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225.滅亡種人類王国

225.滅亡種人類王国


さて、俺や少女フェンリルが倒したレッドドラゴンたちの死骸が村中に散乱しているわけだが、戻ってきた村人たちは喝采を上げて喜んだ。どうやら貴重な食糧や素材になるらしい。


たくましくて何よりだな。


特にまだ腰が抜けて立てないビビアには、村人のたくましさから学ぶべきものがあろう。


「見ろ、ビビア。お前より力もない村人たちが、こんなにもたくましく生きている。下級勇者ビビアも腰を抜かしていては格好悪いぞ」


「う、うるせええええ! 腰なんか抜かしてねえわ! くそがぁ!」


彼は聖剣ラングリスを大地に突き立てながら、ガクガクと腰を痙攣させながらだが、立ち上がった。


「かっこわるいが、立派だぞ、ビビア。やはり勇者はそうでなければな」


「かっこわるくねえ! 俺はイケてる! 終始かっこいい!」


まぁ自己評価をどうしようが、それは自分の勝手だ。


それよりも確認すべきことを聞くべきだろう。


「すまない、フェンリル。質問をもらっていたのに話が中断していたな。勇者と言うのはこのビビアの職業だ。世界を救う者に与えられる称号のようなものだ。君のことは風聞などで、色々と聞いて知っている」


いきなり未来から来た、と話しては、かえって胡散臭がられると思って、ぼかして答えた。


「そうか。だが、今の話であれば、そこの腰を振っている男よりも、私にはあなたの方が勇者に相応しいように思えたが?」


「ははは。俺は後衛が専門でな。そうのような大層な肩書きには相応しくないさ」


「もし勇者という職業が人格を問うならば、やはりあなたが、と思わざるを得ないが、まぁいい」


改めて彼女を見ると、やはりフェンリルが人化したときの面影が多分にあった。


一方で、明確に違うところもある。


まず、自分のことを『私』という。大人のフェンリルは『我』と言っていた。


また髪の毛は大人の時と同様真っ白だが、ショートカットにしていて、いかにも戦い易さを重視しているように見える。


何よりも性格だ。大人の彼女は妖艶と言って良い雰囲気を常に発している女性だったが、目の前の少女はまだ10歳程度にしか見えず、口調も無骨で端的である。


「それより聞きたいんだが、俺を見た時、人間がいることに酷く驚いていたように見えた。それにこの村も獣人たちの村のようだ。どうしてなんだ?」


レッドドラゴンの素材を回収しているのは、いずれも犬耳や尻尾をはやした獣人たちで、人の姿はない。


「疑問なのはこちらも同じだ。繰り返すが、どうして人間がこんなところにいる?」


彼女の言葉に、やっと腰の痙攣がおさまったビビアが唾を飛ばしながら言った。


「はぁ!? 俺たちがどこにいようが勝手だろうが! それとも何かぁ!? ここにいちゃいけない理由でもあんのかぁ!? ああん!?」


フェンリルはジトっとした目で、ビビアを見て、


「私は無礼な者には容赦はしないタイプだ。お前は私の胃の腑に収まることを渇望しているのか?」


「ひ、ひい!? ば、馬鹿が! お前みたいなチビに俺を吞み込めるほどでかい狼になれるわけがねえだろうがよう!?」


「ふむ、各地で戦っているせいか、私が聖獣であることは風聞にて知っていたようだ、が、しかし、その力についてはあまり浸透していないらしい」


彼女はそう言うと、瞬時にその体躯を変身させていく。


バリバリという肉が膨れ上がり、口蓋が裂けて鋭い牙が映えていく。


体毛は象徴的な白から神秘的なブルーの美しい光沢をした毛並が生える。


1000年後の頃よりも少し小さいかもしれないが、聖獣の持つ威容は、人間に本能的な恐怖を覚えさせるのに十分だ。


「あわわわわわ! ブクブクブクブク……」


「なんだ? 狼の姿になっただけで気絶したぞ、この勇者とやらは?」


「トラウマが刺激されたんだろろう。いつか克服してくれると師としては期待している」


俺はそう言って彼女に向き直る。


俺はどちらかと言えば彼女が本来の姿になっているときも好きだ。ブルーの毛並みが美しく、しばしばその毛並みを枕に眠らせてくれる。俺のような若輩者にアドバイスをくれる存在として、とても信頼もしていたので、どうしても自然と彼女に頼るような言動も多くなったものだ。アリシアには時折嫉妬で嫌味を言われたりもしたが。


「ふーん、私よりフェンリルさんなんだ。ふーんふーん、ふーんだ!」


と言った感じだ。そのあとは美味しいスイーツをおごらなければなかなか機嫌を直してくれない大聖女様であった。


ま、それはいい。彼女には聞きたいことの続きを聞く。


「話を戻すが、俺たち人間がいる方が疑問というのはどうしてだ?」


そんな俺の言葉に、彼女は訝し気な表情を浮かべつつも、はっきりと答えてくれた。


「それは決まっているだろう」


彼女はレッドドラゴンの解体されている現場を眺めながら言う。


「人類は既にほとんどが死に絶えた。残っているのは『滅亡種人類王国』くらいのはずだからだ」


「な、なにいいいいいいいいいいいいいいいい!? 人類が! め! め! め! あばばばば!」


気絶しながら狼狽するとは器用な奴だな。


俺は苦笑しながらも、半分予想があたっていたことに落胆する。


「なるほど、どうやら神代回帰とはいえ、いつ頃かと思っていたが、どうやら宇宙癌ニクス・タルタロスと女神イシスが相打ちになった後というわけか」


「そうだ。星の女神は眠りについた。宇宙からやってきた化け物も相打ちでダメージを負っている。しかし、こうして日に日にモンスターの襲撃は強まっている。惰弱な人類種はほぼ駆逐されて、一国を残す状態だ」


「王の名前は?」


俺の質問に、フェンリルは答えた。


「冥王ナイア女王。彼女が一人で滅亡種人類の最終防衛ラインを『クルーシュチャ』国で堅守している」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「それはこちらのセリフだ。どうして人間がこんなところにいる?」 先のレッドドラゴンとの小競り合い、「神代の戦い」とまで表現された規模の戦いにおいて あれだけ助力してもらい、フェンリル…
[気になる点] 「もし勇者という職業が人格を問うならば、やはりあなたが、と思わざるを得ないが、まぁいい」 別に自身に強化を施せないわけではないのに他人を強化して戦わせるだけで 当の自分は役割を一方的…
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