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日常のはざまで――掌編集――  作者: 猫野沙子


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傘

 同僚から傘をもらった。その同僚はライバルと言うか、こちらを敵視してくるようなヤツだったから、何だか変だとは思った。だけど、拒否するほど仲が悪いわけでもないから受け取った。


 それから、仕事上の小さなミスが続いたり、乗った電車が遅れたり、欲しかったものがいつも売り切れていたり。そんなことが増えたように感じた。


「最近、不運が続いてるんだよ」

「気分だよ、気分。最近疲れてんじゃないのか?」

 ちょっと友人に愚痴ったら、そう言われて気にしないようにしてたけれど、やはり、なんとなく不運だ。


「気分転換にスポーツ観戦に行こうぜ」

と、愚痴った友人から誘われて見に行った。あいにくの雨だったが室内スポーツだから観戦自体に問題はない。


「ずいぶんいい傘持ってるんだな」

「何故かもらったんだよ」

 もらった傘は高いものだったから、傘用のビニールに入れて座席まで持って行くことにした。


 大声を出して応援して、応援したチームが勝って、すっきりした気分で友人と食事をした。やっぱり、気分の問題だったのかもしれない。


「あれ、お前、傘もってないじゃん」

友人に言われて「あっ」と思い出した。そう言えば座席に行く前、トイレに寄った時に置きっぱなしにしてしまった。


 次の日、電話をかけて確認したが、傘の届け物はなかったと言われて、あきらめた。高い傘だったし、誰かが持って行ってしまったんだろう。


「すまん、うっかり忘れてもらった傘をなくしてしまったんだ」

傘をくれた同僚に謝ると、あからさまにこちらを睨んで、舌打ちして去っていった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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