第78話 オカ研メンバー
村岡覚醒の翌日
村岡自殺の一報を受けたオカ研の面々は招集も掛かっていないのにも拘わらずオカ研副部長 伊達信夫の家に集まっていた。
話題は勿論、村岡の自殺についてだ。
あの村岡が自殺するなんて信じられん…いや…信じてたまるか!
それがオカ研メンバー
伊達信夫
春川真司
加納ミサト
秋田ナミ
指原健二郎
全員の見解であった。
指原「あの名所で首を吊っていたとの事だけど、何かおかしくないでしょうか」
事情を知らない連中なら「あそこで首を吊っていたなら自殺に間違いない」と信じてしまうところだろうが、オカ研のメンバーは新入部員の指原を除いた4人は村岡と言う人物がどう言う男かと言うのは知っている。
その4人の意見が一致しているとあって、当然ながら村岡自殺説は無い!間違いなく他殺だ!と信じて疑わないのである。
加納「行ったにしても自転車が自宅に有るから歩いて行く事になるじゃない?なのに目撃者が一人も居ないのはおかしいよね。」
秋田「お通夜に行った時自転車有ったもんね。歩いて行くなんて有りえないでしょう?一体自宅から何キロあると思ってんのよ。タクシー呼んだって雨降山や風龍神社の名前を出した時点で降ろされて一悶着よ?自殺願望の片棒を担ぐみたいで嫌だってね」
風龍神社と言うのはレイが取り敢えずケルベロ神社と呼んでいるあの神社の事だ。
風神と龍神が奉られているから風龍神社と名付けられたらしい。
春川「それどころか事件当日の昼間に犬飼紗弥加と一緒に学園方面に歩いて行ったと目撃情報があるんだ。」
伊達「学園?犬飼紗弥加って、部長と同じクラスで「幽霊怖い!私の周りで幽霊の話をしないで」ってあの女の周囲で怪談話しようものなら狂った様に騒ぐ幽霊アレルギーのアイツだろ?村岡は知らなかっただろうけど、アイツ影で村岡の事をボロクソに貶す程嫌っていた筈だぜ?それ本当か?」
春川「俺の姉ちゃんが見たって言っているから間違いない。ほら、姉ちゃんと犬飼紗弥加は同じ部活の先輩後輩の関係だから見間違える筈がないよ。」
伊達「演劇部だったっけか?」
春川「うん…」
秋田「ねぇ、そもそも何で教頭がオカ研を潰したがっていたの?誰か知らない?」
春川「知らね…確か…教頭が俺達がカンニングしたって騒ぎ出してタイミング良く黒田が目撃者としてチクったんだよな?」
加納「そうなっているね…かと言ってその件で黒田を尋問しても無駄だよね…結局、オカ研潰されたし…!」
春川「…だな…」
伊達「そう言えば…」
春川「何か思い出したか?」
伊達「あぁ…
実は村岡が退学を喰らった日、今後のオカ研の事を村岡と話し合ったんだけどよ…
前川勘兵衛守定近の謎を追っただけで追放されたとかボヤいていたな…」
春川「前川勘兵衛守定近の謎ねぇ…」
秋田「そう言えば、教頭がオカ研を攻撃しだしたのって部長がその事を調べ出した辺りからじゃなかったっけ?」
春川「そうだよ間違いない!」
加納「でも、単なる偶然だ!って事で片付けられるわよ?」
春川「だよな…」
伊達「せめて見える人が居たら自殺か他殺かだけでも判断出来るんだがなぁ…」
指原「何でですか?」
伊達「あぁ…指原は新入部員だから知らないのは当然かと思うけど、オカ研には歴代の部長が残した研究資料が存在していてだな…その中に幽霊についての研究資料も有るんだ。
自殺した場合と他殺の場合の幽霊の在り方とか悪霊や怨霊になり易い幽霊はどう言う幽霊かとか事細かく書かれているんだぜ?」
指原「それで?」
伊達「だから、自殺した場合はその人の魂は死んだって気付けなくて長い時間その場に残り自殺を繰り返す。他殺の場合、怒りの念に捕らわれるがその場に残らず自由に動き回る事が出来るって話しだ。まぁ、後者の場合、悪霊・怨霊化するのが相場なんだがな」
指原「なるほど…見える人に見て貰えれば魂が現場に残っているかどおか判断して貰えるからそれで判断出来る訳ですね?」
伊達「当たり!」
加納「それって、大切な資料だから盗まれたり無くなったりしたら大変だからって部長が持ち帰って保管しているんだったっけ?」
伊達「あぁ…飽くまでも諸先輩方が残した研究資料であって学園の備品じゃないからってな」
