十二幕 囚われの『月』
章関係は上手くいったみたいです、まぁそんなに意味はないですがね
「おはよう」
日が昇り始めた朝と昼の間くらいの時間帯、それなりの爽快感と多大な眠気と共に起き上がる。
朝は辛い、いつか命令なしに動く軍隊を作り上げたいものね……まぁ無理でしょうけど。
「おはよう! 目は覚めた?」
「まだ眠いわ……朝は苦手よ」
別に夜行性ってわけじゃないけど……?
「あはは! じゃあまだ寝てなよ、もうすぐで全部終わるから!」
???
「誰!」
私の私室には私が許可した者以外入れないはず! 他人の声なんかするはずがない!
「天より眺めし月よ! 彼の者の姿を示し惑わし給え!」
「遅いよ」
「……え?」
部屋のどこかに居る侵入者に『月』を浴びせようとしたら急に魔力が抜けてしまった。
「あのね、ルナが寝てる間にどれだけ時間があったと思う? 悪いけど先に『太陽』をかけさせてもらったよ」
! いつから入られていた? 昨日? ええそうね昨日以外にないでしょうね。
基本的にこの私室及び砦には私の魔術がかかってる、でも私自身が離れちゃったら魔術で破ることは可能。
でも『月』を使ってかけた魔術だから普通は破れないのだけど……。
「……まさか『太陽』が直接くるなんてね、まったく考えてなかったわ」
振り返るとそこには私よりも少し背が高いくらいの見覚えのない少年が立っていた。
髪も目も金色で、活発な少年を彷彿とさせる髪型をしている。
見た目に大きな特徴もないし……人間かしら?
それにしても厄介ね……。
『役』を使ってかけた魔術は『役』にしか破れない、だからって大将が直接乗り込んでくるかしら普通。
しかも入られただけじゃなくて魔術までかけられてしまった。
同じ『役』を持つ者同士なら、先に魔術を掛けた方が圧倒的に有利のなる、『役』を使った術ならなおさらよ……しかも何を使われたかすら分からないならもう負けたも同然。
「それで? わざわざ『太陽』が出てきて何をするつもりなのかしら? 私を殺すのかしら?」
殺しに来たなら問題ない、私は何度でも復活できるわ。
「いやいや僕にそんなつもりはないよ、ただ僕はルナを攫いにきただけ」
なるほど、誘拐ね
「そう……なら少し待ってくれるかしら? 寝巻で行くのは恥ずかしいわ」
あと少し……もうちょっと時間があれば……。
「いいよ」
?
……こんな見え透いた時間稼ぎに乗るとか何を考えているのかしら?
「でもルナに必要なの? 魔術で汚れないようにしてるし、そもそも人形だよね?」
本当なら着替えは必要のない体だ、でも……
「それは習慣としか言えないわ、だから必要なのよ」
仕方ないじゃない。
「これから法国で生活してもらうから必要なものは全部持って行ってね」
『太陽』の考えてることが読めない。
普通に誘拐するなら待つ必要もない、なんで時間を与えるのかしら? まぁおかげで逃げる算段が付きそうだけど。
「法国に? 分かったわ」
絶対に行きたくない。
「準備できたわ」
「そう? じゃあ行こうか」
『太陽』の目の前ではあったけど出立の準備をしながら色々仕込ませてもらった、足掻けるだけ足掻いてやるわ。
「……ねぇ? どうやって法国まで行くのかしら? まさか歩いてじゃないわよね?」
「いやいやそんな面倒はかけないよ、外に転移魔術師を待たせてる」
「そう……分かったわ」
つけ入る隙はそこにしかないでしょうね。
先手を好きなだけ打たれてしまった以上『太陽』をどうこうすることはできないだろう。
でも太陽以外は違う、『役』無しの術師ならどれだけ先手を打たれていても完全に支配して見せるわ。
魔術を封印した程度で私を無力化したつもりかしら? 『惑わしの月』はそんなに甘くないわよ。
いかに『活力の太陽』といえど人間相手なら、対意思ある生物特化の『惑わし月』には敵わないでしょう。
「質問はもういい?」
「ええ、問題ないわ」
「それじゃあこっちに来てね」
そういい私を部屋から連れ出す。
さて……何人かしら、ここから法国まではそれなりに距離がある、四人は術者が居ないと行けないはず。
そんなことを考えながら『太陽』と共に廊下に出る、しかしそこに居た人物は私の予想を遥かに超える人物だった。
「あらソル、もういいの?」
「うん、大丈夫だよ『女教皇』サマ」
!
法国のトップ二人の内の一人の『予言の女教皇』、すらりと伸びた背丈に合わせるように流れるような金髪の長髪を持ったエルフ、彼女の碧眼は未来を見通すと言われている。
本来のエルフは定住を嫌って、世界を旅して回っている長命種なのだけど、『予言の女教皇』は法国に長く居続けていると、その反動か法国以外には殆ど姿を見せないと聞いていたのに……
どうしてここにいるのよ!
