まさしパスト其の壹
本サイト内のユーザー、八久斗さんの作品『カノウセイ』シリーズの二次創作です。
無論、本人から認証をいただいているので、悪しからず。
私は「正しさ」というものしか認めない。
悪は罰せられるべきだと思っている。
ここで言う「私」とは、常盤正志の事である。
常日頃の常、盤渉調の盤、正義感の正、志望校の志で常盤正志。
よい名前だと思う―――我ながら。
さて、この常盤正志の独り語り、常盤正志の語り部から始まる物語について、注釈を入れておこう。
常盤正志という人間はこの世にもういない。
私は――いない、のだ。
とある同僚に殺害され、その身を滅ぼされている。
かつて私は、復讐に燃えた。
私を殺した男――とある同僚――加納正治を殺し返すために、化け物になって蘇った。
果たして、復讐は達せられた。加えて、蘇った際に巻き込まれたとある少年達(ん、あれ?確か一人だけ青年だった気が…)に私は、永遠に間違えること無き世界を築く事を誓えと、そう言った。
なんと、その答えは、
「できないよ」
だった。
私は、私にそう言った少年に、こう教え返された。
罰を与えるだけでは駄目。
何故罰せられたかも伝えなければ駄目。
だって人は、間違えてからはじめて成長できるのだから。
と。
…そんなこと、分かっていたハズなのに――なのにどうして私は、いつからか、罰を与えるだけの人間に、化け物になったのだろう?
しかし、結局、言われた後もその言葉を教訓にすらできず、罰だけを与え、殺してしまった。
我がまま――なんだろうか。
これで正義とか馬鹿げてる。
更生のカノウセイを見下し、
己の待遇のグウゼンセイを無視し、
その末路のヒツゼンセイを否定した。
たぶん、正義でも何でもなく私はただ、一貫として頑固なだけだったのかもしれない。
―――それゆえの、結果だ。
因果応報なんて嘘っぱちだと死ぬ間際に思ったが、そこをゆくと、そうではないと再認識させられる。
私が加納に殺されたのは、正義という名の圧制を、圧制という名の悪性を、私が振るってきたからだろう。
因果応報――なのだろう。
やはり悪は癌だ。
癌だから、完全な善人は生まれ得ない。
親を悪く言うつもりはないが、生まれてくるにあたって、育てられる過程において、幾分か悪性は乗り移る。
親の影響、
周りの期待、
悪影響、
期待はずれ、
私にも無論ある。
だから、
正義なんてものは無く、誠な人間がいれば、誠な人間でいれば、それでいいと思うのだ。
おっと、そうだ。
―――誠。
誠、か。
誠くん、か。
彼は今、どうしているだろう?
彼らは今、どうしているだろう?
何度殺されかけようとも、カノウセイを、可能性を、捨てずに信じ続けていた彼ら。
敵であった私にさえ、手を差し伸べてくれた彼ら。
不意に、声が聞こえてきた。
私が現在求めている理想像、名がその体を表す彼の声が。
「この世界も、そんなに捨てたもんじゃないですよ、常盤さん」
正志「あー、ポテチ食べたいなあ」
誠「常盤さん、キャラ崩れてますって…」