224.神代の戦い
224.神代の戦い
「助太刀しよう」
「!? 何者だ!」
突然、現れた俺の姿に、子供姿のフェンリルは咄嗟にカウンターを繰り出す。さすがだな。
しかし、
「いいパンチだな。ふ、大きくなったお前の一撃だったら冷や汗ものだぞ?」
「なっ!? ドラゴンも屠る私の一撃を!」
彼女は目を見開いた。
だが、俺は微笑みながら言う。
「ドラゴンも一撃か。それは頼もしい。いつもお前には助けられてばかりだ」
「え?」
彼女は訳が分からないと言った風に首をかしげる。声も大人の時と比べれば高く、まだ幼さを残す。
と、その時だ。
「しまった!」
彼女は悲鳴を上げる。一瞬の隙を見逃さず、レッドドラゴンの一匹が肉薄し、尻尾を振るったのだ!
しかし、俺は一向に慌てずに、
≪鉄壁≫
≪防御力アップ(強)≫
≪物理攻撃無効≫
≪全体化≫
瞬時にレッドドラゴンの攻撃を見切り、スキルを発動した。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
尻尾の強打だけで、大地は鳴動し、風圧で後方の村の建物たちが消失する。ただ、村人たちはとっくに逃げ出した後らしい。このような事態は日常茶飯事なのだろう。
「レッドドラゴンの一撃を軽々と防ぐとは、本当に何者……」
彼女はもう一度目を丸くする。が、
「今はそれどころではないだろう? 実力は分かってくれたはずだ。ひとまずはこいつらを殲滅する」
「ああ、そうだな!」
俺と少女フェンリルが空を見上げる。そこには数十のレッドドラゴンが大挙していて、この世界の地獄を体現しているかのようだ。
だが、一度拳を交えただけだというのに、俺たちの意思は通じ合っているような錯覚を覚えた。
「うぎゃああああああああああああああ!? いでえええええええええええ!!! 死んだ! 死んだ! アリアケェエエエエエエエエエ!! てめえのせいだあああああああああああ! あああああああああああああああああああああ!!!!」
なお、先ほどの攻撃で、死んだと思い込んだビビアの金切り声が木霊しているが、俺も彼女も気にも留めない。
神代のS級モンスターと対峙して平静を保てるのは、神と同等以上の力を持つ存在だけなのだろうから。
「行くぞ! ≪回避付与≫≪即死無効≫≪攻撃力アップ(強)≫≪スピードアップ(強)≫≪防御力アップ(強)≫」
「多重スキルだと! 凄い! これなら行ける! 聖獣フェンリル、参る!!!」
そう鬨の声を上げると、瞬間、フェンリルの姿は消える。
フェンリルは空中を自在に飛び回る。
マナを利用した空中跳躍によって、凄まじいスピードでレッドドラゴンの合間を行き来する。
そして、翻弄されたレッドドラゴンをチャンスと見るや、一気に近づくと、
「バリイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
凶悪な爪が伸びた手刀によって、一撃のもとにレッドドラゴンの身体を真っ二つに両断した!
『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
レッドドラゴンの恐ろしい断末魔が大地を震わせた。
だが、その隙を見逃す他のドラゴンではない。
油断ならないと判断したのだろう。仲間を巻き込むことも承知で、魔力を口元へ集中し始めた。
「すごい魔力量だな。一匹のブレスで、山一つくらいは削り取りそうだ」
「だ、大丈夫なのかよ、フェンリルの奴はよぉ!?」
「ふ、当たり前だろう」
俺は聖杖キルケオンを構えて詠唱を行う。
「俺とフェンリルがいるんだからな。神代であろうが負ける道理などない!」
俺はそう断言しつつ、
「受け取れ!!」
≪炎攻撃無効≫
≪神聖攻撃無効≫
≪竜殺し付与≫
「よっしゃよっしゃ! そんだけスキルかけりゃ、フェンリルだって負けやしねえだろうよ!!!」
「何を謙遜している、ビビア。武勲を譲ろうとは殊勝だな。だが、今そのような配慮は不要だ。行け! 勇者としての役割を存分に果たしてこい!」
「はひ?」
腰を抜かして座り込んでいた、観客同然だったビビアの首根っこを腕力強化で掴み上げると、今しもブレスを放出しようとするフェンリルのもとへ投擲する!