そんな驚きを察してか『太陽』、ソルと呼ばれた少年がケタケタと笑った。
「かの有名な『月』を攫うんだからそれ相応の準備は必要でしょ? そう簡単には逃がさないよ」
あぁもう……完全に捕まってしまったわ。
魔術無しで『女教皇』を惑わすのは不可能、走って逃げるにも『女教皇』の力で直ぐに捕まるだろう。
「有名なんかじゃないわ……私はただ獣どもを駆除してただけよ」
別に法国と敵対していたわけじゃない、なのにどうして……
「西の森に不可解な同族殺しを大量に作り出し、その後は『悪魔』と手を組んで法国と帝国を敵に回した貴女が有名じゃなったら誰が有名なの? それに魔族との戦争の時には味方を洗脳して死を恐れない軍勢を作り上げたり……放っておいたら国内で内乱を起こされる可能性もあるんだから先に手を打つのは当然でしょうに」
「私はあの獣ども以外は興味がない! ……『悪魔』と手を組んだのだって獣を殲滅するためよ、法国とも帝国とも戦う気はない!」
法国も帝国も興味ない! ついでにいうなら『悪魔』もどうでもいい! 私はただ獣どもを殲滅できればそれでいいのよ! 戦争がしたいなら勝手にしてるといいわ! 私はそれに乗じて獣どもを殺すだけ!
それを邪魔さえしなければ敵だろうと味方だろうと好きにしてればいいわ! 勝手に殺しあってて頂戴!
「貴女はそうでも周りはそう思っていないってことよ、それに貴女の影響で獣人が法国に大量に流れ込んできてるから、獣人の敵なら法国の敵と言えるわ、我々法国は助けを求める全ての者の味方だからね」
知らない! 知らない! 知らない!
「全部! 全部獣どものせいよ! あいつらが居なければ!」
私の全てを賭したとしても必ず殺してやる! 絶対にニガサナイ!
「ねぇ? あいつらって誰の事?」
「……!」
横で聞いていた『太陽』が何気なく質問をしてきた。
あぁ……ダメよ、それはダメなのよ。
冷静に……冷静にならないと……つい熱くなって言わなくていいことまで言っちゃったわ。
「……何でもないわ、忘れて頂戴」
「え……えっと~本当に?」
「……本当よ」
………………。
……………………。
『月』『太陽』『女教皇』、それぞれ『役』を持った三人が無言で見つめあう。
何故か『太陽』は動揺してオロオロと『女教皇』を見てるし、『女教皇』は何か考えながら私を見つめてくる。
何かしらこの「爆弾踏んじゃってどうすればいいかお互い分からない」みたいな空気は。
………………。
……………………。
気まずい……でも何を言えばいいか分からない。
誰か何か言わないかしら? 特に『太陽』、貴方さっきまでの明るい性格は何処に行ったのかしら、そんなに不安そうな顔しないで頂戴。
………………。
……………………。
「……そう、貴女もまた救いを必要とする者だったってことね」
静寂を最初に破ったのは『女教皇』だった。
「そうね……かの有名な『惑わしの月』だったとしても、辛い過去を背負った一人の人間……人形? だったと分かった以上法国として貴女に力を貸したいと思うの。だからもしこのまま貴女が大人しく捕まってくれるなら、貴女を救う手助けをするわ」
……何を分かったようなことを言うのかしらこの『女教皇』は、法国のトップだからって自信過剰じゃないかしら。
「だから法国に居る間は獣人に攻撃しないでくれないかしら? そうすれば私達も「ふざけないで!」」
獣人を攻撃しないでですって? 無理に決まってるじゃない。
「貴女じゃ私は救えないわ、私を救えるのは私だけ、同じ『役』持ちに上から目線で語るのは傲慢じゃないかしら? 貴女の力は借りないし助けも要らない! 攫うなら勝手に攫うといいわ! そんなものじゃ私は変わらない! 見てなさい! いつか必ず法国の中で盛大に獣の虐殺を起こして見せるわ! 後悔させてあげる……ふふふ」
そうよ……せっかく法国の内部に入るんだもの、法国に逃げ込んだ獣どもを掃滅するにはうってつけじゃない。
そのための力は手に入れた、私は一人でも問題ないわ。
「……させると思うかしら?」
「してみせるわ、必ずね」
…………。
………………。
さっきの沈黙とはうって変わってお互いを睨みつけたまま時間が過ぎる。
そんな中何故か『太陽』は笑っていた。
「そんなにピリピリしないでさ、とりあえず法国に移動しちゃわない? どうせルナは法国の人間に攻撃できないんだし」
「勝手にしなさい、油断しないことね」
「そうね、邪魔が入らないうちに移動しちゃいましょうか……我らが国へ! リターン(Return・帰還)」
行ってみようじゃないの、さて……どうなるかしらね。
アクセス解析を見ると毎回十人以上の人が開いてくださってるみたいですね、本当にありがとうございます。
こんなの書いたな~……やっべ忘れてた、計画立てて書いていかないとこういうことになりますので、皆さん気を付けてネ。




