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大塩平八郎、令和に立つ —デブ総理の中身が義士だったので、知行合一で国を救ってみた—  作者: 桐生宇優


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最終話:『義に死すとも、魂は死なず ―さらば、大塩平八郎―』


1. 「蔵」の完全解放


官邸執務室。警備隊がドアを破ろうと斧を叩きつける音が響く中、平八郎は神田から預かったスマートフォンを、まるで最後の一太刀を振るうように操作した。


「……神田殿、これでよい。日本のすべての隠し財源、利権の構造、そして民に返されるべき『蔵の鍵(予算執行権)』を、全日本人に共有した。……もう、何者もこれを隠すことはできぬ」


画面には、何億という民衆の驚きと、そして希望の声が弾幕のように流れていく。


「蔵は開かれた。……あとは、民が自ら選ぶのみよ」


2. 森川との決着


ドアが弾け飛び、権力を使い解放された森川長老と武装した警備隊がなだれ込んできた。


「石悪ッ! 貴様、何ということをしてくれた! これでこの国の秩序は終わりだ! 経済は崩壊し、混沌が支配するぞ!」


森川の叫びに対し、平八郎はふらつく足で立ち上がった。その肉体(石悪)は、限界を超えた霊力の消費により、今にも崩れ落ちそうだった。


「……森川よ。お主の言う『秩序』とは、民を飢えさせ、自分たちだけが私服を肥やす『牢獄』のことではないか。……混沌? 違うな。これは、民が己の足で歩き出すための『産声』だ。……お主の時代は、今、この瞬間、終わったのだ」


平八郎の瞳から放たれた圧倒的な「義」の光に、森川はたじろぎ、手に持っていた杖を落とした。


3. 最後の一喝、そして別れ


平八郎は窓の外を、そして神田を見つめた。


「……神田殿。……もう、時間のようだ。……拙者の魂、もはやこの器に留まることは叶わぬ」


神田は、透明になっていく平八郎の手を、必死に掴もうとした。


「先生! 行かないで! まだ、この国にはあなたが必要です! 誰もがあなたを待っているんです!」


平八郎は優しく微笑んだ。その微笑みは、第1話の「汚らわしいデブ総理」の面影は微塵もなく、ただ慈愛に満ちた聖者のようだった。


「……案ずるな。……私は消えぬ。……知らぬ者でも、不義を見て『許せぬ』と思う心があれば、そこに私はおる。……お主の中に、そして民一人一人の魂の中に、私は知行合一となって生き続ける」


平八郎は力を振り絞り、日本中のスマホ、テレビ、ラジオ――すべての電波を通じて、最後の声を届けた。


「……民よ! 己を律せよ! 不義を挫け! お主ら一人一人が、今日から大塩平八郎だッ!!! かつーーーーーッ!!!!!」


その一喝が日本列島を震わせた瞬間、眩い光が執務室を包み込んだ。


4. 継承される意志


数分後。


光が収まった執務室には、床にへたり込んだまま「……あれ? 俺、何してたんだっけ? お腹空いたなぁ……」と、いつもの情けない声で呟く、「元の石悪総理」がいた。彼は何も覚えていなかったが、不思議とその瞳からは、かつてのどす黒い欲が消え、どこか子供のような無垢さが戻っていた。


神田秘書官は、窓の外を眺めた。


そこには、平八郎が命を懸けて解放した「未来」が広がっていた。


スマホを手に、政治を自分たちのものとして語り合い始めた若者たち。


不当な扱いに「NO」を突きつける労働者たち。


誰に言われるでもなく、困っている隣人に手を差し伸べる人々。


神田は、涙を拭い、スーツの襟を正した。


「……知行合一。行動なき言葉に、価値はありませんからね。……先生」


5. エピローグ:大塩平八郎の墓標


一年後。


大阪、成正寺にある大塩平八郎の墓の前に、一人の女性が立っていた。


今は若手議員として、国民の圧倒的な支持を得ている神田だ。


彼女のスマホには、ある画像が保存されている。


それは、あの激動の数週間の最後に撮られた、満面の笑みで「一汁一菜(麦飯と味噌汁)」を食べる、不格好だが最高に格好良かった、ある男の姿。


風が吹き抜け、神田の耳に、懐かしい、あの凜とした声が聞こえた気がした。


「……神田殿。……メシの味は、どうだ?」


神田は空を見上げ、力強く答えた。


「はい。……最高に、『義』の味がします!」


(完)



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