237.新たなる救世主
237.新たなる救世主
「うーむ、これは大変なことになった。予定が狂ってしまったぞ! この冥王一生の不覚である! ちょっとくらいなら責めても良い!」
「おうおう! どう落とし前つけるつもりだよナイアさんよぉ! お前のせいで大変なことになっちまったろーが!!」
「ナイア様。この馬鹿をかみ殺しても良いですか?」
「ひい!」
「そやつはアリアケの弟子だから、そっちに聞くがよい!! うむ!!」
「こんな奴の弟子じゃねえ!!」
「そうか! ではかみ殺して良い! ううむ!」
「ひい! で、弟子です! ア、アリアケ~」
「やれやれ」
俺たちは帰りの馬車に同乗していた。
今後の方針を相談する必要があったからだ。
俺は嘆息しつつ、
「ビビアはまだ初級勇者だ。大目に見てやってほしい。何より師である俺の指導についてこれないのは、俺の教育不足だ。今後も人の精進するよう、ビビアには言い聞かせていく。この通りだ」
と頭を下げた。
「いえ、アリアケ殿が謝ることではありません。ふん、初級勇者よ、寛大なアリアケ殿に感謝するのだな」
「ぐ、ぐぎぎ! あ、ありがとうございます……」
「うむうむ! 師弟愛を見れて我は満足である! だが、その言葉忘れるなよションベン太郎よ! これからも師に1ミリでも追いつけるよう精進するが良い!」
「その呼称はやめろっつてんだろーが! いい加減忘れろ! あ、い、いや、忘れろ下しゃい」
ガルルルと、すごむフェンリルに思わず敬語になるビビアであった。
呪いの洞窟の件は、本当にトラウマだったのだなぁ。
そんなことを思いつつも話題は本題に進む。
呑気な会話に見えるかもしれないが、世界の危機に直面し続けている俺にとっては、これくらいの気位は持っていて当然だ。
「神が人を見捨てたとなれば、人々は心の基盤を失ったも同然だろう。何か他の精神的支柱が必要になる。ナイア、お前がそれになることは可能か?」
それが一番手っ取り早い方法なのだが。
しかし、彼女は腰に手を当てて、
「無理に決まっている!」
と笑顔で言い切った。
「なぜですか? ナイア様なら皆慕っています」
「そういう問題ではない。もはや我は現時点で滅亡種人類の王として君臨しているではないか。今更どのように民へ声をかけようとも、新たな力とはならぬ」
「そりゃそうだ」
その言葉は道理だ。
既に彼女は役目を果たしている。つまり、もはや今の時点で人類の精神的な支柱なのだ。
であるがゆえに、新たな希望とはなりえない。
「新しい希望が必要か」
「うむ! 人はパンのみに生きるにあらず! 心の栄養を摂らねば死んでしまう! そこでだ、我に名案がある」
ドンと、やはり腰に手を当てたまま、ナイアがドヤ顔しながら口を開こうとする。
しかし、その声を遮る大声が馬車に鳴り響いた。
「はーっはっはっはっはっはっは! 聞くまでもねえぞ! ナイアぁ!!!!!」
ビビアであった。
だが、俺もその言葉には同意して頷いた。
それしかあるまい。
だが、もう少し声のボリュームを落として欲しいことだけが不満である。
「新たな英雄! この窮地を救う勇者! 世界を救う救世主の役割を担えって言うんだろう! くははははは!!!」
そういうことだな。
今のところこの勇者パーティーは、神殿内でこそ認知されてはいるし、魔王を討伐したということで噂話程度には民に認知されているが、まだ、それこそ全員が知るような有名人というレベルではない。
何となく知られている程度だ。
つまり、ビビアは新たな英雄として担ぎ上げることによって、人々の新しい精神的支柱となりえるのである。
無論、神を失ったショックを全てカバーしきれるほどではないだろうが、無いよりはよほどマシだ。
「俺もその案には賛成だ。というか、それくらいしかないだろうな」
追い詰められた人間には余裕などない。
使えるものをどんどん使って、滅亡と存続の天秤を少しでも揺り戻す必要があろう。
「そうか! 賛成してくれるか! アリアケ!」
「ああ」
「フェンリルはどう思う?」
「良い案かと。ナイア様」
「では決まりであるな!!」
コホンとナイアは咳払いをする。
ビビアはその言葉を待ち受けて、唇を歪めて笑っていた。
ナイアが言葉を発する。
王としての威厳に満ちた声で、
「アリアケ・ミハマよ。そなたを救世主として認定する。どうか、この滅亡種人類王国クルーシュチャを守り、民に安寧をもたらし、そして」
彼女は言った。
「この神代世界を救ってほしい。救世主アリアケ・ミハマとして!」
その言葉に、一瞬の沈黙がおりる。
そして、
「はああああああああああああああああああああああ!??!?!?」
ビビアの悲鳴のような、怒声のような、泣き笑いのような、耳障りながなり声が上がった。
「俺が救世主だろうがよ! なんでアリアケなんだよ! この超勇者ビビア様こそが人類の希望になるべきだろうが! ぬわんで!? どーして!?」
その声にナイアは訝し気な表情で、
「は?」
と言ってから、
「そんなもん、アリアケに決まっておるじゃろ。救世主ビビアとか認定するような采配する王じゃったら、とっくに人類滅亡しておるって」
「ですね」
ナイアの言葉に、フェンリルも素の表情で答えた。
一方、
「へ?」
俺は初級勇者ビビアが新たなる救世主として担ぎ上げられるものと思っていたので、実は驚いていたのだった。
「いや、出来れば辞退させてほしいんだが?」
「そうだ! アリアケ! 辞退しやがれ! 救世主ビビア様の誕生を邪魔してんじゃねー!!!」
「アリアケよ、王として頼む。人類の滅亡を防ぐ最後の防波堤として、そなたの力が必要だ」
ナイアが頭を下げる。
「王が頭を下げるもんじゃない」
「そなたも先ほど下げていたではないか。王様差別は良くない」
「む」
俺は一本取られた気分になる。
と、同時にフェンリルも口を開く。
「アリアケ……様。どうか救世主としてこの時代をお救い下さい。クルーシュチャ国の民として、私からもお願いします」
「様?」
「救世主様ですから」
彼女までも、俺を真摯な瞳で見つめながら言った。
「参ったな」
「おい! 俺が! この俺が救世主だ!」
「だが、結局やることはそう変わらないか。それに俺がこの時代に呼ばれた、ということは、そういうことなんだろう。早くのんびりしたいんだがなぁ」
「うむ! さすがアリアケは話の分かる良い男である! のう、フェンリルよ!」
「えっと。その。私にはその辺の話は分かりかねます……」
「お? へー、ほうほう。そうかそうか」
「ナイア様、違いますので」
最後辺り、二人が何の話をしているの分からなかったが、恐らく王と従僕という特別な関係の二人にしか通じない内容なのだろう。
ともかく。
「やれやれ」
こうして俺は、神代の世界において救世主として扱われることになってしまったのである。
のんびりしたいだけなのだがなぁ。
はぁ。
俺はこっそりと嘆息をするのだった。
ところで、
「ふんぎいいいいいいいい!!! 無視すんじゃねえええええええ!!!」
ビビアが絶叫していた。
出来れば彼に救世主役をやってもらいたかったなぁ、と心から思う俺なのであった。
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