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十一話 増えるヒロイン



11話『笑ってくれる誰かがいるだけで、人は強くなれるらしい』


 新しい仲間


街道を歩いていた


空は青い


風が吹く


草が揺れる


相変わらず雑な景色だった


「この世界、

 背景描写ずっと同じだな……」


海斗がぼそりと呟く


マリが首を傾げた


「そうですか?」


「いやもっとこう、

 森とか川とか村とかないの?」


「ありましたよ?」


「え?」


ガイムが頷く


「昨日通っただろ」


「また昨日!?」


海斗は頭を抱える


また時間経過だけ進んでいたらしい


だが景色は変わっていない


理由は簡単だった


海斗が道中描写をまともに書かなかったからだ


「うわぁ……

 俺、移動全部すっ飛ばしてたな……」


当時の海斗は、

移動シーンを書くのが苦手だった


会話を書く


戦闘を書く


でもその間にある、


“旅”


が書けなかった


だから、


『数日後――』


で済ませていた


その結果、

この世界では


“旅の記憶だけ存在する”


という気持ち悪い状態になっている


「ホラーなんだよな普通に……」


海斗が呟いたその時だった


「カイトさん!」


後ろから声がした


「ん?」


振り返る


そこには知らない少女が立っていた


金髪


長い髪


白いローブ



整った顔立ち


いかにもヒロインですみたいな見た目


「…………」


海斗が固まる


「誰?」


少女がショックを受けた顔になる


「ひどいです!」


「いや本当に誰!?」


少女は泣きそうになりながら海斗を見る


「昨日、

 一緒に旅したじゃないですか!」


「昨日増えすぎだろこの世界!!」


海斗が絶叫する


ガイムが不思議そうに首を傾げた


「何言ってんだカイト」


「いやお前ら普通に受け入れてるけど、

 知らない女いるからな!?」


マリも微笑んでいた


「ちゃんと自己紹介もしましたよ?」


「俺だけ記憶ないの!?」


海斗の脳が混乱する


だがその時、


ある記憶が蘇った


深夜


スマホ


PV4


ブックマーク0


感想0


海斗は布団の中で天井を見ていた


「……やっぱ女キャラ増やすか」


当時、

海斗は焦っていた


数字が欲しかった


読まれたかった


ランキングに載りたかった


だから考えた


人気作にあるもの


それは、


“可愛いヒロイン”


だった


「うわぁぁぁ……」


海斗が頭を抱える


思い出した


ノリで追加したのだ


設定も考えずに


「増やせばなんとかなるだろ」


その程度の気持ちで


海斗は少女を見つめる


白いローブ


魔法使い系


優しい性格


距離感近め


「マリと被ってる……」


「え?」


マリが反応する


海斗はさらに気づく


「口調も似てる!!」


「そんなことないですよぉ〜」


少女が笑う


海斗の顔が引きつる


「その喋り方もマリ系統なんだよ!!」


『キャラ差別化が間に合わなかった』


「最低だろ俺!!」


海斗は頭を抱える


当時の自分は、

キャラを増やすことしか考えていなかった


だから、


“どう違うキャラにするか”


を考えていなかった


結果、


全員ちょっと似る


すると少女が海斗へ近づいてくる


「でも、

 私はカイトさんに助けてもらいましたから!」


「え?」


少女が頬を赤く染める


「わたし、

 カイトさんのこと信じてます」


「距離近っ!?」


突然だった


視界に文字が浮かぶ


【好感度上昇】


「早ぇよ!!」


『読者人気を狙った』


「雑なんだよ手法が!!」


海斗は後退する


だが少女はさらに距離を詰めてきた


「カイトさんって、

 本当はすごく優しいですよね」


「いやまだまともに会話してないぞ!?」


マリが頬を膨らませる


「むぅ……」


「え?」


「最近カイトさん、

 その子ばっかり見てます」


「急にラブコメ始まった!?」


ガイムが腕を組みながら頷く


「修羅場ってやつだな」


「お前そのポジションだったっけ!?」


空気がおかしかった


数話前まで追放されていたはずなのに、

今は完全にハーレムラブコメ空間になっている


だが海斗には理由が分かっていた


“その方が人気出そう”


当時の自分がそう思ったからだ


「うわぁ……

 生々しい……」


海斗が遠い目をする


その時だった


少女が突然ふらついた


「きゃっ」


「あぶなっ」


海斗が咄嗟に支える


少女が顔を真っ赤にする


「カ、カイトさん……」


また視界に文字が浮かぶ


【好感度大幅上昇】


「だから早ぇって!!」


『主人公補正だった』


「便利設定に逃げるな!!」


その時、


頭の中でナレーションが静かに響く


『笑ってくれる誰かがいるだけで、人は強くなれるらしい』


海斗は少しだけ黙った


そのタイトルだけは、

今までと少し違った


当時の自分が、

珍しく本気で考えたタイトルだったからだ


読まれなかった


PVも増えなかった


でも、


“こういう話を書きたかった”


という気持ちだけは覚えていた


「……なんかやめろよ」


海斗が小さく呟く


「急にエモい空気出すの」


『でもPVは増えなかった』


「現実突きつけんな!!」

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