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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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犬と散歩2

 日が暮れる前に、犬と散歩に出かけた。


 秋も深まって、散歩コースの歩道の街路樹は葉を落とし始めていた。カサカサと時折弱い風に吹かれて落ち葉が音を立てている。


 珍しく誰も歩いていない歩道を犬とのんびり歩く。犬は気になる匂いを嗅ぎながら、ときどき私を見上げて尻尾を振る。私は自然と微笑みを浮かべていた。


 私の少し前を歩いていた犬が、立ち止まったかと思うと低いうなり声を出した。うちの子はフレンドリーで、人にも犬にも唸り声など出したことがない。


 カサカサと音がして、私と犬の前にペラペラな男が姿を現した。見た目は強面で、キャップを被り、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべてこちらを見ていた。


 男は弱い風が吹くとカサリと音を立てて手の先や頭などが揺れるくせに、立っていた。


 私はどうしたらよいか分からず、後ろを向いて逃げるのも怖かった。犬を抱き上げて、2、3歩後ずさりした。男はその分2、3歩こちらに歩いてきた。距離は変わらない。


 心臓が早鐘のようになり、嫌な汗が流れた。


 突然、突風が吹いてきて枯葉を巻き上げた。


 男はガサガサと大きな音を立てて、


「ひやあ」


と間抜けな声を残して飛ばされていった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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