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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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花火

 夏になるとよく売っている、手軽に買える花火セットを見かけて無性にほしくなって買ってしまったものの、私は独り身で、結局夏が終わっても部屋の片隅にころがっていた。


 邪魔だしもったいないから、海岸まで行って花火をした。せめてにぎやかにやれればよかったが、季節も過ぎて誘う機会も逸してしまったのは失敗だった。


 消費するためだけに淡々と花火に火をつけて、消えたらまたつける。まったく楽しくない。


「花火の衝動買いは絶対にやめよう」

呟いた時、海面に光が漂っているのに気づいた。


 青白い光がゆらゆらといくつもいくつも浮かんでいる。何かは分からない。気が付くと手に持っていた花火が終わっていた。


 海面の光を気にしつつ、ひたすら花火セットを消費した。最後に残した線香花火に火をつける。これだけは、いくつになっても好きなのだ。


 海岸だから風が時折強く吹く。玉になった線香花火がどこまで落ちずにパチパチいうかドキドキしながらじっと見ていた。


 5本あった線香花火のうち、最後の1本に火をつけた。目の隅に青白い光が見えた。線香花火が消えて顔をあげると、いつの間にか私を取り囲むようにいた青白い光の群れが、静かに消えていった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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