6章 そしてドイツ 7節
「やれやれ、人間ってのは面倒な生物だ」と、それまで一体どうなるんだろうと、かたずを飲んでそばで見ていたトムがそう言った。
その言葉で桂子はトムがそばにいる事に気が付いた。
そして「まあ、トーマス、何故ここに」と、言って一旦孝一の胸から離れ、トムにハグをした。
「孝一もそうだけど、二人が何故ここにいるの」と、改めて疑問に思っていた事を口にした。
「知ってるか、俺には従妹がいるんだぜ」と、トムが言ったが、桂子は
「それがどう関係あるの」と、聞いたが思い当たる節があったので「あっ」と、小さく叫び、「キャスリンなの。従妹って」と、トムに聞いた。
「ご名答」
「じゃあ、貴方がカップルの一人なの」と、孝一に尋ねた。
「ああ、そうだ」
「じゃあもう一人の女の人は、それよりキャスリンはどうしたの」と、一度にいっぱいの質問をした。
「まず、キャスリンだが、もうすぐ美奈代とICEでミュヘンにつく頃だろう。」と、孝一が言うと、桂子は『まあ』と、言う顔をして口が半開きになりそうになった。
「え、でも、なぜ美奈代が一緒なの」と、またしても桂子の頭の中が混乱しそうになってきた。
孝一とトムは、アメリカで有った事を話し、そして今回の計画を立てた事を説明した。
「じゃあ。あつしも来るの。私。どうしたら良いんだろう」と、うろたえる様に言った。
「普通でいいさ、まあ、あつしも桂子が未だにパリにいる事と思っているらしいので、ちょっとびっくりするだろうけどな」と、あっさりと言った。
「でも、何であつしと美奈代まで、ここで会うようにしたの」
「そうだ、俺たちだけ幸せになって良いのかなと思った。ただそれだけだ。美奈代もあつしに会いたがっていたのは、キャスリンから聞いて知っているんだ」と、孝一がそう言った。
「俺たちは友達で、それぞれ最初は組み合わせを間違えたんだ。その事を何時までもしょってちゃあいけないだろう。間違っていたなら直す。若い俺たちだから出来ることなんだ。そしてそれが今なんだ。さっきも言ったように。今が大事だしこれからも大事なんだ。過去も大事だけど、直せるべくは直すべきだと思う」と、孝一は力強くそう言った。
桂子も今度は「うん、そうだね」と、頷いた。