春川「じゃあ、話は早い。
今から部長の親に掛け合って資料を見せて貰おうぜ?」
伊達「・・だな・・・アイツの事だから前川勘兵衛守定近の研究結果も書き残している筈だからな。でもよ、雁首並べて押し掛けても村岡のおばさんも困惑するだけだろうから俺と春川で行ってくる。」
春川「俺は良いけど他の皆はどお?」
秋田「私は大丈夫だよ?おばさんとは殆ど面識ないし」
加納「右に同じ」
指原「残念ですが…」
伊達「じゃあ、悪いけど明日また来てくれないかな」
「「「りょーかい」」」
こうして頭を突き合わせていてもイマイチ解らない…例えば、出そうで出ないクシャミの気持ち悪さを抱えたまま伊達と春川は村岡の家に行く事にしたのであった。
………
……
「なぁ、伊達…」
「何だ?」
「指原は仕方がないとは思うけど加納と秋田は連れて来ても良かったんじゃね?」
「それなんだがよあの中に裏切り者がいる可能性が高いから邪魔される訳には行かねぇからよ」
「・・・!!まさか…いや…連中ならやりかねないか…」
「村岡の話では連中のペットは男2人女4人だって話しだ。」
「黒田は確定だろうな…」
「後は羽田宏美 町田明里 赤井芳恵の3人で5人目と6人目が不明らしい。」
「不明って…その4人のみって可能性だって有り得る話か?」
「そうなるけどな…村岡はオカ研の中にスパイがいる可能性が高いって言っていた。」
「タイミング良く教頭の攻撃が始まったからか?」
「それもあるけど…」
「けど?」
「秋田と教頭の距離が異常に近いんだよ。
この前なんか教頭の車の助手席に乗っていたしな。てな訳で俺は秋田と指原が怪しいと思ってるんだ」
「まぁ、指原はありそうだよな…アイツ…オカルトには興味なさそうなのに興味有りますって顔をして熱心に活動してたからな」
「だろ?幽霊部員でも有りなんだからイカにもって感じだろ?」
「なぁーる…じゃぁ、伊達は村岡は自殺ではなく教頭一派に殺されたと言いたいのだな?」
「そう言う事だ。因みに犬飼紗弥加は最近加わった7人目だと俺は睨んでいる」
「でもよ…そこまでして塚の秘密を守ろうとするなんて…何でだろうな…だって胴塚は破王社の敷地内に存在していて行けないんだぜ?調べようがないじゃねぇかよ」
「さぁな…」
「奴等の淫行行為がバレるのを恐れて塚を理由に殺した…とかかな?」
「その話はあまりしない方が良いぜ?村岡と同じ末路を辿りたくなければな」
「解った…」
「まぁ、塚の謎を追わなくてもこうなっていた可能性が高かったのは間違いないと思う。」
「だな…」
「それに、俺達はオカ研だ…部長がやり残した謎を代わりに解き明かす事が奴への手向けになると俺は思う」
「悔しいがそれしかない…か…ところで、今後のオカ研はどう活動したら良いとか言っていたか?」
「学園でチマチマやっているだけが活動じゃねぇ。図書館でもそれぞれの家に集まってやるのもありだろうよってさ」
「そうなるわなぁ…」
道すがら周囲を気にしつつ小声で話をする2人は急ぎ村岡の家へと向かう。
………
……
「あら、伊達君と春川君…今日はどおしたの?」
村岡の家は住宅街の一角に建っている一軒家でそれ程広くはないが庭付きの2階建ての家だ。
伊達が呼鈴を鳴らすと出て来た女性は村岡の母ミチルで少し前迄は40歳半ばの年齢にも関わらず見た目30前半と言われる程の美貌の持ち主であったのだが、事件以来すっかり老け込んでしまい、50代後半と言われても仕方がない程に今は見る影もない。
伊達と春川は何度も来ていてミチルとは顔見知りである。
「部長…いえ…隆也君の事でお話があって来ました。少しお話したいのですが…」
「・・・どおぞ中へ」
伊達が村岡の名前を出すと少し驚いた表情をしたが、直ぐに冷静になり家の中へと2人を招き入れる。
「息子は何であんな事をしたのか解らないですか?」
アイスコーヒーを2人に出した後、姿勢良く向き合う様に座り2人に開口一番疑問をぶつけるミチルにど少しお返答したら良いか思案したが妙案が浮かぶ訳もなく「飽くまでもオカ研の皆で推理しただけなので確証はありませんが」と前置きをした後で伊達が推理の結果を話す。
