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本願寺がマジやべえんだけど

1536年 3月 信孝22歳 信秀26歳

【三河国 合歓木城 評定の間】


~本願寺の10年~


「待て待て待て待て!!俺が悪かった!悪いが、ここ何年かの本願寺…いや、近隣の情勢を詳しく説明してくれるか?」


「動物を使役するとか、未来の武器の夢とか特殊っぽい能力を持ってるやつの話は特に詳しく頼む」


信秀達には怪しまれるだろうが、この際しょうがない。こうも大きく歴史が異なってるんじゃ、情報を共有できてないと戦いようがないからね。


「赤子か子供に教えるように、かみ砕いて、当然知ってるだろうと思うことでも細かく話してくれ。」


当然、3人は怪訝な顔をする。俺のことをあまり知らない信秀・半蔵はともかく、康孝は大きく顔を歪めている。


「なるほど…よろしいでしょう。ですが、後で聞かせてもらうことができましたな」


康孝は諦めたような顔になって話を進めることにしたようだ。少なくとも、俺が康孝の知ってる信孝じゃないことはばれたかも知れない。それでも付いてきてくれるなら嬉しいけど。


「しかし、何もかもわかんねえなら、何から話しゃいいんだ?」


信秀の質問に対し、俺はちょっと考えて答える


「えーと、そうだな…。じゃあまず四神の焼き印ってのは何なんだ?それに本願寺証如の能力についてもだ。」


話を聞く限り、この世界と俺が知ってる戦国時代の違いは”妙な能力を持った奴がいる”ことだ。信秀は動物を使役するし、証如ってやつは”未来の武器を夢に見る”らしい。


四神の焼き印ってぐらいだから、他にも二人いるんだろう。俺が戦っていく上で絶対に脅威になる。最大限の警戒が必要だ。


それから3人の話を聞いた。それによると、15年前に信秀や証如は何者かにさらわれ体に四神の焼き印を押されたらしい。(信秀は白虎、証如は朱雀)


信秀は元々、動物とのコミュニケーションが得意だったようだが、この時からはっきりと動物の意思が感じ取れるようになったらしい。


また馬以外の動物に信秀の意思を伝え使役することも、容易になったようだ。


一方で同時期に本願寺証如も何者かにさらわれており、”未来の武器”の夢を見るようになったという。青龍と玄武については、調べてはいるが今のところ不明のようだ。


攫われたときに”何をされたか”については全く不明だ。ただ、気絶してる人間の能力を目覚めさせるなんて、未来の技術でも聞いたことがない。


まさか……俺の知らないオーバーテクノロジーを知る何者かが、この世界に関わっているんだろうか。


3人の話を照合する限り、15年前の時点ではまだ、歴史はおおむね俺の知ってる通りに流れていた。問題はここからだ。”能力持ち”が現れたことで、歴史は変わり始めた。


次の分岐点となる、10年前の聖王の戦いまでに、本願寺は種子島銃を開発しており、その戦いで信秀と仲間の動物たちはひどい目にあったらしい。


「しかし、そこまで追い詰められてどうやって脱出したんだ?」


信秀に従う動物は最後の一頭だけというところまで、追い込まれていたらしい。


「虎鉄が殺されてからは、全く記憶がねえ。だが俺が目覚めたときには本願寺の兵は全員倒れ、証如と蓮淳は消えていた。何が起こったのかはわからねえ」


そこまで追い詰められてたのなら、本願寺が勝手に退却したってことはないよね。けど、だったらいったら何があったのか?漫画的にいったら信秀が覚醒して、意識のないまま本願寺を追い散らしたとか…?


いやいや、そんな都合良い展開はないかな。でもだったらどうして…。


「ともかく、その戦いで本願寺が火を放ったこと、本願寺を追い散らしたこと、そして証如達が何故かいなくなったことが、俺の起こした奇跡として聖王教に広まったんだ」


「聖王の日輪落としですな。」


信秀の言葉に康孝が補足する。


「そうだ。山火事は俺がお天道様を落としたことにされ、証如達が消えたのは俺が法力を使ったせいにされた。考えてみりゃ、そもそも俺は奇跡なんて起こしてねえじゃねえか。」


