帰郷
「九重さんだけが出入りできたんだろうな…マチでただ一人の『本物』だったから。
きっと外で、何か理由をつけて協力者を連れてきたり、複製したりと上手いことやっていたんだろう。」
森を抜ける頃、お通夜のようにしんとしている車内を元気づけるためか、佐野が明るめに声をあげた。
「爺さんが死んで、自分たちの存在が危うくなったゆえの暴走ってとこだな…いやぁー、危なかったなぁ、ホント。」
確かに、今思い返しても間一髪だったといえる。
もしあの時拳銃を奪えなければ…こうして3人車に乗っていられたかどうか。
「まったく、三の字先輩のおかげですよ。助かりました。」
「へ?俺何かしたか?」
「何かって…またまた~。鉱山に忍び込んでくれたから何かヤバイって気づけたし…二俣と富樫さんが言い争っている時だって、俺を隠してくれたでしょ?富樫さんの死角に入ったから、思い切って飛びかかれたんですよ。」
伊瀬は後部座席を振り返って、佐野を褒めた…が、当の本人はバツの悪そうな顔をしている。
「え、まぁ、隠れたな…上手い具合に…考えてなかったけど。」
「ええ?!ちょ…じゃ、え、だって、あの時頷いてたじゃないですか!あれ、まかせとけみたいな顔だったでしょ?!」
「ああ、いや、二俣さんを止めろって言ってるのかと思ってた。」
いやー、悪い悪いとおっさんはケタケタ笑う。
「…………そりゃないっすよ…。」
機転でも計算でもなく、たまたま偶然かよっ!!
道理であの時の佐野は突っ立っていたはずである。
いきなりアクション起こされて反応できなかったのだろう。あーあ、目と目で通じ合うなんて歌の中だけだよ、全く。
「ははは、いいじゃないか。結果オーライってやつだ、な?」
「まー、オーライだったからよかったですけどね。へタすりゃ俺死んでましたよ!」
「オレ、協力した方がよかったんですかねぇ…。」
口を固く結んでハンドルを握っていた二俣が、ぽつりと呟いた。
「あのままだとあの人達消えてしまうんでしょう?さっきみたいに…。」
「おいおい、半端な同情だけで動くと痛い目見るぞ。お前、腕無くなるところだったんだからな。」
「そうですけど…。」
ぎょっとした伊瀬が諌めるが、二俣の表情はさえない。
富樫の言葉が引っかかっているのだろう。
協力とはいえホイホイ体を差し出せるわけもなく、だから余計にあの住人達のことが気になってしまうのだ。
後部座席から佐野が顔を出し、口をはさんだ。
「二俣さんが協力しても、やっぱり一時しのぎだよ。
それに、九重って人はものすごい執着するタイプの様だから、研究を続けるための自分のコピーぐらい確実に残しているだろう。いずれ『崩れ』なくなる技術もできるんじゃないか?」
「…できるでしょうか?」
「できるだろ。マチ丸ごとコピーするような奴だぜ、それですら普通ありえないんだから…きっとできるだろ。
へたしたら、マチの境界まで超えてもピンピンしているようになるかもしれない。そうなったら、完全な復元技術も俺たちの世界に知られるようになって…。」
そこまで言って伊瀬は眉をしかめた。どう考えても厄介なことしか起こらない気がする。
「そういや、昼まだだったな。もう夕方じゃないか…富樫さんとこで大分時間喰ったなぁ。」
佐野が半ば強引に話を変えた。
「帰りに道の駅でソフト大福買いましょう。新種でたんじゃなかったっけ?」
「そのまえに、靴、ですね。」
車は上山町を抜け、少しスピードを上げて名寄へと向かう。
伊瀬はふと足の裏を見た。土やじゃりに混じって、少し赤い粉がついていた。
お読みくださりありがとうございます。
ノスタルジーを目指したはずなのに…
文体も今回は、細かく詳しくを目指しましたが、後半で戻っちゃいました。無念。
かなり読みにくかったと思います。ここまで見てくださった方、本当にありがとう。
以下、長い反省会。
マチの真偽で長くなったため、後半・背景・女性キャラを削りました。またか。
端折ったため意味不明な個所を捕捉しますと、
●九重の写真。寄贈する目的の他に、コピー人間成功した~という自分にしかわからない記念写真的な意味もありました。
故に、二俣は『最初にコピーされた人間』です。あの子供は二俣コピー
●赤い粉はある加工で『分子配列』を完全に再現できます
●二俣は野宿する気満々でした。(だからテントとガスボンベなど入れてた)
●マチには人間が少しだけいます。しかし訳ありのためマチ外には出られません。富樫も人間です。
『ドライブ』『スタンス』を半分削れば構成的によかったかも…時間があれば訂正ですね。