「それでですね…隆也君の部屋は片付けられましたか?この推理の最後の鍵が隆也君の部屋に残されている筈なのです」
現状の全てを話し村岡の部屋を見せて欲しいと懇願する伊達に対して無言で立ち上がり部屋へと案内するミチル。
「此方です」
「・・・アイツらしい部屋だって言えばそう言えるのだがなぁ・・・」
「てか…此処だけゴミ屋敷だな…予想はしていたがよ…」
「それだけ没頭していたって事だろうぜ…」
「荒らされた…って事はないですよね…」
「退学になってからは殆ど外へは出ていなかった様だし誰も来なかったので、それはないかと…」
「と…取り敢えず探そうぜ…」
散乱する紙切れや空き缶やペットボトル。袋に入ってはいるが放置されているゴミ。
村岡は何か1つの事に没頭すると周囲が見えなくなる程に集中する。オカ研で活動していた時も村岡の周囲だけがゴミだらけになる事があって、その都度加納に怒られていた。
その姿を見て「もう尻に惹かれてやがんの」と、よくからかっていたのを思い出していた2人はこの惨状を見ても謎を解き明かす事を諦めていなかったと言う証拠になると思ったが、問題はこのゴミの中から目当ての資料が見付かるかどおかだ。
萎えそうになる心を奮い立たせて捜索に入る2人。
そして…
ベッド付近に散乱している紙切れをチェックしていた春川が数冊のノートと数通の手紙を発見し内容を確認した後で伊達に見せる。
「コレは…スゲェ…」
「仮説とは言え、此処まで調べていたとはな…恐れ入る…
間違いないな…アイツは自殺してねぇ…」
「あぁ…」
皆の予想通り村岡は考察記録を残していて、その内容に感嘆する2人は村岡は殺害されたと結論付けるもスパイが紛れ込んでいる可能性が高いので他のメンバーには公表し難い。
「悪いな…その後は頼んだ…」
悩む二人に背後から唐突に聴こえる懐かしい声。
「「部長!!」」
突然の現象に驚き振り向きそして固まる。別に二人は金縛りに掛けられているいる訳ではなく、見えない筈の自分達にも見る事が出来ている。この事実のみで固まってしまったのだ。
然も、夜ではなく昼間でだ!
幽霊を研究していた何代か前の部長が書き残した資料によると
昼間に出る幽霊は力が強く危険だから、もし、遭遇した場合は即座に逃げる事をオススメすると記されている。
これに当て嵌めるのなら、昼間に行動出来る村岡はかなり危険な存在になってしまったと推察出来る。
それを裏付ける確たる証拠が村岡が纏っている黒い霊気だ。
霊気が黒いと言う事はそれだけ強い恨みに捕らわれている事を意味する。
「見えない俺達がお前の姿を認識しているのは何故だ」
初めて遭遇した幽霊が先日死んだばかりの部長で、見えない筈なのに生前と変わらぬ姿で認識出来るとあってパニックになりかける伊達が落ち着こうとして村岡に疑問を投げ掛ける。
「悪いが一時的に俺の欠片を憑依させて貰った。
お前達が俺を認識出来るのは欠片の目を通して見ているからだ。
心配しなくても俺はお前達に危害を加えるつもりは無い。
もし、心配ならこの後に風龍神社でお祓いを受けたら良い。」
伊達の疑問に対して、そう返す村岡は2人に対してあの日何があったのかを事細かく説明する。
「悪いが、俺が殺された件に関してはこれ以上関わるな。俺の仇だ!俺が全員道連れにする!」
「・・・解った・・・じゃあ、訊くが、オカ研メンバーに裏切り者はいるか?いるとしたらそれは誰だ」
「・・・秋田だ・・・」
「それは予想通りだけど、指原はどおよ」
「アイツは…クスッ…アイツはな…」
「マジかよそれ…」
「悪いが幽霊は嘘吐けねぇんだ。悪いが応援してやってくんねぇか?」
「・・・高いぞ!?」
「商売抜きでお願いするぜ(笑)」
「伊達も部長もそう言う所はかわらねぇのな…」
「ったりめぇだ…死んでも村岡は俺の大切な友達だからよ」
「おっと…俺も色々と忙しいもんでよソロソロ消えるわ…じゃあな…」
「サンキューな…」
「やり過ぎるなよ…」
「・・・それは約束出来んなぁ……………」
生きていた頃と変わらない口調で村岡と話した2人はその後、ミチルに事実のみをを伝えて帰る事にする。