聖王の戦いでの奇跡が捏造?いや、証如と蓮淳以外を皆殺しにしたのは確かなんだ。信秀は強いのは間違いないだろう。問題は、どうやって倒したか自覚してないことだね。


「信秀が聖王になった経緯はわかった。それでこの十年、本願寺と聖王教はどんな動きをしたんだ?」


ここが重要だ。俺の知ってる戦国時代と、どのくらい勢力図が違ってるかを確認しておかないといけない。それによってこれからの動きが変わってくるからだ。


「この10年間で、本願寺は畿内全体に勢力を広げた。山城・河内・摂津・和泉・大和・播磨・丹波・丹後・但馬・若狭・近江・伊賀・紀伊・伊勢・志摩は完全に征服してるぜ」


畿内全体かよ。いや、いち早く種子島を作り出してるんだから、当然と言えば当然か。それにしても予想より進行が早いね。


勢力のでかさとしては、もうすでに日本一だし、京都を占領しているなら、事実上の天下人と言えるかも知れない。だがだとすると、重大な疑問が起こる。


「ちょっと待ってよ。確か聖王教は強い者、正確には奇跡を起こす者を聖王とするんでしょ?」


「種子島なんて武器を作り出し、さらには連発できる銃を作り、10年のうちに畿内を統一したなんて」


「無茶苦茶強いし、だれがどう考えても奇跡じゃないか!!」


「どうして聖王教は本願寺に降伏しないの?」


この疑問を解決しておかないと、信秀は裏切らないという確信が揺らいでしまう。だって現状、どう考えても本願寺より俺の方が弱いし、奇跡のグレードも下なんだから。


「ああ、そいつを教えておかなきゃいけなかったか。まあ理由は簡単だぜ。何せ本願寺の悪名は誰もが知るところだからな。」


悪名だって?本願寺は民衆から嫌われてるから従わないってことか?とはいえ、門徒は本願寺に忠実なはずだ。門徒以外の農民に嫌われてるってことかな?


「やつらは門徒以外の人間は、武士だろうが農民だろうが皆殺しにする。まあ天皇家にだけは手を出さなかったが、足利一門は山城統一の過程で皆殺しにされた」


「ちょ、ちょっと待って!室町幕府はもう存在しないの!?」


聞き捨てならない話を言われたので、俺は信秀の説明を遮った。


「ん?そりゃそうだろ。5年位前のことじゃねえか?一時は近江の朽木に臨時幕府を開いてたようだが、それも叩き潰されたみてえだな」


そうか…。幕府がもうないってんじゃ。世の中が乱れるわけだ。


「でよう、やつら戦争の度に敵兵を皆殺しにするもんだから、畿内の人口は今や10年前の1/10ほどになってるという噂だぜ」


「いやいやいやいや!待て待て!そんなに人口を減らしたら、田んぼを作るどころじゃなくなるだろ!石高が激減したんじゃないか?」


「確かに石高は激減したが…武器を作る過程で鉄鋼業が発達した結果、農具も相当に改善されたみたいでな。石高としては10年前の半分くらいはあるみたいだぜ」


「加えて門徒の三男・四男、あるいは本願寺の僧を還俗させて農地に向かわせるなど、石高確保にかなり尽力してるらしいな」


「後は漏れても脅威になりにくいような、新兵器や農具とかを売って得た金で他の地域から兵糧をかき集めてるみたいだぜ」


そんなに苦労するくらいなら、無駄に殺さなきゃいいのに……。


「そんなもんだから、畿内は制覇できても、それ以上遠くを攻めるのは兵站の問題で難しいみてえだ。」


「ただ、これは新火薬と連発できる銃ができる前の話だぜ。そいつらを使って、戦を短期間で終わらせられんなら必要な兵糧が減る分、もうちょっと遠くまで攻められるようになるかもな」


そうか確かにマシンガンなんかがあれば、一瞬で皆殺しにして決着が着くだろう。極端な話、行って帰るだけの兵糧で済むかも知れない。


だとすれば尾張・三河は危ないな。向こうは伊勢を統一してるって話だし。ちょっと足を延ばせば尾張に届くだろう。


「頭が痛い話だが……まあ聖王教が本願寺に従えない理由は理解できたよ。」


これなら信秀が裏切る心配は無さそうだ。この先、本願寺と戦っていく以上、ベースとなる尾張が裏切らないのは重要だからね。


「悪戯に死人を増やし憎しみの連鎖を生み出す、やつらのやり口は天下泰平を目指すものじゃねえ。それよりは、あんたが見せた可能性にかけてえと思ったのさ」


神妙な面持ちでそう呟いた信秀に対し、俺は笑顔で答えた。


「なるほどな…。わかった。これから厳しい戦いになるだろうが、信頼してるよ」


しかしマシンガンか。いくら筋肉の制御を開放できても、どう考えても弓や槍や投石じゃ敵わないよな。


武器を改良するたって、種子島や黒色火薬を作るだけでも4,5年はかかる。それまで本願寺が攻めてこないってことはないだろう。まして相手は無煙火薬にマシンガンだからな。手りゅう弾とかもあるかも知れないし…。


「仕方ない……。あれをやるしかないか。多分、そうなんだ。あれはそういうことなんだろう」


俺は苦虫をかみつぶしたような表情で呟いた。康孝は俺の表情を見て期待と不安を合わせたような表情をしている。


「あれ…ですか?何のことでしょう」


「修行だよ。俺が、井田野の戦いで見せた奇跡をさらに強化するためのね」


「死ぬ恐れがあるから、できればやりたくないんだけど」


俺は生き残るために、死を乗り越える覚悟を決めたのだった。


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