前のベンチに腰掛ける。

「…本当に、暇だなぁ…」

暇。

いとまでなく、ひまだ。

こうして暇を持て余していることにより、重大な過ちを犯していそうな、そんな気がしてならない。

過ち。

うーん。

悩み始めればキリが無くなる、私の良くも悪い性癖である。

自覚はある―――から、意識して中断することが出来るのが唯一の救いと言った所か。

しかし、意識しても一向に解決出来ない、どころか中断さえままならない性癖がある。

御名答。

読者の皆さんは勘がいい。

そう、「一見正義っぽく見える何か」だ。

冒頭に言った、アレだ。

それのせいで、私はどのコミュニティーからも爪弾きにされてきた。

某小説で聞いた話だが、この世界には本来、どんな見解が正しいのか判らない。

そもそも正しさなんてなく、あるのは「都合」だけ。

都合が悪いから法の上で悪と認定されるだけで、その善悪が他の世界の都合と合致するかといえば、そういうこともない。

それでも、正しい人間はいる。

正し過ぎる人間はいる。

私のように。

しかしそういった存在は、他の普通な人間からしたら「怖くて気持ち悪い」だけだ。

怖くて気持ち悪いから、一緒にいたくなくなる。

爪弾きにされる。

他人を爪弾きにする人間を、誉められた人間だとは思わないが、最近になって、そんな彼らを――彼らの気持ちを理解しないわけにもいかないと、感じれるようになった。

進歩した、とは思わない。

退化だ。

退化と言うなら、進化したわけではないと言うのが実際は妥当か。

都合がいい―――か。

私のように白過ぎたり、加納のように黒過ぎてもいけない。

真っ白な烈光では、眩しくて何も見えない。

真っ黒な暗闇では、暗くて何も見えない。

灰色の世界でこそ、

灰色の人間でこそ、

人間は人間でいられるのだ。

――そこをゆけば、

私が加納に殺されたのも、

世界から爪弾きにされたのも、

当然だと、思うのだ。

あまりにも、「過」ぎた話だが。

反省会はまだまだ続く。

まあ、反省した所で、何も還りは――省りはしないのだが。

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