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せっかく伊勢神宮についたのに、謎の炎につつまれてるんだが

俺たちは道中、盗賊や獣に襲われながらも、どうにかごんべに頑張ってもらって、

伊勢神宮に到着した。

 正確には伊勢神宮だと思われる、炎が燃え盛る建物に到着したのだが…。

これは火事なんて生易しいもんじゃないぞ。建物はもちろん周りの空気自体が燃えている。

そして、炎が渦を巻いて巨大な火柱を上げ続けている。


「これは…どうしてこんなことに」

ミコがつぶやく。さすがにこの状況は想定外だったらしい。


「どう考えても、普通の火事じゃないな。やっぱり妖の仕業か?」

そうじゃなかったら、何なのかという話だ。木材を燃料にしてるにしては火の勢いが強すぎるし、周囲は無風なのに火柱が上がってるんだから。


「妖の仕業だとは思いますが…。熱田が天叢雲剣に守られていたように、伊勢神宮も八咫鏡によって守られているはずなのです。この規模の妖が侵入するなどあり得ないことです」


とはいえ、熱田も百鬼夜行の侵入を許したんだ。同じやつの犯行なら伊勢神宮の守りを突破できても、おかしくはないだろう。


「それに…何か妙ですね。この炎からは瘴気が感じ取れません。

むしろ神気のような神聖な力が働いているような…」


そのとき背後から老人の声が聞こえた

「やれやれ、こんなことになるとはの。地上の者に迷惑をかけたくなかったのじゃが」

「はあっ!」

爺さんが気合いを込めると、伊勢神宮を覆っていた炎が消し飛ぶ

一方で建物自体には一切ダメージを与えていない


俺とミコは驚愕した。

「な、なんだ。あんた!?気合いで猛火を吹き飛ばすとか

あんた人間か!?」

まくしたてる俺に対し、爺さんは極めて落ち着いた様子でゆっくり話す

「そうじゃなあ。人間ではないのう…。」

「よいよい。どちらにせよ人間の協力者が必要じゃからの。ここでお主らとあったのも縁というものじゃ。」


「あんた、何言ってんだ?」

どうも爺さんの話は要領を得ない

「あの…、安信さん。このお方から神を降ろしたときに感じるのと同じ、神気を感じます。

もしかして、この方は神様なのでは?」

「は!?神様!?」


いやまあ、熱田ではミコが神様を降ろしてたって話だし、神自体はこの世界に実在するのかも知れんが、そうポンポン遭遇するもんなのか?


「まあ一応、神とは呼ばれておるのう。本業は仙人なんじゃがなあ」

仙人で神様?結局こいつは何なんだ?


「えーと…そうだな。何というか説明が必要だ。伊勢神宮にやってきたら、

いきなり燃え落ちてて、しかも炎を爺さんが吹き飛ばしたんじゃあ、俺たちにしたらわけがわからん」


「ひょひょひょ。まあそうじゃろうな」


爺さんは穏やかな笑みを浮かべたままだ


「教える気はないってのか?」

爺さんが教えないなら自分で調べるしかないんだろうが…。

正直、風や燃料に関係なく火勢が強すぎたし、まともな火事の類ではないと思う。

恐らくファンタジー世界特有の不思議現象のはずだ。


だとすれば神で仙人を名乗るこの爺さんに聞かなければ、何が起こったのかはわからないだろう。


「教えぬとは言っておらんよ。お主らは面白そうじゃし、それに…この国の平和を守るためには現地人の協力が必要じゃてな」

「ちょっと待てよ!国の平和ってなんだ?穏やかじゃないぞ」


この時代の日本は織田信長が大勢力となったことで、戦国時代を乗り越え、やっと平和を取り戻しつつあった。

 本能寺の変で台無しになったとはいえ、ここからは秀吉が残存勢力を叩きのめして本当の平和に向かうはずだ。

もっともそのためには、あといくつか大きな戦争を乗り越える必要があるが…


「実は儂の弟子が修行をさぼって、地上に降り立ってしまったのじゃよ」


この爺さんは仙人で神様だっていうんだから、弟子も仙人・神様の卵なんだろうか。

そんなやつが地上に逃げ出したなら確かに大事件だ。


「あんたの弟子が?いやそもそもアンタ誰なんだ?」


神様に詳しいわけじゃないから、名前を聞いてもわからんかも知れんが…。

せめて、どこの誰くらいの肩書きは欲しいな。


「わしは天界では太上老君と呼ばれておるのう。人間だった頃は老子

と呼ばれていたがのう」


老子というのは道教の始祖?らしいが生まれた時代からどんな人生を送ったのかも

謎に包まれている部分が多く、実在したかも怪しいと言われてる人物だ。


色んな人が老子の名を継いでいったんじゃないかという話もあるくらいだ。


道教についても俺はよく知らないが、イメージとしては仙術を極めて、不老不死になる技術らしい。もちろん元の地球では誰もそんなことはできなかったけど…ここでは可能なのか。


「太上老君といえば、世界で最初に人から神仙となった方で、

道教の理想として神格化されていますわ」


「し、しかし神が人の体も借りず降臨することができるはずありません!」


「わしは元々人間じゃてな。その辺はルーズなんじゃよ」


ルーズで済む問題なんだろうか…。とにかくこの爺さんは、元人間の偉い神様ってことか

その神様が逃げ出した弟子を探しに地上に降りてきた…?


「まてよ、じゃあ結局伊勢神宮が燃えてたのはなんだったんだ?」

「あれは弟子のいたずらじゃな。逃げるときに八卦炉に大量に燃料をいれおって、

そのカケラがこの建物に燃え移ったのじゃ」


「八卦炉ってのは何だ?」


「八卦炉は人が神仙になるための、”仙丹”を練る機械じゃ」


話が壮大過ぎて、ついていけないが…。神だか仙人だかになるための薬?

を作るための機械?があるってことか。


「なるほど…。まあ伊勢神宮が燃えてた理由はわかった」


「神気を感じたのも、燃えているのが八卦炉のかけらだったからなんですね」


神様の素になる薬を作る機械なら神気とやらを感じてもおかしくないだろう。


「さて、そこで物は相談なんじゃが」


そこまで話したところで、爺さんがすかさず切り出してくる


「実はお主たちにワシの弟子を捕まえるのを手伝ってほしいんじゃ」


神で仙人の爺さんはとんでもないこと言いだした。


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