「う、うわああああああああああああああああ!?!!」
「何をしにきた!? 邪魔だ!」
突然、フェンリルの眼前に放り投げられたビビアに、フェンリルは激怒する。
だが、
「フェンリル! さっきのスキルはビビアへのものだ!」
「なに!? そうか! 確かアリアケだったな! なら私にも!」
「心得ている! 受け取れ、幼き聖獣フェンリルよ!」
俺はキルケオンを掲げ、
≪龍殺し!≫
≪無属性付与!≫
≪防御無視!≫
≪魔力防御無視!≫
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
そう、これは神代の戦い。
生半可な攻撃は全て効かない。
有効打となる決定的な一撃をいかに打ち込むかという、神話レベルの戦い。
ならば!
「下級勇者ビビアよ! タンク役は任せたぞ!」
「はああああああああああああああああああああああ!? 俺は勇者なんだぞ! そんなのは気持ち悪い筋肉自慢のエルガーに任せておけばいいことで、俺は華々しくドラゴンを倒してチヤホヤされるのがっ……!」
「来るぞ!」
瞬間。
数十匹のレッドドラゴン。しかも神代に生きる規格外のドラゴンたちからの熱線によって、俺のスキルといえども衝撃自体はビビアに伝わる。
「う、うああああああああああ!? 怖い! 怖い! それにこの無敵効果がいつ消えるか分からなねえからこええええええ!? アリアケええええええええええ! 絶対許さねえからなあああああああああ!!」
「あと3秒は持つ」
「ほげええええええええええええええええ!? さ、さ、さ、さんっ……!?」
ビビアが絶望の声を上げようとした時である。
「十分だ。感謝するぞ、通りがかりの大賢者アリアケよ!」
彼女はそう言うと、ドラゴンたちと同様に、その口元に魔力を集中させ始める。
その力は規格外。
当然だ。
「俺のスキルでお前の力は100倍にもなっている! フェンリル! お前の力でレッドドラゴンの群れを殲滅せよ!」
「承った!!!」
ブレスを浴びる下級勇者ビビアが恐慌状態に陥ってから2秒後。
それははた目から見れば、同時にブレスが放出されたように見えたかもしれない。
だが、その結果は一目瞭然であった。
山を蒸発させるほどのブレスの放射合戦。
まさに神代の戦いにふさわしい地形を変えるほどの神話レベルの戦い。これが普通なのだ。
そして、後からブレスを放出したフェンリルの熱線が、次々にブレスを吐くレッドドラゴンを溶かすように貫通し、墜落させた。角度を変えながら、次々とレッドドラゴンを蒸発させていく様子は、やはり神代に相応しい地獄図絵である。
こうして、神代の初戦闘は決着がついたのだった。
「こ、これほどの力を私が発揮できるなんて……」
村を救った英雄フェンリルは信じられないように自分の手の平を見つめていた。
「すべてあなたのおかげなのか?」
ゆっくりと近づいた俺に彼女は気づいて聞いた。
だが、俺は微笑みながら首を横に振る。
「俺は大したことはしていないさ。もともとの君の力のおかげだ。0にいくら掛け算をしても、0だからな。それに、ビビアがレッドドラゴンの熱線を全て防ぐことを嫌がっていれば、君の攻撃の機会は巡ってこなかっただろう。全員の勝利といったところさ」
「いや、このビビア? とか言う奴は、恐怖で最後は失神していたようだが?」
「戦いに気絶はつきものだ。まぁ、師としては、その仲間を守ろうとする勇敢さがあるのなら、最後までかっこを付けてほしいところなのだがな」
まぁ、それがビビアの憎めないところ、か。
俺は生暖かい視線で、気絶して色々な体液を流して失神してしまっているビビアを見下ろす。
「ともかく礼を言う。ありがとう、アリアケ。いや、あなたは恐らく名のある大賢者なのだろう。賢者アリアケに心から例を言う」
「アリアケでいいさ。あと、もう一度言うがビビアの協力もあって……」
「だが、気になることがある」
ビビアの話を切り上げるようにして、彼女は厳しい目で俺の方を見た。
「どうして私の事を知っていた? それに勇者とはなんだ?」
ふむ、さてどう答えたものか。
この神代回帰が何者の思惑で、誰が戻ってきているのか、いないのか。
そのあたりもまだ分からないことが多い。
俺は彼女の質問に、やや頭を巡らせるのであった。
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