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216.星の未来①

216.星の未来①




~ルギ視点~



「うっ」


「おっ、気づいたか。ルギ。どうだ? 身体の調子は?」


気が付いた僕に、アリアケ先生が声をかけた。


「……よくはありませんね」


文字通り、体がばらばらになりそうなほど痛い。


そして、心もボロボロだ。


「僕を……責めないんですか?」


「お前をか? なぜ?」


「な、なぜって……」


本当に疑問を浮かべた様子で、アリアケ先生が言ったので、僕は言葉に詰まってしまう。


自分の勝手な思いでみんなを裏切り、この世界を力で支配しようとした。


それによって、どれほどの被害が出たか……。


「まぁ、気にするな……、この戦いはこの星にとって必要な儀式だったんだ。……と言っても無理か。人命にこそ被害は出ていないが、それでも被害は甚大だろうからな」


「……」


その通りだ。そのことを思い、僕は更に心が重くなりそうになるが。


「ばっか! あんたまたそんなクヨクヨして! そういうところだゾ!」


「あいた!? ちょっとフィネ! そんな乱暴にっ……!」


ピシャリ! と背中をうたれて、僕は反射的に口を開く。


でも、彼女が当たり前のように目の前にいることに気づいて、また何だか唖然としてしまった。


「フィネ。君も無事で良かった……」


「本当だよ。さすがにあれは死にかけた。なははははは! 二度はないから勘弁してくれよな! てか、今度は反対に、あたしが困ってたら、あんたがあたしを必ず助けること! それでチャラ。だからクヨクヨするな!」


その言葉を聞いて、僕はスッと心が軽くなる、そして、


「分かりました。じゃあフィネ」


僕は反射的に頷くと同時に自然とその言葉が口をついて出た。


「結婚を前提にお付き合いしましょう」


一瞬、時が止まる。


「ってっ! へっ!?!?!? えええええええええええええええ?!?!?!」


一方の、フィネが素っ頓狂な声を上げた。


「君を守るなら、やはり一番傍にいないといけませんからね。そのことが、今回のことでよく分かりました。神になどなる必要はなかった。好きな人の傍に一緒にいること……種族なんか関係なしに、友達になって、恋人になって、隣に立つだけで良かった。そのことがよく分かったんです。だから……」


「だ、だから?」


「結婚しましょう。ああ、いえ。すぐに結婚は無理でしょうから、結婚を前提に付き合いましょう」


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」


「ああ、やっぱり嫌ですよね。すみません。僕なんかが……。やっぱり僕には生きてる資格が……」


「い、嫌じゃねーよ! むしろいいんだけど、心の準備ってもんがだなぁっ……! ていうか、知ってたけど重たいなぁ、ルギは! あたしくらいしか受け止められないんじゃね?」


「ごまかさないでください。地獄アビスでの告白は嘘だったんですか?」


「それとこれとは話が別なの! それにどうでもいいやつ相手に命かけないって。そこは分かっとけ!」


「分かりません。はっきりと言ってもらうまでは」


「邪魔くせー男! はぁ~……」


喧喧囂囂(けんけんごうごう)と言い争う。


それを見る先生の目は微笑んでいた。


と、そこに、


「痴話喧嘩もいいですけど、この状況はどうおさめるつもりなんですか、先生?」


「この神殿、そろそろ落下するんじゃありませんか? 脱出します? でもマリード市民もたくさんいらっしゃるようですわ。見捨てるのも忍びありませんし」


ソラとキュールネーが近寄って来て言った。


その通り。


いまや、主神がいなくなった空中神殿アースガルズは、その神性魔力を失い、徐々に高度を維持できなくなりつつあった。


神であるからこその神殿創造という奇跡が行えていた。


神の資格がなくなったいま、この空中神殿を維持することは不可能だ。


「くっ! 僕が何とか! 残った力で……」


「あ、あたしだって、なんでもするぜ!」


ルギとフィネが言った。


すると、またしてもそこに新たな声が響いた。


「はい、お待たせしました~♪ 困ったときのブリギッテお姉さんでーす」


「ブリギッテ様、どんどんノリが軽くなってますね」


「というか、教義に人格が近づいてきていますね。……言ってて複雑な気持ちになりますが」


それは三人の聖女たち。


ワイズ神を屠りし、神に勝る聖人たちの一行であった。




~アリアケ視点~


「で、どうする? 俺の力で無理やりなんとかしてもいいが」


「ああ、いえいえ。地獄アビスに人間を突入させて、無傷で回収するなんていう荒業をやってのけたのでしょう? 少しはお休みになってください。この星の未来はみんなで作って行くんでしょう?」


「まぁな。で、策があるのか?」


「もっちろんです♪」


ブリギッテはそう言うと、後ろを見た。


そこに現れたのは、


「ワイズ神?」


「そうだ。神核が戻ったのでな。いちおう動ける。ピノ(もう一人の私)もご苦労だったな。ルギも、な。此度の聖戦、みな大儀であった」


「あんたもな、ワイズ」


「……お前にそう呼び捨てにされるのは、なんだか嫌ではないな。ふむ、特別に許そう」


プイっと目線を逸らしながら言う。


「ん? 今、何か変な波動を感知しましたよ?」


「気のせいだ。大聖女よ。話を続けよ」


ワイズ神の督促に、


「そうですね。今は一刻を争う。策とは一体なんなのですか? 時間はもうあまり残されていませんよ」


沈黙していたピノが厳しい表情で言った。


彼女の言う通り、空中神殿の落下はすぐに始まる。そのことで確実に訪れるのは膨大な信徒たちの死という史上まれにみる大惨事だ。


だが、俺には何となくワイズ神の考えていることが分かった。


それはブリギッテと共に、この場に現れたことからも間違いない。


「第3の選択か」


その言葉に、ワイズ神とブリギッテは深く頷いた。


ワイズ神が口を開く。


「第1の可能性。新たな神を誕生させ、人を霊長の主とし、他種族を亜種霊長として扱う。これを力によって統治し、次の星の危機へ備える。これが最良と考えた。その可能性を探求したのが私だ」


次にピノが口を開いた。


「第2の可能性。全ての知的生命体を分け隔てなく霊長として扱い、すべての種族が結束し友情をはぐくむ。その絆により星の未来を紡ぐ。新しい神を生み出す必要もない」


「ただし、それは非常に難易度の高い未来だ。ヒトの意識を何百、何千年かけて変えていかねばなるまい」


ピノの言葉にワイズ神が補足する。


すると、ローレライが口を開いた。


「待ってください。それが第2の選択だとすれば、さっきアリアケ様のおっしゃった第3の選択が何か分かりません」


「リズレットの娘ちゃんだけのことはあって、しっかりしてますね♪」


「もう大人ですので」


ブリギッテは微笑んでから、口調を変えて厳かに告げる。


「第3の可能性。ブリギッテ教を廃止する」


その言葉に、ローレライが目を見開くと、たちまち喜色を浮かべた。


「じゃ、じゃあ。ワイズ教を国教に戻す、ということですか!? やりました! ラッキーです! これで大教皇なんかにならずにすみっ……!」


「また、ワイズ教も廃止する」


「はえ”」


ワイズ神の宣言に、ローレライの濁った声が響いた。


アリシアが引き取るように口を開く。


ブリギッテ教序列三位の大聖女であり、この世界で唯一蘇生魔術が使える奇跡の代行者としての使命として告げる。


「ブリギッテ教とワイズ教を『習合』します」


(続きます)

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